【相撲編集部が選ぶ名古屋場所６日目の一番】伯桜鵬が豪ノ山に初勝利し、全勝にストップ。髙安も敗れ、勝ちっ放しは錦木のみに

伯桜鵬（叩き込み）豪ノ山

伯桜鵬が、初日から白星を重ねていた同じく新入幕のライバル・豪ノ山にストップをかけた。
　
伯桜鵬にとって、豪ノ山は同じ新入幕として星２つ先を行かれている存在、というだけではなかった。新十両の場所に敗れ、そして先場所も11日目、十両優勝決定戦と敗れて３連敗。「この悔しさは忘れてはいけない」とリベンジを誓った相手で、入門後唯一と言っていい「壁」となっている力士だ。番付を上げていくためには、まずはここを越えていかなければならない。
　
この日の伯桜鵬は、前日まで貼られていた左肩のテーピングも外しての登場。状態がよくなったのか、それとも気合十分の証か（本人は「それはまったくない」と言っていたが）、いずれにしても伯桜鵬にとって悪いことではない。
　
立ち合いは頭で行った伯桜鵬が低さで当たり勝った。ここまで幕内でも当たり負けはほとんどなかった豪ノ山は、すぐに突いて逆襲に出る。突かれた伯桜鵬が頭を下げて出ようとするところで引き。しかし、これで相手を呼び込み、自分が土俵際に詰まることに。再び突き押しで出たが、流れはすでに止まっていて勢いはなく、伯桜鵬は右足を前、左足を引いた形でこれを受け止めると、逆にじりじりと圧力をかけて豪ノ山の上体を起こした。豪ノ山が押し返そうとするところ、余裕を持ちながら首の後ろに手を掛けてタイミングのいい引き、そのまま叩き落とした。

「きょうだけはチャレンジャーのつもりでいきました。廻しにこだわらず、立ち合いに当たって攻めたのがよかったと思う」と伯桜鵬。立ち合いの当たり勝ちから、前述の足の構えでしっかりと豪ノ山の圧力を受け切っての勝利は、一つ壁を越えたと言ってもいいだろう。ここまで４勝２敗は、星勘定では期待以上とは言えないかもしれないが、内容を見ると、相手の得意手を封じることを優先する考え方でなく、相手に得意手を出させても、自分の相撲を出してそれを上回っていこうとする、いわば「王道の戦い方」をしているようにも見える。宝富士のタイミングのよさとパワーに、竜電のうまさに黒星をつけられてはいるが、新入幕場所の歩みは順調と言っていいように思う。あすの遠藤との「デビューから３場所で入幕の怪物同士」の対決も楽しみだ。
　
一方の豪ノ山は、初黒星を喫しはしたが、前述のように幕内でもほとんど当たり負けせず、突き押しに徹する姿勢もいい。この日の黒星を変調のきっかけとすることなく、これまで同様の相撲を取っていけば、二ケタ勝利や三賞の可能性も十分あるだろう。これからも伯桜鵬とのライバルストーリーを紡いでいってもらいたいものだ。
　
この日、注目の３関脇の中では、大栄翔が琴ノ若を突き放し切れず、引き落とされて痛い２敗目。豊昇龍が苦手の翠富士を外掛けで退けて１敗を守り、大関取りレースでは先頭を走っていた大栄翔に並びかけてきた印象だ。
　
優勝争いのほうは、豪ノ山に続き、阿武咲に押し出された髙安にも土がついた。錦木は阿炎の揺さぶりをしのいで押し出し、ただ一人全勝をキープ。ついに単独トップに立った。先場所から続く連勝も14に。６日目を終え、全勝錦木、１敗に豊昇龍、髙安、玉鷲、北勝富士、豪ノ山、遠藤の６人という形に。きのうの時点ではまったく見えなかったが、地力と状況を考え合わせると、逃げる錦木を豊昇龍が追う、という優勝争いの形が、おぼろげながら見えてきたか。

文＝藤本泰祐