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2022-10-07

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第2回「自分に負けるな」その4

平成28年春場所12日目、連敗を喫した稀勢の里は、風呂から上がると報道陣に背を向け、このポーズ

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会社や、学校などで、新しいスタートを切ったみなさん、おめでとうございます。
平成31(2019)年春場所、大相撲界にも希望に燃えた弟子たちが40人も入ってきました。
彼が目指すのは、もちろん、番付の一番てっぺん、横綱です。
そこにたどり着くには、筆舌に尽くしがたい試練を乗り越えなければいけませんが、最大の壁は何か。
こっそり教えましょう。それは最も身近にいる自分です。自分に負けてはいけないんです。
兄弟子たちも、甘えたくなる自分の心に真っ向から立ち向かい、打ち克って出世の階段を上っていきました。そんな壮絶な闘いぶりを教えましょう。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

報道陣に背を向け

負けたときの対応も難しい。敗因はすべて自分にあり、何を言おうと弁解でしかないからだ。
 
平成28(2016)年春場所12日目、稀勢の里は、前日の白鵬戦に続いて日馬富士にも叩き込まれ、バッタリと腹ばいになった。これで初日から10連勝したあと2連敗。しかも惨敗だった。対照的に白鵬が2日目から悠々と連勝しており、またしても優勝争いから一歩後退したかたちだ。
 
当然、支度部屋には、その胸の内を聞こうと大勢の報道陣が、それこそ手ぐすね引いて待ち受けている。その輪の中に入っていかなければいけない稀勢の里にすれば、さぞかし気の重いことだったに違いない。風呂から上がり、ようやく姿を現した稀勢の里が取った次の行動を見て報道陣は戸惑った。
 
なんとクルッと背中を向けて座ると、額に左手を当てて、考え込むポーズを作ったのだ。まるでいまさら敗者に何を語らせたいの、敗因はわからない、いま考えているところです、と言わんばかりに。これには報道陣も黙って引き下がるしかなかった。
 
翌朝、稀勢の里は黙々と123回も四股やスリ足などの基本動作を繰り返し、重い口を開いてこう言った。

「(結果がどうあろうと)自分が納得した相撲をとるしかありませんから。基本に戻ってやるだけです」
 
自分を信じろ。目先の結果に振り回され、ブレていてはいい結果は出ない。稀勢の里のこの基本重視の姿勢が実り、初優勝したのは5場所後のことだった。

月刊『相撲』令和元年5月号掲載

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