陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。55年ぶりに箱根路へと返り咲いた立教大で、予選会でチームトップだったのはルーキーの國安広人だ。理知的で自己分析力に優れ、トーク力も抜群。箱根で再スタートを切るチームのエースとして、ここから物語を紡いでいく。
中学時代から憧れてきた大会に4年連続で走れるようにインタビューをしていると、理知的な選手だということが浮かび上がってくる。しかも、この学生はまだ1年生だ。将来、大きく成長するに違いない――そんな予感がしてくる。
立教大の國安広人は、55年ぶりの箱根駅伝出場を決めたチームのエースになりつつある。
「そんなことないです。まだ、大学での競技生活は始まったばかりですから」
と國安は謙遜するが、すでに実力を発揮している。
10月15日に行われた箱根駅伝予選会では、1時間03分13秒のタイムで総合21位、1年生ながらチームトップの成績を残した。このレースで光ったのは國安の判断力だった。予選会は集団走をする学校が多い。それがもっともリスクが少ない戦いからだからだ。ところが、立教の上野裕一郎監督は「15kmのターゲットタイムは45分00秒」という宿題だけを与え、選手たちをフリーで走らせた。走力、判断力、そして考える力が求められる。國安は振り返る。
「僕自身は、チームの先頭を走るという役割を任せられていたんですが、レースが始まってみると、全体のペースが遅かったんです。『これ、もっと行けるな』と思って、5kmから10kmまでの間に集団の前の方にポジションを上げました。結果的に、この判断が良かったと思います。15kmの通過も45分以内でしたし、後半、昭和記念公園に入ってからはきつかったですが、ラスト1000mもペースを上げることができたので、自分の力は全部出しきれましたし、役割を果たせたかなと思います」
とても1年生の発言とは思えないが、上野監督の指導方針と國安の考え方がマッチして、このレース結果が出たのだろう。加えて、冷静な自己分析ができるのも魅力のひとつだ。
「自分の持ち味は、安定感だと思っています。駅伝に限らず、走るからには大きく外さない。ロードだとキツくなってくる瞬間がどうしてもあるんですが、そこで粘りのある走りをできるのが自分の強みだと思っています。これからの課題は、ハーフマラソンの距離の経験がいかんせん少ないので、それに慣れていくことですね。せっかく1年生で箱根駅伝を走るチャンスがあるので、中学時代から憧れてきた大会に4年連続で走れるように成長したいと思っています」
憧れの大会、はじめての箱根駅伝では2区を希望している。
「駒澤の田澤(廉)さん、青山学院の近藤(幸太郎)さん(共に4年)。きっと、2区には強い選手が集まりますよね。自分もその中に入って、競り合いたいと思ってます」
なんとも頼もしい1年生だ。
立教大の歴史が再スタートする2023年、國安広人の箱根駅伝での物語も始まる。
くにやす・ひろと◎2003年9月26日、兵庫県生まれ。170cm・56kg、A型。大久保中→須磨学園高(兵庫)。高校2年時に全国高校駅伝の6区(区間12位)を走り、7位入賞メンバーに。箱根駅伝予選会ではチームトップで55年ぶりの本戦出場に貢献。自己ベストは5000m14分03秒05、10000m28分53秒80、ハーフ1時間03分13秒(以上、2022年)。
箱根駅伝 2023完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)