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2023-10-20

【陸上】鹿児島国体・鶴田玲美 3年越しの国体ストーリー「地元開催の国体で走ることができて楽しかった」

成年女子100mで2位に入った鶴田。大声援を力に地元で感謝の走りを見せた(写真/中野英聡)

2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響により3年延期となった鹿児島国体が13日から17日まで5日間、白波スタジアム(鴨池陸上競技場)で鹿児島特別国体として行われた。来年から「国民スポーツ大会」となる今大会。「国体」として最後の開催となった今年、中学生からシニアのトップ選手までの選手たちが、各種目で躍動した。

大会初日。スタンドから一際大きな声援を受けていたのが、成年女子100mに出場した地元・鹿児島出身の鶴田玲美(南九州ファミリーマート)だった。

「この国体が2020年に開催されていたら、決勝に残れるか分からなかった」

大東文化大4年だった19年の茨城国体は、成年女子100mで準決勝進出に留まった。当時の自己ベストは、11秒89(+1.4)。翌年、地元で開催予定だった鹿児島国体で「鹿児島チームに貢献したい」と、地元企業に所属して競技続行を決断。当時は「日本選手権の参加B標準(11秒85)を目指していた」。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、鹿児島国体が3年後に延期されることが決まった。

その当時、鶴田は「(3年後までに)力をつけて、応援してくださる方々に元気を与えられるような走りがしたい」と、2023年を見据えていた。

鶴田がトップアスリートとして世間に知られるようになったのが、翌年8月に行われたアスリートナイトゲームズイン福井だった。決勝で11秒48(+1.1)をマーク。11秒6台から一気に自己記録を伸ばした。

そして同年10月に行われた日本選手権は、初出場ながら100mで2位、200mは日本選手権覇者となった。

「去年(19年)は想像もしていなかった。日本選手権でここまで戦えるとは思っていませんでした」と、当時の鶴田は目を丸くしていた。

3年後。日本代表として東京五輪、ブダペスト世界選手権など国際舞台を経験し、鶴田は「成長してこの場に立つことができた」と、馴染み深い鴨池のスタートラインに立った。

3年越しに開催された鹿児島特別国体で、成年女子100mは11秒49(+1.8)で2位、成年少年女子共通4×100mRは決勝で4位に食い込んだ。

「結果もタイムも悔しさが残る」と、100m後は厳しい表情も見せていた鶴田だが、リレーを終えて、「地元開催の国体で走ることができて楽しかった。チーム鹿児島に支えられて幸せだった」と穏やかな笑顔を見せた。

今大会は、スタンドで地元の小・中学生、高校生が大勢観戦していた。鹿児島の選手が登場した時は、手持ちのスティックバルーンを叩く音と大歓声で、選手紹介のアナウンスが聞こえないほどだった。

「多くの子供たちに、陸上の楽しさが伝わっていたら嬉しい」
真っすぐに駆け抜ける鶴田の走りは、きっとスタンドにいた子供たちに元気を与えたことだろう。

文/新甫條利子 写真/中野英聡

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