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2022-09-02

【ボクシング】兄に続け! 山中菫が豪快TKOで王座/松田恵里はテクニックで完勝

場内の度肝を抜いた山中の右フック

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 1日、東京・後楽園ホールで行われたWBO女子アジアパシフィック・アトム級王座決定戦8回戦は、2位の山中菫(やまなか・すみれ、20歳=真正)が3位の狩野ほのか(27歳=世田谷オークラ)に5回1分56秒TKOで王座獲得。OPBF東洋太平洋女子アトム級王座決定戦8回戦は、前王者の松田恵里(28歳=TEAM 10 COUNT)が元日本王者・長井香織(32歳=真正)を79対73、79対73、78対74の3-0判定で下し、同王座に返り咲いた。

文_本間 暁
写真_山口裕朗

 146cmと小柄なサウスポー山中が、パンチを振るごとに場内からはどよめきが起きる。特に前の手となる右のフックは強烈だ。パワフルだけでなく、タイミング、当て勘ともに抜群だから、観衆の目は一気に吸い込まれてしまう。初回、この右フックで狩野をグラつかせた山中は、続けて放った左ストレートで早々にダウンを奪った。

初回から圧倒された狩野だが、彼女の強さがあったからこそ、山中の凄さが際立った
初回から圧倒された狩野だが、彼女の強さがあったからこそ、山中の凄さが際立った

 しかし、狩野は決して怯まない。2回からは強気に猛烈な連打を放っていく。だが、山中は身長で約20cm下回ることをアドバンテージにし、それを利用して柔軟なボディワークを使ってひょいひょいとかわしていく。この姿にもまた、場内からうっとりとするため息が漏れた。

 狩野が打ち下ろす右ストレートは実にシャープ。体バランスもよい。だが、ほんの一瞬、打ち終わりに落ちる左ガードを山中は見逃さない。右フックでその瞬間を捉え、狩野がガードを意識すれば、インサイドにめり込ませる。左ストレートの上下打ちも見事。線が細く見える狩野が倒れないのが不思議なほど。しかも、あろうことか左右のボディ連打で猛烈な反撃を仕掛けていく。山中が気圧される場面も何度かあった。

鋭い詰めを見せて試合を終えた山中
鋭い詰めを見せて試合を終えた山中

 強者を圧するから、余計に強さが際立つ。5回、ボディ攻めを敢行する狩野に、ボディへのフェイントを入れて右フックをヒット。効いた素振りを見せた狩野に、山中は連打を仕掛け、左ストレートでふたたび倒すと、レフェリーがこの試合をストップした。

兄妹同時世界チャンピオンを目指す山中にとって、このベルトは通過点
兄妹同時世界チャンピオンを目指す山中にとって、このベルトは通過点

 元WBO世界ミニマム級チャンピオンで、先ごろ、2階級制覇を目指して復活した兄・竜也(りゅうや)を追いかけ、同時世界チャンピオンを目指す菫。それも遠くない将来、実現すると確信させる強さを存分に見せつけてくれた。
 山中の戦績は6戦6勝(2KO)。初黒星となった狩野の戦績は7戦4勝(2KO)1敗2分。

左ストレートを上下に散らす松田
左ストレートを上下に散らす松田

 サウスポーの松田は、ファイタースタイルの長井から距離を置き、ステップインのタイミングを何度も変えて左ストレートをボディにヒット。長井も左腕を伸ばして松田のパンチの軌道を切り、かつ、視界を遮って右を叩き込むことに成功したが、松田がフットワークでそのアングルから外れると、強引に前進して連打していかざるをえなくなった。

 4回に入ると松田は前傾になってテンポを速めて攻撃し、長井が入ると引き、左から右フックを引っ掛ける。5回にはふたたび大きく動き出すが、長井がそのスタイルに対策を練っていると察知すると、離れすぎず近づきすぎずのポジションをステップで構築。リズムボクシングで連打を決めた。

長井も粘り強く戦ったが……
長井も粘り強く戦ったが……

 以降はクリンチが増えていったものの、松田はボディワークを使って長井の連打をかわし、逆に連打を見舞うと、最終回にはクリンチからするりと腕を抜いて左ストレート、左ボディアッパーを決める。決して心を折らない長井の執念も素晴らしかったが、松田は終始、試合を支配してみせた。

元OPBFバンタム級王者・鳥海純会長と喜ぶ松田
元OPBFバンタム級王者・鳥海純会長と喜ぶ松田

 2度の世界挑戦に失敗(引き分け、判定負け)し、ふたたびかつて保持していた王座からの出直しに臨んだ松田。「まだ上との差がある。もう1度世界挑戦するまでに課題を克服したい」と、しっかり自分自身を見つめられている。7戦5勝(1KO)1敗1分。

 序盤良い攻撃を見せた長井だが、松田の変化についていくことができなかった。そこでの対応力が浮上のカギを握る。14戦6勝(2KO)5敗3分。

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