【アメフト】コロナでボウルゲーム辞退　代わりの出場校は学業成績で選ばれる　カレッジフットの楽しみ方(4)

米国でNFLと並んで圧倒的な人気を誇るカレッジのアメリカンフットボール。「10万人収容の大学所有スタジアム」「年俸10億円のヘッドコーチ」など、日本のスポーツ界では想像ができない圧倒的なスケールばかりが強調されがちだが、学生スポーツとしての原点を保ち続けている。それが良く分かるニュースが、現地12月24日のクリスマスイブに伝えられた。フロリダ州ジャクソンビルで12月31日に開催されるゲイターボウルが、新たな出場校としてラトガース大学を選び発表した。その理由が「学業成績」だった。

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　ゲイタ―ボウルは、カレッジフットボールのボウルゲームの中では6番目に古い格式のある大会。今回はウェイクフォレスト大学とテキサスA&M大学が対戦する予定だった。12月22日にテキサスA&M大が、新型コロナウィルス感染症の陽性者が続出していることや負傷者、さらに転校するためにチームを離れた選手が続出したことで、「フットボールができる状態ではない」として出場を辞退していた。

　辞退が試合開催の9日前だったこともあり、主催者が代替出場可能なチームを探していた。通常、ボウルゲームに出場するためには、チームがレギュラーシーズン12試合で6勝以上が条件となる。6勝6敗のチームがいない場合は、選手たちの学業成績（APR＝アカデミック・プログレス・レート）が最も高い5勝7敗のチームが次の候補となる。今季の5勝7敗チームの中でAPRが最も高かったのはラトガーズで、主催者の招待を受け入れた。

　APRは、NCAAのDiv.１の学術改革の一環として2003年に導入された。学生アスリートの学業成績をチーム単位で評価し、各学期の適格性と学力維持を考慮することで、大学やチームに責任を持たせるもの。学業成績をよりタイムリーに評価できるとされている。それまでは、連邦政府が定めた6年間の卒業率であり、そこには編入学が考慮されていなかった。

　ラトガース大はニュージャージー州にあり、アメリカ建国の10年前、1766年に創立された名門大学で、公立大学の中でも特に学業水準の高い大学「パブリックアイビー」という認知を受けている。

　フットボールでは1869年に「全米最古のフットボールゲーム」を戦ったことでも有名だ。HCのグレッグ・シアノは、強固なディフェンスと厳しいフットボールディシプリンで、21世紀の最初の11年にHCとして同大を強化し、6回のボウルゲーム出場に導いた。その手腕を買われて、NFLバッカニアーズのHCとなったが、NFLでは結果を残せずに2年で解雇された。その後オハイオ州立大のコーチを経て、昨年からラトガーズ大のHCに復帰していた。

「とても、とても、興奮している。チームも興奮していて、待ちきれないし、フットボールに戻る準備もできている。大変に楽しみにしている」とシアノHCは語った。

「デイブ・クローソンHCは、ウェイクフォレストでとてつもない仕事をやり遂げた。我々は30数年前からの付き合いだ。彼のチームと、とてつもなく大きな会場、とてつもなく大きなボウルゲームで再び戦えることを楽しみにしている。やるべきことはたくさんあるが、とにかく試合が楽しみでならない」


　この決定を誰よりも喜んだのは、対戦相手となるウェイクフォレスト大学の選手たちだろう。ウェイクフォレスト大は、今季大躍進して、大学史上2度目の2ケタ勝利を挙げ、ACCの優勝戦にも進出した。代替校が決まらなければ、シーズンの最後を締めくくるボウルゲームへの出場がふいになるところだった。

　ウェイクフォレストも、勤勉な学生が多いため「Work Forest」という異名をとる大学で、学生数に比較して教員の数が多く、高いレベルの学部教育を維持していることで知られている。

　米国と言えども、大学を卒業後フットボールのプレーを続けられる選手はそう多くはない。ウェイクフォレスト大の関係者には、4年生らに最後のフットボールをプレーする機会を与えてくれたスカーレットナイツ（ラトガーズ大のチーム愛称）の「赤」がサンタクロースに感じられたかもしれない。