この一戦で勢いをつけたい。互いにそう思って臨んだ戦いだったはずだ。だが、この日本スーパーフェザー級タイトルマッチ、思いがけないほどの一方的な展開になる。黒星こそないが、安定感を欠くチャンピオンの末吉大(帝拳)、そして挑戦者は2度のタイトルマッチでストップ負けを喫している坂晃典(仲里)。負けのない分、末吉が有利とみられたが、坂の速攻にペースを奪われたまま、6回に痛烈に倒され、この回1分30秒TKOに屈した。(7日/東京・後楽園ホール)
上写真=坂の右ストレートに末吉は崩れ落ちる
まずは流れを見てから考える。もしかすると、末吉はそう考えていたのかもしれない。だが、坂は一気に攻めて出て、立ち上がりから流れをかっさらった。初回中盤、右フックを決められてぐらついた末吉は、さらに左フックで後退を始める。2回も坂が左フックでチャンピオンをロープへと追いやり、末吉が懸命に右ストレートを打ち込んでも、同じパンチで切り返された。
3回以降、わずかに攻撃を手控えた坂だったが、この時点ではっきりと余裕が生まれていた。右ストレート、左フックで好打を重ね、末吉のアゴが大きくはね上がるシーンも次々に。ジャブの打ち合いでもチャレンジャーが上回った。
6回のフィニッシュは痛烈だった。右ストレートで末吉がふらつくのを見て、坂は即座に追撃に入る。連打に末吉の足もとが乱れる。何とかコーナーを抜け出したチャンピオンに、とどめの右。コーナーポストに後頭部を打ちつける痛烈なダウン。レフェリーのビニー・マーチンはノーカウントで試合を止め、坂の勝利をコールした。
坂は試練を乗り越えての2階級制覇達成。確かに末吉も精彩がなかったが、それよりも先制攻撃で作った勢いを保ち、そのままスキを与えなかった戦いぶりをたたえるべき。末吉は4度守ったタイトルを手放し、今後の活動に暗雲が立ち込めた。
文◎宮崎正博 写真◎矢野寿明
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