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2023-05-21

【相撲編集部が選ぶ夏場所中日の一番】朝乃山が北青鵬の作戦にハマり1敗。明生にも土がつき、全勝は照ノ富士一人に

朝乃山は立ち合いで上手を許したのが痛く、懐の深い北青鵬を攻めきれずに下手投げに敗れて土。勝ち越しは明日以降にお預けとなった

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北青鵬(下手投げ)朝乃山

2年ぶりの幕内の土俵に上がった今場所、中日8日目でのストレート給金を狙った朝乃山が、北青鵬の作戦にハマって、今場所初めての黒星を喫した。

立ち合い、204センチが跳んだ。北青鵬は思い切って左に跳ぶと、長い腕を伸ばして得意の左上手をつかんだ。朝乃山は右下手を取り、左もおっつけから上手。がっぷりに持ち込んで寄りを見せるが、相手に十分な上手を引かれていることもあり、その懐の深さに、なかなか前に力が伝わらない。そこで左上手から振って攻めるが、これを残した北青鵬が、逆に右下手から振るような投げを見せると、やや体が伸びる形になった朝乃山は赤房下に転がった。

「作戦は自分で考えた。土俵際、相手に左上手を取られたタイミングで右から掬っていく(取組では下手投げ)のはシミュレーション通り」と北青鵬はしてやったりの表情。何でも立ち合いの上手狙いは「きのう、剣翔関と取る前から朝乃山関戦のことを考えていた」というのだから、練りに練った作戦だった。

“廻しさえ取れれば、相手がだれでも勝てる”と自信を持つ北青鵬。それが、1月場所千秋楽、十両で顔が合ったとき、廻しをつかみながら朝乃山の上手投げに敗れたのが相当悔しかったとのことで、「リベンジしたかった。(対戦を)すごく楽しみにしていた」のだという。

一方、相手の作戦にハマった形の朝乃山は、「横にズレてくるのはちょっと予想していなかった。僕は思い切っていくだけだったが、その結果、横にズレて上手を取られた。対応できなかったのは自分の弱い部分です」と悔しそう。右四つ得意の朝乃山だが、常にまず右下手、その後に左上手、の順で狙っていくところをうまく突かれた形となった。今後、上位に上がっていくにしても、対戦が続くことが予想される相手でもあり、まあ相手も毎場所跳んではこないだろうが、対策を迫られることにはなりそうだ。

かくして朝乃山が1敗。この日はもう一人平幕で全勝だった明生も、見て突いていく作戦がハマらずに、平戸海に出られて寄り倒され土がつき、全勝は琴勝峰に何もさせず押し出した照ノ富士だけになった。関脇陣では、大栄翔が翠富士の突き落としに、若元春が錦木の掬い投げに敗れて2敗。この日で4人の関脇がすべて6勝2敗となった。
 
これで横綱照ノ富士が単独トップ。1敗の平幕2人、2敗の関脇4人は、まだ横綱との直接対決を残す(朝乃山が当たる場合はどこか割を崩すことになるが)ので、複数の力士が横綱に勝てれば、まだ混戦に持ち込める可能性はないわけではないが……。果たして、終わってみれば「やはり出てくれば横綱」ということになるのか。場所後半の土俵は、この7人の潰し合いが焦点になる。
 
またこの日、十両では関取2場所目の落合がストレートで勝ち越し。目標の十両2場所通過へ一歩前進した。今場所12勝以上挙げれば、来場所幕内の可能性が出てくると思われるが、今場所は十両上位に二ケタ勝利を狙える力士が何人もいるだけに、今後も星を伸ばし続けて、その相手との対戦を実現させ、直接倒せるかどうかがカギになりそうだ。

文=藤本泰祐

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