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2023-09-22

【相撲編集部が選ぶ秋場所13日目の一番】V争いは形勢逆転? 貴景勝が熱海富士を自力で引きずり降ろし3敗に並ぶ

今場所の大一番は、貴景勝が大関の力を見せつけて熱海富士を寄り切り。果たして優勝決定戦での再戦はあるか?

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貴景勝(寄り切り)熱海富士

やはり大関だ。貴景勝が星の差1つでトップを走っていた熱海富士を寄り切り、直接対決で3敗に引きずり降ろしてついにトップに並んだ。
 
大関のプライドと、同時に逆転優勝への大きな可能性がかかった一番。それでもいつものように目の前の相撲への集中力で、勢いに乗る若手をはね返した。
 
立ち合いは互角。貴景勝も低く当たったが、右肩からぶつかった熱海富士の当たりもよかった。そのあとはむしろ熱海富士が突いて出たが、貴景勝は左からイナシてこれをかわすと、右をハズに入れての押し。貴景勝はそのあと右を差す形になったが、これはもうある程度相手を起こせたという感触があってのことか。そのまま体を寄せて寄り切った。

「負けたっすね。悔しいな。やっぱ強いですね。大関だもんな。緊張なく行けたと思うけど、強いですね」と熱海富士は大関の強さに舌を巻いたが、立ち合いから押し負けなかったところには、十分に強さを見せた。3敗とはなったが、あす以降の相撲には十分な可能性を見出せる内容だったと言える。「チャンスがあった?」と問われて「カオじゃないっすよ」とも答えていたが、そう言わずに最後まで場所を盛り上げてもらいたいものだ。
 
これで貴景勝と熱海富士が3敗で並び、4敗でこの日敗れた髙安と、大栄翔、金峰山、北青鵬が続く形になった。
 
残り2日で、さてどうなるか。もちろん4敗力士にも可能性は出てきたが、とりあえずは貴景勝と熱海富士の比較だろう。
 
きのうも書いたように、星が並んだ時点で、2人の立場は逆転した気がする。この日の取組でも見えたように、まだ直接対決だと少し2人の間には力の差があると思われ、残り2日を2人が同じ星で行って優勝決定戦になったときには貴景勝に分がある。これはやはりアドバンテージになるだろう。熱海富士の優勝があるとすれば、残り2日を連勝し、貴景勝が星を落とす、という展開のほうが現実的な気もする。
 
貴景勝のこのあとの対戦相手は、あす14日目が豊昇龍(確定)、千秋楽は順当なら霧島が予想される(個人的には大栄翔戦のほうが見たい気がするが)。豊昇龍と霧島はともに今場所本調子とは言えないので、貴景勝が有利は有利だろうが、むしろそれだけに、怖い部分もある。特にまだ勝ち越しを決めていない豊昇龍は捨て身で白星を取りにくるかもしれず、貴景勝は立ち合いも思い切りぶつかるのでなく、相手を見ながら立つような形になる可能性が高い。あるいはその辺に落とし穴が待っている可能性も……。霧島も今場所は不調とはいえ実力的には東の大関。そう考えると2番とも「貴景勝やや有利」ぐらいの感じか。
 
熱海富士は明日が阿炎。今の熱海富士の調子なら突きだけで勝負をつけられることはないと思うので、阿炎が突いて出て、どこかで叩くという展開になるだろう。このとき熱海富士のアゴが上げられているか、あるいは前傾姿勢を保って引きについて行ける形になっているかがカギだ。これは五分に近い勝負か。
 
熱海富士の千秋楽は、北青鵬か、または若元春、琴ノ若の関脇陣の中の誰かか(貴景勝が大栄翔戦なら霧島の可能性もゼロではないが)。最も可能性の高い北青鵬は、おそらく今の熱海富士の調子ならいい形に組み勝てると思うが、慎重に攻め切らないと逆転技があるので怖い相手でもある。北青鵬なら熱海富士やや有利、三役相手の場合は、さすがにやや苦しい、というところか。
 
総合すると2人の優勝可能性は、(ひとまず4敗勢は考慮の外に置くが)、貴景勝65%、熱海富士35%ぐらいの感じだろうか。「大関の意地を見た」という場所になるのか、それともアッと驚く若武者の初優勝があるのか(ここから4敗勢が逆転したらそれもビックリだが)。いずれにしても最後までシビれる展開を期待したい。

文=藤本泰祐

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