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2022-12-25

【箱根駅伝の一番星】「シード権という置き土産を」。山梨学院大主将を務める伊東大暉の誓い

「チーム力が上がるなら嫌われても構わない」。伊東は主将として強い覚悟でチームをけん引してきた

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。自身の走りにもどかしさを感じながらも山梨学院大のキャプテンとして、伊東大暉(4年)はチームをけん引してきた。学生最後の大舞台、「チームのために」前回以上の走りでシード権獲得に貢献するつもりだ。

キャプテンとしてあるべき姿示す

主将として強い責任感を持ってチームを引っ張っている選手だ。昨年度までの山梨学大の練習では、10000mで28分台を持つ実力者が先頭を走ってペース管理することが多かったが、この春からは伊東の発案で、交代しながら一人でも多くの選手がその役目を担うようになった。練習でのけん引役は負荷が上がるため、なかには嫌がる選手もいるが、「チーム力が上がるのであれば、自分は嫌われても構わない」との覚悟で厳しい態度を貫いている。

「キャプテンとしてあるべき姿を示してくれています。自分が練習に真摯に向き合っているからこそ、それができるのでしょう」と飯島理彰監督もその姿勢を高く評価する。

だが、伊東自身は春からレースで思うような結果が残せていない。10月の箱根予選会もチーム9位とその力からすれば、物足りない結果だった。

「予選会だけでなく、今年は納得のいくレースが一つもないので、もどかしい思いはあります。練習でも余裕を持ってこなすというより、ギリギリついていくことが多く、“何をやってんだ”と自分でも腹が立つことが多かったです」

思い当たるのは前半戦1カ月に1本のペースで10000mに出場したこと。そこに向けた調整と、レース後の回復期間が必要になり、じっくり練習を積む時期が限られてしまった。加えて夏も体調不良で練習ができない期間があったという。その反省から予選会後は試合や記録会に出場せず、ひたすら走り込む日々を送っている。それもあり「だいぶ余裕を持って走れるようになってきました」と明るい笑顔を見せるまでに復調してきた。箱根に向けては問題なさそうだ。

希望区間は4区。前回はここで区間16位だったが、区間10位との差はあまりなく、大きく崩れたわけではない。「ただ16位という結果をずっと言われてしまうのが悔しいんです。もう一度、走れれば、攻略できるイメージはあります」とリベンジを期す。しかし、それ以上に伊東がこだわるのが“キャプテンらしい仕事をすること”。任された区間がどこであっても、チームの目標であるシード権獲得へ貢献したいと強い口調で語る。

「ここまでキャプテンらしい結果を残せていませんし、周りから厳しい目で見られているかもしれません。でも最後の箱根ではなんとしても、“チームのMVPは伊東だった”と言われるだけのインパクトのある走りをしたいです。来年度の100回大会に向け、シード権という置き土産を残して卒業します」

自分で納得できる走りをすることがチームの目標達成につながると信じ、最後の箱根への準備を進めている。



いとう・だいき◎2000年11月10日、鹿児島県生まれ。171cm・55kg、A型。生冠中→鹿児島実高(鹿児島)。前回の箱根は4区を走り、区間16位。主将を務める今年度は箱根予選会で個人207位と苦しんだものの、前回のリベンジを誓い、4区出走へ向けて調子を上げている。自己ベストは5000m14分21秒30(2018年)、10000m28分42秒54、ハーフ1時間04分04秒(共に21年)。卒業後は西日本鉄道で競技継続。

文/加藤康博 写真/井出秀人、中野英聡

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