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2023-01-08

【相撲編集部が選ぶ初場所初日の一番】誰が抜け出す次期大関争い。阿炎が琴ノ若との候補同士の激突で快勝

突っ張り合いからタイミングのいいイナシで琴ノ若を泳がせる阿炎(右)。この勝利から、次期大関争いに割って入っていけるか

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阿炎(突き出し)琴ノ若

まだ横綱が正式な地位ではなかった頃の明治31年以来、何と125年ぶりの「1横綱1大関」の番付で、かつそのうちの一人の横綱照ノ富士が、両ヒザ手術からの回復途上にあり休場という状況でスタートした初場所。そうなると、今場所の大きな焦点の一つは、いやおうなしに4関脇、4小結を中心とした次期大関争いから誰が抜けだすか、ということになるだろう。
 
そういう意味で、この日最も注目されたのは、今場所新小結となり、祖父(横綱琴櫻)、父(関脇琴ノ若、現佐渡ケ嶽親方)との3世代三役を実現させた琴ノ若と、先場所優勝の阿炎の対戦だ。阿炎は今場所の番付こそ平幕だが、「大関コンテンダー」としては、現在三役にいる力士にも劣らない存在。この一番は次期大関への序列を占う上で目が離せない一番だと言えた。
 
立ち合い、阿炎はいつものように思い切ったモロ手突き。琴ノ若も当たり負けせず、下からあてがい、さらには突き返す。しかし突き合いの間合いではやはり阿炎が一枚上。ノド輪からタイミングよくいなすと、琴ノ若はたたらを踏んで前のめりに。向き直ったところを、阿炎がノド、そして最後は胸元を突いて赤房下に突き出した。「廻しを取られないことだけを考えました」という阿炎にとっては狙い通りの内容だった。

次期大関候補同士の対決に快勝した阿炎。すでに先場所の優勝でその爆発力は証明済みであり、精神面でも、例えばこの日も優勝額の除幕式について聞かれ「うれしいですけど、今日は自分の相撲に集中していた。場所が終わってから喜びたいと思います」と語るなど、以前はどちらかと言うと“お調子者キャラ”だったのが一転、最近はグッと発言が落ち着いてきた。この心と技の充実度が持続できれば、現在三役にいる顔ぶれを大関争いで逆転できる可能性は十分にあるだろう。

一方、「下がらず攻めてはいたんですけど、ちょっと対応が遅れた」と悔しそうな琴ノ若も、この日は敗れたが、「ずっと下がっていた相撲ではないので、あとはしっかりこの出足を相手にぶつけていけるように」と今後へ闘志。明日からの逆襲に期待が持てそうだ。

また、次期大関争いと言えば、この日は若隆景が、「流れの中でそうなった」ということではあるが、おっつけのあと、右上手をつかんでの攻めで勝ち、“オッ”と思わせた。若隆景にとって廻しを取っての攻めは安定した二ケタ勝利へのカギとなるかもしれず、また苦手の序盤戦を白星スタートしたということも大きい。豊昇龍も翔猿を圧倒。現状、次期大関争いをリードする、この東西両正関脇の戦いも、今場所はより激しくなりそうだ。

一方、最近の実績では大関候補の中でもトップの髙安は、カチ上げの威力を欠き、腰高のまま攻められて黒星スタート、先場所千秋楽に首を痛めた影響が心配だ。正代も「元大関対決」で御嶽海に寄り切られて黒星。今場所10勝を挙げての大関復帰には暗雲が垂れ込めた。復帰を目指す「元大関組」には残された時間は長くないだけに、ここが踏ん張りどころだ。

文=藤本泰祐

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