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2022-09-23

【ボクシング】千葉開が強打の栗原慶太を最終回ストップし新王者

千葉の右。栗原もスリッピングアウェイで威力を逃そうとしたものの、一瞬及ばず

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 22日、東京・後楽園ホールで行われたOPBF東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦は、挑戦者13位の千葉開(ちば・かい、29歳=横浜光)が、チャンピオン栗原慶太(29歳=一力)を最終12回50秒レフェリーストップによるTKOに下し、新チャンピオンとなった。

文_本間 暁
写真_山口裕朗

 最終回早々、危険な距離を難なく突破した千葉は、最後の力を振り絞って左右のショート連打。アッパーも混ぜ込んだ攻撃に、栗原はもう、反応できない。前の回にもレフェリーは何度も止めようと両者に近寄ったが、栗原はスイングを繰り返して抗った。が、すでにその余力は残っていなかった。
 ストップと同時に崩れ落ちた栗原を確認すると、新チャンピオンはロッキー・フエンテス(元東洋太平洋フライ級王者)トレーナーと熱く抱擁。さらに、石井一太郎会長とも喜びを分かち合った。

 中嶋一輝(大橋)を屠り、元IBF世界スーパーバンタム級王者・小國以載(おぐに・ゆきのり=角海老宝石)との技術戦に引き分ける(4回負傷による)など、破格の強打に加え、左フックのカウンターにも磨きのかかっていた王者・栗原。昨年5月の王座決定戦で中嶋に敗れ、新鋭・高山涼深(たかやま・すずみ=ワタナベ)にも敗戦して連敗と、越えたい壁をもう一歩のところで飛び越えられなかった千葉。近年の充実度には大きな差があったように思う。

3回、豪快な左アッパーを振った栗原だが、千葉は冷静にかわした
3回、豪快な左アッパーを振った栗原だが、千葉は冷静にかわした

 しかし、立ち上がりから冷静に、距離をコントロールしていたのは千葉だった。栗原のプレッシャー、右スイング、引っかけるようにして放つ左フックは、第三者から見れば非常に印象に残る。が、挑戦者は、スッとバックステップでかわし、左右へ動いて間合いを切り、しっかりとしたガードで対処。まともなクリーンヒットを決して奪わせなかった。
 そればかりではない。左を栗原のボディに送り、低い姿勢になるところに栗原が右打ち下ろしを狙えば、ボディにフェイントを入れて左を突き上げる。中を意識させておき、ショートの左フックを見舞う。栗原は、いつものように気持ちよく右を打ちこむことができなくなった。

 4ラウンドを終えての公開採点では39対37が三者と、ジャッジは栗原を支持していたが、「僕につけてくれている人もいたんだ」と、千葉は心を揺さぶられることはなかったという。戦い方に迷いを生じなかったのだろう。

内外と使い分けてヒットした千葉の左
内外と使い分けてヒットした千葉の左

 中途半端な距離を断ち、栗原のブローが生きる間合いを遠く、近くと切り続けた千葉のステップもさることながら、栗原自身のコンディションはどうだったか。元来、追い足が特別に優れているわけではないが、最短距離でいつの間にかぬるりと自らの間合いを築く独特の足がある。だが、それが、ついぞお目見えしなかった。
 6ラウンドあたりから、動かない足は目に見え始め、7ラウンドにはついに自らロープを背負って、入ってくる千葉を誘い込む作戦に出た。場内のラウンド表示を気にする仕種も見え始め、スタミナ的にも困っている様子だった。派手さはなかったが、コツコツと差し込んでいた千葉のボディブローの効果もあったろうが、何らかのトラブルがあったとしか思えなかった。

 それでも8ラウンド終了後の公開採点はジャッジ三者とも76対76のイーブンだった。ここで、踏ん張りの利かない両足を我慢しつつ栗原は右強打を狙う。千葉は距離とガードで受け止めて、ワンテンポ遅らせて右のリターンをヒット。それを察知した栗原は、同じタイミングでフック、アッパーと右を変化させて繰り出したが、千葉はこれに乗らなかった。いよいよ試合をコントロールし始めたことを象徴するシーンだった。

11回、連打で栗原をグロッギー状態にさせた
11回、連打で栗原をグロッギー状態にさせた

最終回のストップシーン
最終回のストップシーン

 そうして千葉はしっかりと栗原のリターンを警戒し、入り込んで徐々に連打をまとめ始めた。10ラウンド、栗原は猛然と左右のフルスイングで襲いかかった。完全に勝負を仕掛けた。だが、千葉はその大半をしっかりとガードで受け止めた。
「松原(陵=帝拳)戦(2017年10月、千葉の5回TKO勝ち)で攻められたシーンがフラッシュバックした」(千葉)。あのとき、こうやってかわしたから……と、ほんの数秒で考え、心を強く持っていたのだという。そして、「栗原選手の力はこの後、必ず落ちる」とも。
 11、12ラウンドに披露したコンパクトな連打は「以前は力んで振り回して失敗したから」と反省して得たもの。「これまでの経験がすべて生きた。そしてロッキーさんの『シンプルに』という教えがぴったりとフィットしました」と言って、顔を見合わせて笑った。

左から松永宏信、石井会長、赤穂亮、伊藤雅雪さん。2度目の挑戦でジムの先輩チャンピオンたちの仲間入りを果たした
左から松永宏信、石井会長、赤穂亮、伊藤雅雪さん。2度目の挑戦でジムの先輩チャンピオンたちの仲間入りを果たした

試合後、フエンテス・トレーナーと会見に臨み、感謝を述べた
試合後、フエンテス・トレーナーと会見に臨み、感謝を述べた 写真_本間 暁

 栗原はWBC11位、IBF11位、WBO15位と世界ランクを持っていた。勝者・千葉がランク入りすることは確実だが、「自分のレベルが一気にそこまで上がっているわけじゃないので。地道に一つひとつやっていくだけです」と殊勝に語り、「とにかくどのベルトでも手に入れることが夢だったので。夢のような瞬間です」と言って、勝利をかみしめた。
 千葉の戦績は18戦15勝(9KO)3敗。初防衛に失敗した栗原の戦績は24戦16勝(14KO)7敗1分。

近藤明広は柳との無冠戦に快勝

近藤の右カウンターが炸裂
近藤の右カウンターが炸裂

柳はたまらずヒザから落ちた
柳はたまらずヒザから落ちた

 セミファイナルで行われた64.0kg(スーパーライト級リミット+500g)契約8回戦は、OPBF東洋太平洋スーパーライト級王者・近藤明広(37歳=一力)が、日本同級6位・柳達也(32歳=伴流)を6回2分5秒TKOに下した。
 2019年11月(前戦は近藤の8回3-0判定勝利)以来の再戦は、さらに明白な差がついた。両グローブでリズムを取りつつ、柳の散らす攻撃をしっかりと止めてプレッシャーを与えた近藤は、左を起点に徐々にヒットを奪っていく。3回、柳が右アッパーをボディに差し込むと、近藤は明らかに力感を増した右フックを打ち始め、じりじりと柳を追い込んでいった。
 そうして迎えた6回、じわじわと距離を詰めて、左で柳の右を誘った近藤は、一瞬速く右を貫いてヒザを着かせた。柳は立ち上がったものの、レフェリーはカウント途中で試合を止め、近藤の勝利を宣言した。
 近藤の戦績は47戦35勝(20KO)10敗2分。柳の戦績は28戦18勝(7KO)8敗2分。

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