close

2019-10-05

【海外ボクシング】ウィークエンド・プレビュー ゴロフキン、世界王座復帰をかけて難敵と対戦

秋口を迎え、世界のボクシングはいよいよ佳境を迎える。これから12月第3週くらいまでが、本当のベストシーズン。欧米を中心にビッグマッチが目白押しとなる。そのオープニングを飾るのは、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)がミドル級の頂上復帰をかけたIBF王座決定戦。ニューヨークの殿堂MSGで行われる戦いは、だが、展開次第では番狂わせの可能性もある難敵が相手。DAZNで生配信するこのカード、見逃せない。

写真上=ゲンナディ・ゴロフキン

10月5日/マディソンスクエア・ガーデン(アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク)

★IBF世界ミドル級王座決定戦12回戦
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)VSセルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)

ゴロフキン:37歳/41戦39勝(35KO)1敗1分
デレビャンチェンコ:33歳/14戦13勝(10KO)1敗1分
※日本時間6日、午前10時よりDAZNで生中継

 かつての絶対的な力はないのかもしれない。昨年、若きライバル、サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)に屈し、ついに無冠となった。判定は2-0の僅差だったが、メキシカンのアウトボクシングに振り回されて、大方の見方は順当な判定とみていた。史上最多タイ記録の17連続KOを含む20度防衛の名王者にも、衰えの影が忍び寄っているように見えた。けれど、ゴロフキンの鉄拳は健在だ。

 DAZNと契約し、カムバック戦となった6月のスティーブ・ロールズ(カナダ)戦も、無名を相手にしながら、立ち上がりは硬さも目についた。ただし、フィニッシュは圧倒的だった。左右の強打で追い込み、左ショートフックで前のめりに切り倒した。少なくとも、拳の破壊力は全盛期と比べてもそん色はない。

セルゲイ・デレビャンチェンコ

 そんなゴロフキンだが、今度の対戦者はかなり手ごわい。デレビャンチェンコはがっちり型体型で背は高くない。パンチも爆発的とはいいがたい。華やかなテクニックとも縁がなく、スピードもそれほどでもない。昨年の10月、初めての世界戦もIBF王座決定戦だったが、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)にダウンを奪われて敗れている。それでも、この選手、一筋縄にはいかない。細かな出入りでテンポを作り、こつこつと多彩なパンチをまとめていく。クロスレンジをキープすれば、ピッチはさらに上がっていく。ディフェンスも手堅い。

 ゴロフキン側から見れば、リードブローが活かすことが勝利への絶対条件。距離を開けたまま戦えば、右でも左でも一発KOの破壊力を持つ豪打を自在な角度で打ち込むことができる。逆に安易に接近戦を許すようなら、デレビャンチェンコのステップ、波状攻撃にかき回されることもあり得る。

 序盤での派手なKO決着、玄人好みのシブい技術戦、この試合は両方の可能性を持つ。面白い戦いになるのは間違いない。

◆東欧、中央アジアの精鋭が続々登場

 カザフスタンとウクライナの対決がメインイベントだけに、この日は中央アジア、東ヨーロッパの次世代エース級が勢ぞろいする。

イワン・バランチク

 スコットランドのエース、ジョシュ・テイラーに敗れて、IBF世界スーパーライト級の前チャンピオンとなったイワン・バランチク(ベラルーシ/26歳/19勝12KO1敗)が再起戦のリングに立つ。斧を振り回すような豪快なパンチは初黒星を喫したとしても魅力的。年齢的にも成長段階にあり、MSGリングで新しい境地を切り開くかもしれない。相手はベテランのガブリエル・ブラセロ(プエルトリコ/38歳/25勝6KO3敗1分)。しぶとい技巧派だが、これが15ヵ月ぶりのリング。バランチクに期待されるのは豪快な勝ちっぷりだけだ。

イスライル・マドリモフ(左)

 スーパーウェルター級10回戦にはプロわずか4戦目のイスライル・マドリモフ(ウズベキスタン/24歳/3戦3勝3KO)が出場する。2018年のアジア大会金メダリストは、巧みに距離を管理する技術に長け、しかもパワフル。デビュー戦から10回戦を戦った注目株だ。相手はアレハンドロ・バレラ(メキシコ/33歳/29勝18KO5敗)。ストップ負けはエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)に喫した1度だけとうタフガイだが。ここ4年は空白期間も多く、1勝3敗。マドリモフにはまだ見えぬ絶対的な決定力をこの戦いで、どうかに注目したい。

アリ・アフメドフ

 元世界学生チャンピオンのアリ・アフメドフ(カザフスタン/24歳/15戦15勝11KO)は、しぶとい元世界ランカー、アンドリュー・エルナンデス(アメリカ/33歳/20勝9KO7敗2分2NC)。じっくりとプロ経験を積んできたアフメドフには最初のテストマッチになる。

ブライアン・セバロ

 テストマッチと言うなら、ウェルター級のブライアン・セバロ(アメリカ/25歳/10戦10勝5KO)。PAL、ゴールデングローブ、全米選手権と3大アマチュアトーナメントを制した俊才にもそういうマッチメイクが与えられる。ロマル・アマノフ(アゼルバイジャン/35歳/16戦16勝5KO)との8回戦。このアマノフ、年はいっているが、長いアマチュア戦歴を持つ。今年に入って3連続KO勝ちと好調だ。セバーロも油断はできない。

ジョセフ・ウォード(右)

 デビュー戦ながら注目したいのはライトヘビー級6回戦のジョセフ・ウォード(アイルランド/25歳)。世界選手権では銀と銅、ヨーロッパ選手権3度優勝のアマチュア・レジェンドだ。東京五輪の優勝候補だったが、ニューヨークにベースを置く『タイムズスクエア・ボクシング』と契約し、プロ入りを決意した。5回戦で争うセミプロリーグ『WSB』でも15戦(12勝)しており、6ラウンドをフルに戦うことになっても不安はない。この注目サウスポー、初陣でどんな戦いを見せるのか、楽しみだ。

文◎宮崎正博
写真◎ゲッティイメージズ

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2019年10月号

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事