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2023-05-19

【相撲編集部が選ぶ夏場所6日目の一番】大栄翔が今場所初の関脇対決に勝利。来たるべき大関取りへ着々

豊昇龍にほとんど攻めさせず、押し出しで関脇同士の対決を制した大栄翔。大関への距離は、だんだんと詰まってきている

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大栄翔(押し出し)豊昇龍

きょうも気迫がほとばしった。大栄翔が、4関脇となった今場所最初の関脇同士の対決(しかも4勝1敗同士の激突)を制して1敗をキープした。
 
この日の相手の豊昇龍には、この1年で1勝4敗。今年1月場所だけは一方的に突き出しているが、優勝同点の好成績だった先場所ですら、下からうまく掬われてつかまり、負けている相手だ。
 
ただそれでも、相手がだれであろうと迷いなく攻めていくのが大栄翔の持ち味。この日の相手は立ち合い変化もあるが、ギリギリまで上目遣いで見ながら、当たる瞬間だけ頭を下げるような立ち合いで当たっていった。「廻しを取ったら強いんで、それを意識した」と言うだけあって、右の突きがよく伸び、回り込まれたあとも慌てず相手を正面に置いて追撃し、押し出し。「土俵際、きょうは落ち着いて、気を抜かないように」と、きのう敗れた反省も生かした。

これで1敗キープ。またこの勝利は、現状の番付では東の2人目の関脇の大栄翔が、西の正関脇を上回る力を持っていることを示したもの、という見方もできる。
 
霧馬山の大関取りが焦点となる今場所だが、ここまでの4関脇の相撲内容を比較すると、霧馬山、豊昇龍といった正関脇よりもむしろ大栄翔と若元春の、番付上2人目の関脇のほうがいいように見える。本人は「自分は霧馬山関と違って、“確定の大関取り”じゃないので……」と、今のところそれほど大関の話題には乗ってこないが、「ただ、いい成績は残したいです」と、ここ数場所のチャンスを悔いなく戦いたいという気持ちは強い(見方を変えれば、霧馬山に注目が集まっている今場所は、必要以上にプレッシャーを感じずに挑めるチャンスという考え方もできるが)。
 
今場所後、と考えると、かなり優勝に近いぐらいの成績を残すことが要求されるので簡単な話ではないが、まだそれも可能性ゼロの話ではなく、さらに言えば、今場所もし霧馬山に先に昇進を決められた場合でも、ここ数場所でそれに続ける可能性は低くない感じになってきたといえるだろう。

「連敗が一番ダメなので。若い頃は連敗があったけど、相撲の面でも心の面でも成長できていると思います」。土俵上では闘志満々、気迫の突っ張りを見せるが、土俵を降りれば大学院卒で修士号を持つインテリ力士。取組後は、勝っても負けても冷静に、自分の言葉でその日の相撲を語ってくれ、取材陣にとっても非常にありがたい好漢だ。

「今場所、動きはホントにいいと思います。先場所は相撲内容は全体によかったと思いますが、最後は悔しさを味わったので、今場所は“先場所のリベンジ”という気持ちのほうが強い」と語る。優勝同点の結果を出しても、目指すはさらなる高み。その先には当然、大関の地位が待っている。

文=藤本泰祐

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