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2022-10-12

【ボクシング】公約どおり! 小原佳太が小畑武尊に3回TKOでV3

「もう立ってこないと思った」と小原

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 11日、東京・後楽園ホールで行われた日本ウェルター級王座統一戦10回戦は、王者・小原佳太(35歳=三迫)が暫定王者・小畑武尊(こばた・たける、24歳=ダッシュ東保)に3回2分35秒TKO勝利。王座統一とともに3度目の防衛に成功した。

文_本間 暁(小原対小畑)、西村華江(仲里対鯉渕)
写真_山口裕朗

「レベルの違いを見せつけて勝つ」。戦前から公言していたとおりの小原の圧勝劇だった。立ち上がりからリズムを完璧に取ってペースを支配したまま、一気に試合を決めてしまった。

半身の小畑の右顔面に右ストレートを浴びせる小原
半身の小畑の右顔面に右ストレートを浴びせる小原

 とにもかくにも初回がすべてだった。サウスポーの小畑は、前戦(暫定王座決定戦)で元王者・永野祐樹(帝拳)と対戦したとき同様、呼び込んでカウンター狙いの作戦だったのだろう。しかし、ファイターの永野と違い、小原は中間距離をもっとも得意とするタイプ。おいそれと飛び込まず、間合いをキープしながら、ボディムーブとグローブでのフェイントを多用し、あっさりとリズムに乗った。

「全部に反応してるぞ!」とセコンドから声を送ったのは加藤健太トレーナー。小原のちょっとした動きすべてに、反応に長けた小畑は敏感に動く。つまり、フェイントにも、である。リズミカルに自分の動きを実践していた小原は、小畑をその一挙手一投足で引きずり込んだ。そうして完全に主導権を手に入れた。
 反応が良すぎるのも良し悪し。“鈍感力”や“無視すること”も、ときには大事という好例で、小原は小畑の特性を逆手に取って利用したのだ。

小畑もカウンターをヒットさせたが、後が続かなかった
小畑もカウンターをヒットさせたが、後が続かなかった

 遠い間合いから時折、ストレートやアッパーの左ボディブローを見せた小畑だが、その一撃で終わってしまう。小原がスッと距離を取って、それ以上手を出させないのだ。ならばとロープを背負えば、小原はステップのタイミングを変えながら上下に波状攻撃。小原の右をかわして左をリターンした小畑だが、さらにそれをかわして小原は右をヒットさせた。

左ボディからつないだ右は、軌道を変えたフック。この一撃で倒した
左ボディからつないだ右は、軌道を変えたフック。この一撃で倒した

「2回あたりから、ボディアッパーを見せておいて」(小原)角度やタイミングを意識させておいた小原は3回、左上下から「フック気味の右」につなぐ。「相手はおそらくストレートが来ると思ったはず」という小原の一撃でキャンバスに落下した小畑は、立ち上がったもののフラついてレフェリーに抱えられた。

会心の勝利を喜んだ小原は、先月亡くなった恩師・矢尾板貞雄さんへの感謝を述べた
会心の勝利を喜んだ小原は、先月亡くなった恩師・矢尾板貞雄さんへの感謝を述べた

「相手の前評判が良かったけれど、僕にはわからない何かがあると思って、油断せず緊張感を持っていた」と小原。自身の右足負傷により設置された暫定王者を一蹴し、ふたたび別のステージへの希望を膨らませる。
「小原自身も言っているとおり、世界ランカーと戦わせたい。そして海外での試合に繋がるよう、持っていきたい」と三迫貴志会長も、愛弟子の快勝に大きな期待を抱いている。

 小原の戦績は31戦26勝(23KO)4敗1分。小畑は19戦12勝(5KO)6敗1分。

日本王座挑戦権は仲里周磨が獲得

仲里の右がヒット
仲里の右がヒット

 セミファイナルで行われた最強挑戦者決定戦ライト級8回戦は、1位の仲里周磨(ボクシングクラブオキナワ)が2位・鯉渕健(横浜光)に76対76、77対75、78対74の2ー0判定勝利。来年開催のチャンピオンカーニバルで日本同級王座への挑戦権を獲得した。

 ジャブで先制した仲里に対し、鯉渕はジャブで牽制し左フックを強振。いつもどおりそのままグイグイと前進するかと思われたが、この日は上体をポンプのように刻み、サークリングして足を使っていく。おそらく仲里の裏をかく戦法で、踏み込んでは右のアッパーやフック、さらには逆ワンツーで左をヒットさせていった。

普段とは違う戦い方を見せた鯉渕に、仲里も戸惑いを見せていた
普段とは違う戦い方を見せた鯉渕に、仲里も戸惑いを見せていた

 足を使う相手に明確なヒットを奪えない仲里だったが、要所で左ボディブローを好打して流れは渡さない。しかし3回に鼻上部、6回に右目上をいずれもバッティングでカット。中盤は、流血しながらの苦しい戦いを強いられて後手にまわり、右の打ち終わりに右を合わされる場面が増えていった。それでも、ボディ攻撃を巧みに使い続けた効果で、コツコツとヒットを奪っていた鯉渕の疲労の色が濃くなってくる。
 打ち合いになった終盤、仲里は左ボディからの右ストレートや左フックを次々にヒットさせ、鯉渕の粘りを突き放して勝利を掴み取った。

2度目の日本王座挑戦に駒を進めた仲里
2度目の日本王座挑戦に駒を進めた仲里

 勝利した仲里は、11月17日に後楽園ホールで行われる日本タイトルマッチ、王者・宇津木秀(うつき・しゅう、28歳=ワタナベ)対5位・ジロリアン陸(34歳=フラッシュ赤羽)の勝者と対戦することになる。


【その他の試合結果】

シンプルな攻防ながら、巧さを際立たせた永田の左がヒット

シンプルな攻防ながら、巧さを際立たせた永田の左がヒット

1発の威力では勝った中嶋だが、受け身に回り、クリーンヒットも奪えなかった

1発の威力では勝った中嶋だが、受け身に回り、クリーンヒットも奪えなかった

☆フライ級8回戦
○永田丈晶(ながた・じょうすけ、24歳=協栄)日本スーパーフライ級14位
●中嶋憂輝(27歳=角海老宝石)日本フライ級8位
判定3ー0(79対73、80対72、80対72)
 サウスポーの永田が完勝を果たした。攻防は実にシンプル。右リードで中嶋の左脇腹を突き、左ストレートを上下に刺す。セコンドの内田洋二トレーナーからしきりに飛ぶ「ずらして!」の指示どおり、永田は、ほんのわずかずつ左右に立ち位置を常に変えて攻防を展開する。中嶋は受け身にならざるをえず、永田の攻撃後に左フック、右強打を単打で返すのみとなった。下を見て上を打ち、上を見て下を打つ。あるいはワンステップ、ツーステップと入るタイミングを変え、強弱も変化させて打つ永田の左ストレートに、中嶋は最後まで翻弄された。永田はリズミカルに上下左右に上体を動かしており、これが攻防に色どりを加えていた。元高校チャンピオン対決を制した永田の戦績は4戦4勝。本来はショート連打をまとめる技術もあるため、上位進出も現実味を帯びてきた。減量、あるいはリカバリー不良の影響か、足が動かないように見えた中嶋は9戦5勝(5KO)2敗2分となった。【本間 暁】

右強打をヒットさせた渡来
右強打をヒットさせた渡来

ピニリの攻撃をショルダーで流す高等技術を披露
ピニリの攻撃をショルダーで流す高等技術を披露

☆スーパーライト級6回戦
○渡来美響(わたらい・みきょう、23歳=三迫)
●ロメル・ピニリ(22歳=フィリピン)
判定3-0(60対54、60対54、60対54)
 フリッカージャブのスピード、角度、威力を自在に変えてスタートした渡来は、右フック、左ボディアッパーと強打を集めて当初からピニリを圧倒。しかし、タフなピニリを察知すると、自らロープを背負って攻めさせて、L字ガードやショルダーブロックから右アッパーのカウンターを奪った。リング中央ではノーガード状態から巧みなパーリングでピニリの攻撃をシャットアウト。最終回にはふたたびテンポ、強度を加速させて攻めまくり、スタミナの充実度もアピールした。
 キッズ時代から注目され、武相高、東洋大で腕を磨き、今年4月にデビューした渡来は非凡なセンスの持ち主。拳のヒッティングポイントを改善すれば、より恐ろしい存在になるはずだ。渡来の戦績は2戦2勝(1KO)。ピニリは8戦5勝(4KO)2敗1分。【本間 暁】

左強打をヒットさせた山口。この直後、レフェリーが試合を止めた
左強打をヒットさせた山口。この直後、レフェリーが試合を止めた

☆スーパーフライ級6回戦
○山口仁也(22歳=三迫)
●アルジェル・サムソン(21歳=フィリピン)
TKO4回1分24秒
 サウスポー同士の1戦は、波乱の幕開けとなった。初回、右フックの相打ちでダウンを奪われた山口は、立ち上がったもののショックはありあり。その山口に対し、サムソンは追撃の左ストレートでもグラつかせた。しかし、山口は左右ボディ攻撃を起点に手数を増やし、劣勢を徐々に挽回していく。
 4回、左ストレートをヒットした山口は、続けざまの左右連打でフィリピン人を座らせる。再開後、ノーガードになったサムソンに左右フックを浴びせると、レフェリーが割って入り試合を終わらせた。
 東福岡高、大東文化大出身の山口は、6月のデビュー戦に続き連続KO勝利。戦績を2戦2勝(2KO)とした。逆転負けのサムソンは6戦4勝(4KO)2敗となった。【西村華江】
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