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2021-12-31

【高校駅伝】中大で「幻の区間賞」の永井秀篤が初の都大路へ「“頑張りたい”という気持ちを引き出し、サポートできる指導者に」

遊学館高(石川)を率い、初の都大路へ挑んだ永井監督(写真/BBM)

12月26日、たけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)発着で行われた全国高校駅伝。雪の舞う都大路に2020年まで実業団の第一線で走っていた永井秀篤の姿があった。今年度、遊学館高校、駅伝競走部の女子監督に就任。指導者として初の全国の舞台に挑んだ。

いつか都大路の舞台で勝負できるチームを

 フィニッシュ地点付近で5区を走った瀧田はな(3年)を笑顔で迎え入れた。

「1年間この舞台で走ることを目標にしてきましたが、実際に走ってみると、やはり選手たちにここで結果を出させてあげたかったですね」

43位の結果に永井監督は少し悔しげな表情を見せた。

「幻の区間賞」として永井監督を記憶している箱根駅伝ファンも多いだろう。13年の第89回箱根駅伝で中大は5区で途中棄権。復路の選手はオープン参加となった。だが8区を走った永井監督は1時間06分10秒とこの区間で誰よりも速いタイムをマーク。オープン参加ゆえに記録は参考記録扱いとなり、区間賞とは認められていなかったが、強烈なインパクトを残した。

「今でもその話は生徒からされますよ。あのときは年末に8区を予定していた先輩の足に痛みが出て、急きょ、自分が走ることが決まったんです。記録としては残りませんでしたが、この結果で自信がつき、実業団でも競技を続けようと思えました」

 卒業後はDeNAに進んだ。東日本実業団駅伝での区間賞など駅伝での栄誉も手にしたが、本人はマラソンにこだわり続けた。

「マラソンで結果を出したい、オリンピックに出たいと思ってDeNAに入りました。走ったマラソンはすべて印象深いですが、ベストレースはどれかと言われると正直、分からないですね。力を出し切ったといえるものはなかったです」

19年福岡国際マラソンで出した2時間15分03秒が競技生活中のベストタイム。マラソンで結果を残せなかった悔しさはあるが、オリンピックを目指し、鍛錬を続けた日々は指導をするうえでの糧になっていると話す。

とはいえ、今は女子を教える難しさを痛感する毎日だ。「選手に響く言葉や、伝え方は男子とは違いますね。1年間ずっと手探りでしたし、まだ試行錯誤の毎日を送っています」と笑う。いつかは都大路の舞台で勝負できるチームをつくりたい。

「自分も選手でしたから、選手としての気持ちは分かります。そこに共感しながら、“頑張りたい”という気持ちを引き出し、サポートできる指導者を目指します」

 永井監督はそういって笑顔で前を向いた。


全国へは3年ぶり11回目の出場となった遊学館高。また1年、この舞台で戦うために練習を積んでいく(写真/遊学館高提供)

ながい・ひでのり◎1993年3月4日生まれ。城端中学→高岡向陵高→中大→DeNA。2007年の全日中では3000m4位。またクロスカントリースキーでは全国優勝も経験している。高校では5000mでインターハイ出場。大学4年時の箱根は8区区間3位。DeNAでは駅伝でも活躍した。2021年度から遊学館高校地歴科教諭ならびに駅伝競走部女子監督。

文/加藤康博 写真/BBM、遊学館高提供

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