close

2023-09-18

【相撲編集部が選ぶ秋場所9日目の一番】熱海富士が幕内で初の勝ち越し。10日目に1敗同士で髙安と対決へ

金峰山を一方的に寄り切って1敗を守り、勝ち越しを決めた熱海富士。あす10日目は1敗同士で髙安と対決する

全ての画像を見る
熱海富士(寄り切り)金峰山

将来を嘱望される大型若手力士同士の一番も、結果は一方的だった。熱海富士が一気の寄りで金峰山に圧勝。今場所の幕内力士で勝ち越しに一番乗りし、同時に幕内では自身初の勝ち越しとなった。
 
この日の相手の金峰山とは初顔合わせ。185センチ、176キロの熱海富士に対し、金峰山は192センチ、181キロと体格もほぼ互角で、白星が先行する有望株同士、激しいぶつかり合いが期待された。
 
だが、勝負は立ち合いから一方的なものとなった。かねてから具合の悪かった首の痛みが、きのうあたりからまた出てきたという金峰山は、立ち合い、ガツンと当たるでもなく、突き放すでもなく、という立ち合い。このところ前傾姿勢で前へ前へと出ていく相撲が出せている熱海富士を止められるはずもなかった。いつものように低い姿勢で左の前ミツを狙った熱海富士は立った直後にこれをつかみ、そのまま引きつけ、右は相手の脇にあてがって一気に出ると、上手を切りにきて体の浮いた金峰山を東土俵に電車道で寄り切った。

「(給金相撲も)あまり意識せず、落ち着いていた。前に出られたのがよかった」と熱海富士。これで勝ち越しを決め、幕内トップの1敗もキープした。本人は「どこが成長したか分からないです」と言うが、今場所は、攻めるときに前傾姿勢がしっかり作れているのに加え、相手に攻められる展開になっても、豊富な稽古量がバックボーンにあるのだろう、簡単に体が伸びてしまわないので、逆転につなげられているケースも見られる。
 
その熱海富士の2番あと、もう一人の1敗の髙安も、琴恵光をモロ手突きから右四つにつかまえて手堅く寄り切り、並走状態をキープした。「慌てないで、引かないで。前向きな相撲を取ろうと思いました」と髙安。こちらも、万全の相撲で勝ち越しを決めた。
 
そしてあす10日目、いよいよこの2人の直接対決が組まれた。この日は後半戦で、三役でただ一人2敗だった若元春が大栄翔に押し出され、3敗に後退。トップと三役陣の間に星2つの差ができた。もちろん髙安と熱海富士も、11日目以降はどんどん上位陣と当てられることが予想され、星を崩す可能性はあるが、まずはあすの直接対決の勝者が、優勝争いの主役の権利を得ることになる。
 
今場所の2人の立ち合いから考えると、頭を下げて左前ミツを取りにくる熱海富士を、髙安が立ち合いに突き起こせるかどうか、というところが、まず焦点になりそうだ。髙安としては相手を起こしてやや自分のほうが低い体勢を作り、押し上げるなり、四つに組むなりしたいところ。熱海富士は胸を合わせた四つに組むか、あるいは激しい相撲、長い相撲に持ち込んで稽古量と若さのアドバンテージが生きる形に持ち込みたい。
 
熱海富士は、10日目の相手が髙安だと分かった瞬間「よっしゃ」と声を上げたという。後半戦へ向けても「もう考えることはないので(思い切りいける)」と言っており、若いだけに、まだ優勝など考えることはなく、無欲で臨めそうなところが強みだ。
 
髙安は、すでにベテランであり、これまで何度もあとわずかで優勝を逃してきたことは、ご存じの通り。「お客さんに喜んでもらえれば」と語っているように、もちろん優勝を意識しないように努めるだろうが、どういう精神状態で臨めるか。

「無欲の男」と「無欲になりたい男」の一番。まだ10日目だが、まずは優勝争い直接対決の第1ラウンド、果たしてどんな結末が待っているのか。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事