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2023-10-20

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第13回「記念日」その3

平成27年名古屋場所千秋楽、白鵬は引退する旭天鵬に花束を贈ってねぎらった

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心に刻む、節目の日が記念日です。
力士たちもそれぞれが、実にさまざまな記念日を持っています。
奮起を促す記念日、過去を振り返り、自分に思いをきたす記念日、苦さを噛みしめた記念日など、など。そんな記念日にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

忘れられない日

力士にとって、忘れがたい日はいろいろあるが、中でも忘れることができないのは現役をあきらめ、引退を決断した日かもしれない。角界のレジェンド、と呼ばれた旭天鵬(現大島親方)にとっても、平成27(2015)年名古屋場所千秋楽は深く記憶に刻まれる日になった。この日の栃ノ心戦を最後に23年間にわたる現役生活にピリオドを打ったのだ。
 
引退を正式発表したのは翌日のことだったが、すでに十両では相撲を取らないことを公言していたこともあって、この日が現役最後の日であったことは周知の事実。結びの一番で鶴竜(現鶴竜親方)を降して35回目の優勝を飾った白鵬(現宮城野親方)も、支度部屋に凱旋してくると真っ先に旭天鵬と固く抱き合い、

「お疲れさんです」
 
と言って獲得したばかりの懸賞3本と、ひそかに用意していた花束を贈った。

「テンホー関(旭天鵬)は我々の故郷(のモンゴル)から初めて(大相撲界に)やって来た。そこで我慢して、耐えてやって来なければ、(あとに続く)我々の道はなかったワケですから、私自身もこみあげるものがあります。テンホー関はいろいろな存在でした。ときには、先輩であったり、先生だったり、お兄さんだったり、相談に乗ってもらう友人でもありました」
 
白鵬は、土俵に別れを告げる先輩に、こんな最大級の賛辞を贈り、優勝パレードの旗手にも指名した。なんとも憎い演出だ。オープンカーの上でも何度も旭天鵬の左手を握って上に掲げ、バンザイを叫んだ白鵬は、

「私の相撲人生の中でもこの名古屋場所は忘れられないものになりました」
 
とのちに述懐している。
 
その力士がどんな存在だったか。引退するときのまわりの反応を見ればよくわかる。旭天鵬にとっても、この日は自分の生き方が間違っていなかったことを確認する記念日になった。

月刊『相撲』令和2年4月号掲載

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