陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。神奈川大の西方大珠(4年)は3000mSCで2度、自己記録を更新するなど好調のシーズンを過ごした。一方で、神奈川大のキャプテンとしては、チームの調子がなかなか上がらず、悩むことも多かった。最後の箱根では、「流れ」をつくる走りを見せるつもりでいる。
大エースがいないから、「流れを止めない」 神奈川大のキャプテン西方大珠(4年)は最後の箱根駅伝に向けて静かに決意を固めていた。
「僕が一番魅力を感じているのは1区ですが、力的にも自分が2区を走るしかないので、2区でしっかり勝負できたらなと思います」
10000mチームトップのタイムを持ち、練習では常にチームを引っ張ってきた、速くて強いキャプテンの西方。2年時に箱根駅伝に初出走し、1区で区間12位、3年時は4区区間10位で往路8位メンバーとなった。前回の箱根を走った8人がチームに残り、西方自身も期待を胸にシーズンをスタートしたが……。
「呑村(大樹)と川口(慧、共に4年)がケガでずっと離脱していて、佐々木(亮輔)や高橋(銀河、共に2年)だったり、前回の箱根を走ったメンバーも、コンディションが悪かったり、上がらなかったりで、今年はいつもよりケガ人も多く、しんどいなと思ってやってきました」
西方個人としては絶好調のシーズンを過ごした。入学時から取り組んできたフォーム改善とフィジカル強化が実り、今季は3000mSCで関東インカレ2部、日本インカレといずれも自己記録を更新して準優勝。10月には5000m13分55秒68と、こちらも3年ぶりの自己新をマークしている。
「自分はトラックが主なので、そこで結果を残すことで、少しでもチームに勢いが付けられたらと思ってやってきました」
5位通過となった箱根予選会では、西方の奮起に促されるように、2年生メンバーが台頭。チーム上位10人のうち、2年生が最多の6人を占め、巻田理空がチーム1位、宇津野篤がチーム4位と好走した。
「下級生に勢いがあるのはチームとしていいことだと思います。巻田に対して、宇津野がライバル心を燃やしていて、予選会で負けて結構悔しそうな表情をしていました。そこがバチバチにやってくれれば、他のメンバーにも刺激になります」
特に巻田は、西方が1年生のころから「腰が高くて動きがきれいだったので、そのうち結果を出すだろう」を目を掛けていた選手だ。プライベートでも仲が良く、「自分が練習をやっていても付いてくる選手がずっといなかったので、巻田が結果を出して付いてきてくれるようになってうれしい」と目を細める。
11月には盟友の川口が箱根以来10カ月ぶりにレース復帰し、5000mで自己新をマーク。本戦エントリーは、前回1区4位の呑村がメンバー外となり、万全とは言えないものの、2年生が7人入った。未来へ希望を抱かせるメンバーで臨む今回の箱根のポイントは、「流れ」だという。
「ここ数年、区間最下位が一人出て流れを止めてしまったところが大きかった。ウチは大エースと呼ばれる大きなゲームチェンジャーもいないので、とにかく流れを止めないことを意識して1年間やってきました。最後の箱根ですし、キャプテンなので、しっかりとチームを引っ張って流れをつくるような走りをしたいと思います」
西方自身も、往路で流れをつくる走りを見せるつもりでいる。
箱根予選会では巻田に次いでチーム2位。トラックが主戦場の西方にとって箱根は「メディアの注目度も高いので、自分をアピールする場」でもあるというにしかた・たいじゅ◎1999年6月19日、静岡県生まれ。170cm・58kg、A型。鷲津中→浜松商高(静岡)。高校時代から3000mSCで活躍。インターハイは2年時に5位、3年時に4位。神奈川大1年時に日本インカレ8位入賞。今季、関東インカレ2部で2年連続準優勝、日本インカレでもシルバーメダルを獲得した。箱根駅伝は2年時に1区12位、3年時に4区10位。卒業後は、愛三工業に進み、3000mSCでパリ五輪出場を目指していく。自己ベストは5000m13分55秒68(2021年)、10000m28分48秒28(20年)、ハーフ1時間03分11秒(19年)。
箱根駅伝2022完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)