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2022-06-11

【陸上】サニブラウンが圧倒した男子100m。坂井隆一郎は抜群のスタートで2位、東洋大1年の栁田大輝が3位に食い込む

男子100mのトップスリー。左から2位・坂井、優勝・サニブラウン、3位・栁田

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オレゴン世界選手権代表選考を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/ヤンマースタジアム長居)2日目。男子100m決勝は、予選から他の追随を許さない強さを見せたサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が10秒08(+1.1)で3年ぶりの優勝を果たし、オレゴン世界選手権代表に内定した。

自身の成長と課題を見いだした3年ぶりのV

決勝、6レーンの坂井隆一郎(大阪ガス)が抜群のスタートで終始リードを奪う展開となるなか、5レーンのサニブラウンはリアクションタイムが8選手中、最も時間を要す(0.157)スタートに「話にならないくらい遅かった」。だが、その後は冷静に対応。坂井との差を徐々に詰め、フィニッシュ手前でとらえてみせた。

取材エリアにやってきたサニブラウンの第一声は「いや~、ちとダメですね」だったが、3年ぶりの優勝に笑顔を見せながら、冷静に振り返り始めた。

「今大会は久しぶりに難なく走れてよかったです。3本(レースを)しっかり量をこなせましたし、大会前も早く試合が来ないかなと思っていましたから」

ようやく戻ってきたトップステージ。昨年のオリンピックイヤーが葛藤に満ちたものだっただけに、安堵の気持ちも大きかった。

1年前の東京五輪200mにはワールドランキング(ポイント制)で出場したが、21秒台で予選落ち。「(1年を通して)ずっと腰のヘルニアの症状が出ていて、痛みと闘いながらの状態だった」と今大会の前日会見でその要因を明かしたように、本来の姿からはほど遠い状態で走ることを強いられていた。そのためこの冬期にはヘルニアの治療を行いながらフィジカル面の再興に努め、トレーニングを積んできた。

今年は3月に10秒15(+0.4)でシーズンインすると、4月(10秒08/+2.1)、5月に10秒21(-0.2)と毎月、海外の競技会に出場。徐々に調子を上げながら、今大会には治療明けを考慮して200mへのエントリーを見送り、100mに集中することを選択した。

前日の予選は余裕を持って10秒11(0.0)をマークすると、準決勝は10秒04(+0.8)で世界選手権参加標準記録(10秒05)を突破。決勝を含めた3レーストータルで見ても、「まずまず順調に来ている」と手応えを感じさせる結果だった。

「(決勝は)出遅れても落ち着いてしっかり自分のリズムで加速できたのは日ごろ、自分より速い選手とスタート(練習)している成果が生きたのかなと思います。でもここで満足していてもしょうがないので、また気を引きしめて、過去の自分よりもっとすごい選手になれるよう頑張っていきたいです」

サニブラウンが所属するタンブルウィードTCは世界のトップレベルが集まるチーム。自己ベストで9秒8台の選手もおり、そうした選手たちから多くのことを吸収しながら今後もアメリカを拠点に活動をしていくが、3年前の日本選手権100m・200mでの二冠と今回の結果には、違いを感じているという。

「3年前は(大会直前の)全米学生選手権を9秒で走ったりして、勢いで何とかなった。でもプロに転向して、いろんな試合に出て、いろんなアップダウンがあるなか、いろんな経験をしながら(自分が)つくられていくのも大事かなと思います。プロになってリソース(自分をサポートする様々な要素)が増えて、どこか甘えてしまう部分があったと思いますが、今大会はこういう(ケガから復帰しての)状況で勝つこともプロとしての使命と感じました」

過去の自分を取り戻すのではなく、さらに進化した自分を求めて、まずは7月の世界選手権に向かっていく。

初表彰台の坂井と栁田

2位の坂井は、大阪高校、関西大出身で、現在も大阪ガス所属で、地元開催の日本選手権決勝レースを最も沸かせた選手。スタート直後から飛び出すとそのまま加速し、常にレースをリードした。最後はサニブラウンにとらえられたが、10秒10の自己ベストでフィニッシュ。

「楽しんで決勝を迎えられたことが良い結果につながったと思います。ただ標準記録(10秒05)は切れていないので、布勢スプリントで狙っていきたいです。(世界選手権の)リレーメンバーには選ばれたいです」

サニブラウンの左隣りのレーンだった栁田大輝(東洋大1年)は「無意識に力が入ってしまった」とはいえ、10秒19で3位に食い込んだ。「昨年と同じで、準決勝(10秒16)よりタイムを落としてしまったので、その点は成長していない」と言うものの、3年連続の決勝進出で初の表彰台に「過去2年連続で7位だったので、その点は良かった」と気持ちを抑えながらも笑顔を見せた。

共に日本歴代3位タイの9秒98の自己ベストを持ち、東京五輪代表の小池祐貴(住友電工)は10秒19で4位、桐生祥秀(日本生命)は10秒27で6位に終わった。

右から栁田、サニブラウン、坂井
右から栁田、サニブラウン、坂井、小池

写真/毛受亮介

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