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2022-08-18

永田裕志vs蝶野正洋60分フルタイムは“純プロレスラー”対決で届けた底力…新日本プロレス歴史街道50年(52)【週刊プロレス】

永田裕志にSTFを仕掛ける蝶野正洋

平成に入ってシングルマッチで初めて60分フルタイムを闘ったのは永田裕志だった。IWGPヘビー級王者としては初めて連続2ケタ防衛ロードを歩んでいる際の記録。しかも同一在位期間中に2度は、過去に力道山インターナショナルヘビー級王座時代(3度)に、ジャイアント馬場が同王座時代に(2度を2回)、アントニオ猪木がNWFヘビー級王者時代に(2度)、ジャンボ鶴田がUN王者時代に(4度)成し遂げているがいずれも3本勝負。1本勝負では永田が初で、日本マット界でも珍しい記録になる。1度目となった蝶野正洋との一戦では、互いにある思いが一致しての60分フルタイムだった。

2002年4月25日、東京武道館において安田忠夫を下して第31代IWGPヘビー級王座に就いた永田裕志。その後、高山善廣、佐々木健介、バス・ルッテン、藤田和之、蝶野正洋、村上和成、ジョシュ・バーネット、西村修、中西学、安田忠夫と10連続防衛を記録した。挑戦者の顔ぶれを眺めると、当時の新日本プロレスが置かれていた状況を読み取ることができる。永田自身も「みんなで一丸となって外敵を追い払っていこうという状況だった」と当時を振り返った。至宝を腰に巻いていた永田は、新日本最後の砦という存在だった。

約35年にも及ぶIWGP史上、最も多彩な顔ぶれで過酷な防衛ロードを歩んでいく中で永田は、2度の60分フルタイムを闘っている。当時、安田は総合格闘技に進出。前年の大みそか決戦でジェロム・レ・バンナを破って大番狂わせを演じ、健介も海外でオクタゴンに入って勝利を収めている。ルッテンは立ち技格闘技の第一人者で、藤田もPRIDEに戦場を移していた時期。永田は総合格闘技からの刺客を一手に引き受けていた感じだった。

当時、新日本はPRIDE、K-1といった格闘技ブームに巻き込まれ、劣勢を強いられていた。2000にPRIDEはトーナメント(PRIDE GRAND PRIX)を初開催。2002年8月には国立競技場にも進出するなどイケイケの時代。ちなみにトーナメントの名称は、IWGP(インターナショナル・レスリング・グランプリ)を意識したものであるのは明白だ。

一方、K-1はミドル&ライト級中心のMAXシリーズが2002年にスタート。ヘビー級をフジテレビ系列、MAXをTBS系列、JAPANシリーズを日本テレビ系列と、3局でオンエア。いずれも高視聴率をはじき出していた。

そんな中で組まれた5度目の防衛戦は永田vs蝶野(2002年10月26日、福岡国際センター)。そこまで格闘家色強い挑戦者を退けてきた永田だが、新日本、プロレスの評価はさほど上がらず。ならばと一転して“純プロレスラー”によるIWGPヘビー級タイトルマッチをぶつけていった。

世代こそ違えど生え抜き同士の激突は、最もストロングスタイルを打ち出せる闘い。いうなれば新日本30周年の切り札カード。そんなマッチメーカーの思惑は、闘う2人にもしっかり伝わっていた。

永田はこの一戦を「当時の俺はイケイケだったし、蝶野さんの壁をぶち破ろうってぶつかっていったんだけど、蝶野さんもこっちがストレートにぶつけていった力をうまく遮りながら、後半に底力をバンバンぶつけてきましたね。試合やりながら“エッ、ほんとかよ?”って思ってました。あらためて蝶野さんのすごさをわかりながら試合してて、時間がたつごとにだんだん楽しくなっていって、こっちもより向かっていかなきゃ勝てないなって思いながらぶつけていったのが思い出されますね」と振り返りながらも、「勝ちきれなかったっていうのもありますけど、あの時は蝶野さんと闘いながら、新日本の闘いを世間に浸透させてやるっていう思いがありましたね。新日本の底力を西の博多(福岡)から全国にとどろかせようって。それは蝶野さんもあったんじゃないかな。それを試合を通じて感じました」と語った。

まさに以心伝心。「闘うことによって相手の気持ちがわかる」とはよく言われるが、ドン底の中でこの闘いがあったからこそ、新日本は50年を迎えることができたともいえよう。

橋爪哲也

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週刊プロレスNo.2198 (2022年8月31日号/8月17日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

今週号の表紙は東京女子「東京プリンセスカップ」で悲願の初優勝を達成した坂崎ユカです。昨年同様、後楽園2連戦で幕を閉じたトーナメントは準優勝の渡辺未詩もMVP級の大活躍。決勝&準決勝を中心にリポートするほか、巻末言では甲田哲也代表に大会総括や今後の展望を聞いています。巻頭カラーはNOAHで開幕した「N-1 VICTORY」序盤3大会を全戦追跡。清宮海斗が継承後、初めて武藤殺法を解禁してリーグ戦初白星をあげた中嶋戦を中心に潮崎vs藤田、拳王vs田中、中嶋vs船木など注目リーグ戦を中心に詳報します。新日本の「G1 CLIMAX」はいよいよ佳境を迎え、ファイナルの日本武道館3連戦前の終盤4大会を全戦追跡。棚橋弘至がKENTAに敗れて優勝戦線から脱落した試合のほか、オカダvsローラー、オーカーンvsタイチなど注目リーグ戦を余すところなくリポート。スターダムの「5★STAR GP」はまだ序盤。こちらも3大会を全戦追跡。後楽園でおこなわれた注目のMIRAIvs鈴季すずのほか多くのリーグ戦を掲載。また全日本では「王道トーナメント」で宮原と永田がベスト4進出。KAORU、Gammaと長きに渡りリングで活躍した選手の引退興行リポートも。そのほかドラゲー後楽園&大阪、DDT後楽園、大日本・保土ヶ谷、FREEDOMS新木場、ガンプロ後楽園、PURE-J後楽園など掲載。【注意】発送後の返品・返金は原則不可とさせていただきます。送料は無料ですが、第三種郵便での発送となります。通常2~4日でのお届けとなります。また、事前に購入されても発売日にお届けすることは、お約束できません。ご了承ください。

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