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2022-06-17

【連載 名力士ライバル列伝】ヨーロッパからの「挑戦者たち」――琴欧洲後編

平成20年夏場所、2度目のカド番場所で待望の初優勝を果たした

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四股名にズバリ「欧州(欧洲)」と名乗り、
大関へ駆け上がったブルガリア出身の琴欧洲(現鳴戸親方)。
その“先駆者”を目標にして上を目指し、栄位にたどり着いた
エストニア出身の把瑠都。
ヨーロッパから極東の国へ、
新風を吹かせた「挑戦者」二人の言葉を送る。

両横綱を倒し初優勝

賜盃へたどり着くためにも、何より朝青龍、白鵬は高い壁だった。

「13勝2敗では無理。横綱戦を前に1敗でもしたら、それは戦線脱落と同じ」

両横綱を倒し、ようやく初優勝を手にしたのは、大関15場所目の平成20(2008)年夏場所のことだ。

「それまで、何度もチャンスを逃してきた。結局は、自分が積み重ねてきた経験から、『この一番で力を出すには、どうすればいいか』というのが分かってくる。それも、誰かが教えてくれるわけではないから」

“角界のベッカム”と呼ばれ、協会の看板の一人として、どこへ行っても衆人環視の的。気が休まることはなく、加えて右ヒザなどの故障にも悩まされた。三役までは向かっていく相撲が取れたが、大関は逆に挑戦を受ける立場。迷いが生まれ自分の相撲が取れなくなり、朝早くに起きて新弟子たちと汗を流し、初心に帰ろうと努めたこともある。

だからこそ“青”と“白”、モンゴル人横綱二人のすごさが分かる。

「注目される中でも受けて立てる、ここ一番の相撲で必ず勝てるという、精神力の強さ、集中力の高さ。日本人力士とは違ったもの? だから横綱に上がれているでしょう。二人はプレッシャーの中でも攻めていけるし、毎場所結果を残せる体の強さもあった。だからこそ、横綱の地位を張っていけるんです」

平成26年春場所10日目、「勝っても負けてもこれが最後」と、現役ラストと決めた相手が白鵬だった。

「巡業でも一緒に稽古をして、切磋琢磨してきた相手。最後に取れたことは本当に良かった。精神力、判断力、柔軟性、ケガをしにくい体。白鵬はすべてがそろっている。単に横綱じゃない。『大横綱』ですよ」
 
ヨーロッパ出身初大関の先駆者・琴欧洲は、年寄鳴戸を襲名した今、部屋を興し、弟子の育成に奮闘する日々だ。一人考えて悩み、酸いも甘いも味わった現役時代の経験を踏まえ、自ら稽古廻しを締め、弟子たちにできるだけのことは伝えていくのが指導スタイル。

「廻し一本で、努力をすればするほど返ってくるものがある。本当に夢がある、素晴らしいスポーツ。それが大相撲だと思う。大変は大変だけれどね」

背水の陣から闘い、部屋持ち親方としても“先駆者”となった琴欧洲は、そう言って端正な目元を緩ませた。

対戦成績=琴欧洲10勝―35勝白鵬、琴欧洲7勝―16勝朝青龍、琴欧洲27勝―15勝稀勢の里

『名力士風雲録』第28号 琴欧洲 琴光喜 把瑠都掲載

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