1989年7月24日、新生UWF博多大会で前田日明が安生洋二との初シングルを制した。 安生によっては念願だった“前髙山”前田&髙田延彦&山崎一夫との対戦。それも相手はナンバーワンの前田。同年6月14日の名古屋大会で船木優治を熱戦の末に破った勢いに乗って「今なら前田さんに勝つ自信がある」と語っていた。
安生はゴングが鳴るやいなや、張り手をガムシャラに打っていく。これをガードされると蹴りに切り替えるが、遮二無二蹴れば蹴るほどにこれまたヒットしない。
試合後の前田は「張り手にしても蹴りにしても一発一発はいいものを持ってるけど、慌てちゃうからバラバラで緻密な攻めがなかった」。安生は関節技に悲鳴を上げ、フロント・スープレックスは上から潰され、ファンからは「泣くな!」というヤジも飛ばされてしまう。
「オレに勝とうとしたら、オレ以上に精神的レベルを高めないと。オレだって今日の安生みたいに緊張してたら、高田や山ちゃんに絶対に勝てないよ。船木に勝ったという自信を持ってもらいたい」
安生は「前田」というブランドに対する先入観があまりにも強すぎた。フィニッシュはハーフハッチ・スープレックスからの逆片エビ固め。力の差を痛感させられた敗戦だった。