現地10月2日(日本時間10月3日)に、全米各地と英国のロンドンで14試合が開催された、アメフトの世界最高峰、米プロフットボール・NFLの第4週。
ジャガーズのQBローレンスは、ルーキー年より確実に進化している。しかしこの日は本当にボールセキュリティーの大切さを思い知らされた。NFLによると、1試合4ファンブルは、1991年以降のNFLのQBでは最多という、不名誉な記録を残してしまった。
高校時代からエリートQBとして名をはせてきたローレンスだが、自分に起因する5ターンオーバーは、自己ワーストだという。
対照的に、イーグルスのQBハーツは、序盤の失敗から立ち直り、ゲームをコントロールした。パスは16/25で204ヤード。ランでは16回38ヤード1TD。相変わらずレッドゾーンでのパスの決定力には課題を残すが、周囲の人材を活用するクオーターバッキングに優れている。
その人材、RBマイルス・サンダースは27回のキャリーで、134ヤード2TD、ケネス・ゲインズウェル、トレイ・サーモンという若手RBも、出番は少ないが良い仕事をした。ラン50回、計210ヤードは、悪天候下のオフェンスとしては非常に効果的だった。
イーグルスは、唯一の4戦全勝。派手さはないが、オフェンス2位、ディフェンス3位というバランスの取れたフットボールを展開している。特に4試合中3試合で160ヤード以上のランオフェンスと、116点中86点と約75%を奪っている第2Qでの得点力が大きい。
スティーラーズがQBをピケットにチェンジ
ジェッツ○24-20●スティーラーズ
ジェッツの2年目、23歳のザック・ウィルソンとスティーラーズのルーキー、24歳のケニー・ピケット。2人のQBが競う展開でウィルソンが逆転勝利した。
ウィルソンは、4Qに70ヤード以上のドライブで2本のTDを記録、10点のビハインドを跳ね返した。ジェッツは過去50試合で初となる、アウェーでの連勝となった。
ウィルソンの前半のハイライトは、彼がジェッツのQBとしては史上初のTDパスをキャッチした完璧なスペシャルプレーだった。だが、このコール自体が、彼のパス能力への信頼の低さ故といえなくもない。
ウィルソンはパス18/36で成功率は50%、252ヤード1TD、2INTで、試合を通じて見れば、まだ本領発揮とは言えない。OLBのT.J.ワットを負傷で欠き、パスラッシュの破壊力が大きく減っているスティーラーズディフェンスに対し、プレッシャーの中で、しばしば混乱状態に陥った。
現時点でのパス能力は、明らかに先週までのスターター、ジョー・フラッコの方が上。だが、ウィルソンを育てたいジェッツは多少のことには目をつぶる気でいる。その意味で、この試合の4Qは、大きな意味があったに違いない。
QBを育成したいのは、スティーラーズも同じだった。そして、サイドラインで学んでいた、今年のドラフトで唯一の1巡指名QBだったピケットをこの日、初めてフィールドに送り出した。
この日がNFLデビューになることは、誰もが予感していた。今季スターターQBとなったミッチ・トゥルビスキーは、ショートパスばかりで、決定力を欠き、オフェンスを進められない。
加えて、ピケットは、ピッツバーグ大学のエースQBで、スティーラーズと同じスタジアム(旧ハインツ・フィールド、現アクリシュア・スタジアム)で5年間プレーしてきた地元のヒーロー。ファンがホームでのジェッツ戦で、ピケットの起用を待ち望んだのは無理もなかった。
6-10で折り返した後半からピケットは出場。最初のドライブでは、いきなりインターセプトを喫した。しかし、直後のジェッツのドライブで、QBウィルソンのパスをスティーラーズSミンカー・フィッツパトリックがインターセプト、ゴール前までリターンした。
お膳立てをしてもらったピケットは、1ヤードのQBスニーク。NFLで初TDを決めた。ピケットは次のオフェンスでも、11プレーで80ヤードを進み、またしても自身がキープして2ヤードのTDラン。
スタジアムの地元ファンは熱狂した。しかし、見せ場はここまでだった。この後、ジェッツが2本のTDで逆転したのに対し、ピケットは2INTで終わった。ランで2TDだが、パスでは3INT。比較的脚力はあるが、基本的にはパサーのピケットにとって、デビュー戦は苦いものとなった。
1勝3敗となったスティーラーズは、ここからビルズ、バッカニアーズ、ドルフィンズ、イーグルスと、強敵との対戦が続く。ピケットにとってはいきなり正念場となる。
ロジャースが史上5人目の500TDパスを達成
ペイトリオッツ●24-27○パッカーズ
前半終了時、QBアーロン・ロジャースは、本人ではなく、そっくりさんがプレーしているのか?と思われるほど酷かった。パス4/11、44ヤード、そしてピック6(=INTリターンTD)。何度もMVPに輝いた、パスの達人の姿はなかった。
しかし、3Qの途中から、どうやら本物のロジャースがフィールドに帰ってきた。
3Qの3rd&10で、WRアレン・ラザードに32ヤードのパスを決めてからは、いつものロジャースだった。
ペイトリオッツの、手厚いマンカバレッジに対し、クイックなリリースでアジャストして、攻略した。パスプロテクションが改善されたのも助けになった。そして、記念すべきNFLで500本目のTDパスも決めた。
2ミニッツウォーニング直前で投じたTDになるはずのパスは、ルーキーのWRロメオ・ダブスがきっちり確保できず、パス失敗となった。だが、パス自体は、ロジャースらしい完璧な美しいパスだった。
オーバータイムでは、パッカーズの2回目のドライブを完璧にリードし、Kメイソン・クロスビーの決勝フィールドゴールをお膳立てした。
ロジャースの500TDパス(公式戦とポストシーズン合計)はNFL5人目。ブレット・ファーブ (552) 、ペイトン・マニング (579) 、ドリュー・ブリーズ (608) 、そしてトム・ブレイディ (713)に次いでの達成となった。39歳のロジャースは、史上2位までの可能性は十分に残しているように見える。
敗れたとはいえ、ペイトリオッツの健闘は特筆ものだった。前週のゲームでエースQBのマック・ジョーンズが負傷。ベテランのブライアン・ホイヤーが先発したが、1Q途中からルーキーのベイリー・ザッピーが登場した。ザッピーはパス10/15、99ヤード1TDでINTはなし。3サックを浴び、ファンブルロスト1回はあったものの、ゲームをきちんと作った。
ザッピーはドラフト4巡指名。スプレッドオフェンスの申し子ともいうべきQBだ。昨シーズンはウェスタンケンタッキー大学で、パス5967ヤード、62TD(11INT)という成績を残した。ジョー・バロウ(ベンガルズ)が、ルイジアナ州立大学時代に作ったカレッジフットボールFBSのパスTD記録を塗り替えていた。
プレースタイルや背格好も、マック・ジョーンズによく似ている。ペイトリオッツらしいQBがまた登場した。
パンサーズ、ルールHCとQBメイフィールドが窮地に
カーディナルス○26-16●パンサーズ
2人のQB、パンサーズのベイカー・メイフィールドとカーディナルスのカイラー・マレイは、オクラホマ大学で1年違い。共にハイズマントロフィーを受賞し、ドラフト全体1位でNFL入りした。2人のパスは10ヤードしか差が無かったが、チームのラン獲得ヤードが132対40で大差。それが試合にも反映した。1勝3敗となったパンサーズは、マット・ルールHC、QBメイフィールドが共に後がなくなった状況だ。
ベアーズ●12-20○ジャイアンツ
好調のジャイアンツが3勝目。完全復活した、エースRBサクオン・バークリーが31回のキャリーで146ヤードのワークホースぶりを発揮。さらにQBダニエル・ジョーンズ、タイロッド・テイラーも走りまくり、チームのランは合計262ヤードに達した。
ただし、代償も大きく、ジョーンズは足首の負傷、テイラーは脳震盪プロトコールで次戦は出場できないという。
シーホークス○48-45●ライオンズ
両チームで93点、オフェンストータル1075ヤードという壮絶なシュートアウトをシーホークスが制した。シーホークスはQBジーノスミスがパス320ヤード2TD、RBラシャード・ペニーがラン151ヤード2TD。ライオンズはQBジャレッド・ゴフがパス378ヤード4TD(1INT)、RBジャマール・ウィリアムズがラン108ヤード2TDだった。
1勝3敗のライオンズは4試合でオフェンスは得点。ヤード共にNFL1位だが、ディフェンスは得点、ヤード共に32位となっている。
チャージャーズ○34-24●テキサンズ
チャージャーズが第2Qに20点を奪う猛攻。2勝2敗とした。肋軟骨骨折で試合に出続けているQBジャスティン・ハーバートはパス340ヤード2TD。テキサンズは32チーム中で唯一勝ち星がない。
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