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2022-06-09

【陸上】日本選手権展望・男子400mH/黒川の2連覇が濃厚。残る東京五輪代表組の巻き返しはなるか?

前回王者の黒川のみが標準記録を突破。3位以内に入れば世界選手権代表が決まる

オレゴン世界選手権代表選考を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/ヤンマースタジアム長居)。2日目(10日)に予選、3日目に決勝が行われる男子400mH。東京五輪代表で標準記録突破者の黒川和樹(法大3年)は3位以内に入れば代表に内定する。

3位以内はほぼ確実
黒川のタイムに注目

 黒川和樹(法大3年)の記録が最大の注目点だ。

 木南記念で48秒90を出し、世界選手権標準記録(48秒90)をジャストでクリアした。黒川は前半型だが、終盤で完全に脚が止まることはない。世界選手権代表内定条件の日本選手権3位以内は、故障などがなければ大丈夫だろう。世界選手権へのステップとするために技術的な課題を試すだろう。

 前半型の黒川は5台目を20秒8前後で通過する。為末大が47秒89の日本記録を出したときと同レベルだ。しかし前半で強引に走ってしまうと後半で失速する。東京五輪の失敗(50秒30で予選落ち)は黒川自身も完全に特定できていないが、おそらくそれが原因だったという。

 技術的な課題は6台目、7台目で14歩に歩数を増やすところでピッチの上げ方を鋭くできるかどうか。前半の余裕度とも関係している部分だろう。実際のスピードは13歩の5台目までより落ちるが、14歩2台のピッチが上がると後半のスピード維持がしやすくなる。

 世界選手権で準決勝突破をするには、2019年ドーハ世界選手権では、着順では48秒72、記録のプラスでは48秒67が必要だった。それが昨年の東京五輪では着順では48秒36、記録では47秒93に跳ね上がった。これは走路面の反発や追い風部分の多さなど、記録の出やすい条件だったかどうかが影響している。東京五輪は間違いなく記録が出やすかった。

 日本選手権開催の長居も過去、周回種目でも好条件に恵まれたたときは好記録が量産されている。長居の条件が良ければ48秒前後を出しておきたい。

今季初戦の安部、山内
勢いでは学生勢も

 東京五輪代表だった安部孝駿(ヤマダホールディングス)も黒川と同じ前半型で、昨年の日本選手権では6台目まで13歩を続けて一時は黒川との差を詰めていた。山内大夢(東邦銀行)は東京五輪で、日本勢でただ1人準決勝まで駒を進めた選手。黒川、安部とは対照的に、後半型のハードラーだ。前半では差を開けられるが、スピード維持能力は黒川、安部よりも高い。

 ただ山内と安部は今季、試合に出場できていない。ぶっつけ本番となる日本選手権でどこまで黒川に近づけるか。


4大会連続で世界選手権に出場を果たした安部。東京五輪後、初レースとなる日本選手権でどんなパフォーマンスを見せるか

 東京五輪代表3人以外では、陰山彩大(日大4年)が要注意の選手。関東インカレでは終盤で黒川を追い込み2位、0.09秒差の49秒31と健闘した。昨年までは400mを中心に走ってきた選手。400mHのキャリアが浅いことを考えると、標準記録突破も十分考えられる。

 また、福岡・東福岡高時代に大活躍した出口晴翔(順大3年)も関東インカレで49秒77の自己新。大学入学後初の49秒台を出し、勢いに乗った可能性がある。

 黒川の2連覇が濃厚だが、ちょっとでもミスがあると350m以降が混戦になるかもしれない。


関東インカレで自己ベストを更新した陰山(左)と出口。東京五輪代表勢に割って入れるか

文/寺田辰朗 写真/田中慎一郎、中野英聡

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