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2023-10-06

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第13回「記念日」その1

平成17年4月、入幕したばかりの日馬富士(当時は安馬)は、来日中の母・ミャグマルスレンさんに甘える

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心に刻む、節目の日が記念日です。
力士たちもそれぞれが、実にさまざまな記念日を持っています。
奮起を促す記念日、過去を振り返り、自分に思いをきたす記念日、苦さを噛みしめた記念日など、など。そんな記念日にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

母に感謝の誕生日

力士に限らず、多くの人にとって最も身近な記念日といえば、やはり誕生日だ。大相撲界ではこの誕生日をとても大事にする。番付がものを言う厳しい世界だが、この日だけは誰もが文句なしにヒーローになれる日だからだ。
 
平成27(2015)年4月14日は横綱日馬富士の31回目の誕生日だった。いつものように稽古でたっぷり汗をかいたあと、差し入れられたケーキをおいしそうに頬張った日馬富士は、

「もう30と1歳か。年ですよ。アスリートとしては、決して若くない。普通の人の55歳ぐらいかな。あちこちボロボロだから、これからは体にいっそう気をつけてがんばらないとね」
 
と力士ならではの年齢感覚を披露。続けて、

「忍び、耐え、努力すれば必ず道は開ける。31歳もまた、明るく、いい年にしていきたいな」
 
と口癖のフレーズを口にした。そして、部屋からの帰り際、春の花であふれた近くの花屋に寄って、ちょうどモンゴルから日本にやってきていた母のミャグマルスレンさんのために花を買い、照れながらこう言った。

「母がいなかったら、いまの自分はいないワケですから。産んでくれてありがとうの花です」
 
相撲っぷりは激しかったが、日馬富士は優しい心の持ち主だった。こんなふうに、誕生日はまた、まわりの人に感謝する記念日でもあります。忘れないようにしましょう。

月刊『相撲』令和2年4月号掲載

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