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2020-07-18

カットマンというお仕事──ルディ・エルナンデス

カットマン。現代のボクシングでは、傷を手当てを請け負うこの専門職が大きな職責を担う。至近距離でパンチを応酬するこの競技では、傷を応急治療する腕前が勝負を行方を大きく左右するのだ。ルディ・エルナンデス。本職はボクシング・トレーナー。アメリカ・ロサンゼルスをベースにするこの人物こそが、カットマンとしての第一人者とされる。ボクシング・マガジン8月号では、その仕事の全容と、エルナンデスという人物の人となりを詳細にレポートしている。

上写真=本職はトレーナーでも、伊藤雅雪を始め、多くの世界王者を育てている

 薬剤として使えるのは、アドレナリンをわずか数%に希釈された溶液ひとつ。あとは傷口に当てる綿棒、腫れ止めの器具が数種類のみ。それで、出血を最小限にまで抑え、ボクサーがその能力どおりの戦いができる体勢を整えなければならない。与えられる時間は、ラウンドのインターバル、1分間しかない。

 カットマンの仕事とはそういうことだ。治療の技術はむろん、傷の大きさ、深さ、あるいは形状、その場所によって、素早い判断力を要求される。

 エルナンデスの本職は、もちろん、ボクシング・トレーナー。かつてはカリフォルニア州のチャンピオンになったプロボクサーでもあった。スーパーフェザー級の名チャンピオンとなった弟のヘナロ・エルナンデス(故人)をサポートするために、プロとしての大成をあきらめ、指導する側に回った。

 そしてカットマンとしての技術を磨き、その活躍は今や世界を股にかける。日本のリングでもたびたびその姿を見かける。また、ボクシングのみならず、総合格闘技のUFCでも重用されている。

 仕事道具一式、バッグパックに詰め込んで、いつ、仕事の依頼があっても、一目散に要請された場所に飛んでいく。

 日本ではまだ専門職として確立していないカットマンという仕事師を、ロサンゼルス在住の宮田有理子記者が濃密に取材した。

試合中に裂けた傷に対応するため、綿棒もさまざまな形にして用意している

写真◎宮田有理子

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