照ノ富士(寄り切り)御嶽海照ノ富士と隆の勝が3敗で並び、1差で大栄翔と佐田の海が追う展開で迎えた千秋楽。三賞は殊勲賞に大栄翔と隆の勝、敢闘賞に佐田の海と千秋楽まで優勝を争った力士が条件なしで受賞した。今回の選考については妥当かなと思う。
隆の勝は幕内前半戦で土俵に上がり、優勝の可能性を残す佐田の海と対戦。時間いっぱいになっても隆の勝はなかなか腰を下ろせず、緊張感が感じられた。ようやく立ち上がったが、まったく踏み込めず、佐田の海に左を深く差され、右も入れられてモロ差しを許す。それでも隆の勝は左からおっつけて前に出たが、土俵際で掬い投げを打たれて土俵下に落ちた。
廻しを取らずに出たらこうなるという典型の相撲で、相手十分になりそうになって慌てて出たという印象だ。
佐田の海は「自分は条件なしで三賞をもらえて、向こうは緊張していただろうし、自分の方が有利だなと思っていた」とベテランらしいコメント。隆の勝は「絶対負けないって気持ちでしたけど、こういう結果で、来場所リベンジというか、頑張りたいと思う。先頭の重荷は初めてでいい経験になりました」と振り返った(いずれも全取組終了後のコメント)。
こうなると結びで照ノ富士が勝てば優勝。万が一負ければ、大栄翔を加えた4人の決定戦になるところだったが、やはりすでに負け越している御嶽海に負けることは考えられなかった。
照ノ富士は当たった瞬間に左を差し、下手も取ると右は前廻しをガッチリ。強烈な引きつけで御嶽海の腰を浮かし、危なげなく寄り切り7回目の優勝が決まった。
苦しい場所を最後に締めた照ノ富士は、「やっと終わったなという感じです。いつもより長く感じた。15日間、取り切るつもりで、毎日必死にやっていたので、結果的によかったと思います」と安堵の表情。
休場明けの初日にあっけなく敗れ、体調は万全ではなかっただろう。中日までに3敗を喫したときには途中休場も考えたかもしれないが、3大関があの調子では休むに休めなかった。
15日間出場するという横綱の責任をまっとうしたご褒美が7回目の優勝だったのではないか。
文=山口亜土