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2023-11-25

【相撲編集部が選ぶ九州場所14日目の一番】2敗決戦は力の差を見せ霧島が勝利。大関昇進後初Vに王手

若き挑戦者の熱海富士に力の差を見せつけ、寄り切った霧島。これで大関昇進後初めての優勝に王手をかけた

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霧島(寄り切り)熱海富士

2場所連続で優勝に接近してきた若手に、力の差を見せつけた。
 
結びの2敗同士の直接対決。勝ったのはやはり大関霧島。しかも、熱海富士に攻める場面を与えず、危なげのない勝利だった。
 
きのう書いたとおり、この勝負のキーポイントは2人の上体の高さ。低く組みたい霧島に対して、同じ高さの組み手に持ち込めれば、熱海富士に勝機が生まれる。
 
立ち合い。熱海富士が一度つっかけ、2度目で立った。熱海富士はいつもと同様、右差し左上手狙い。どういくか注目された霧島は、低く、速く当たったのは予想どおりだったが、意外にも前に出した右手をすぐに差し、熱海富士得意の右四つを拒まずに組んだようにも見えた(霧島は左四つ)。
 
立ち合いの角度と勢いでは霧島が先手を取った。が、差し手は熱海富士の主張が通った形。熱海富士がすぐ土俵中央に戻し、ともに廻しには手がかからず組み合う形になった。
 
ここまでは互角。次の攻防としては、熱海富士は右から下手を取るか、あるいは相手を起こしたい。霧島としてはその前に低さを保ったまま、何らかの攻めを見せたいところだ。
 
先に動いたのは霧島。左から相手の差し手を強烈におっつけると、サッと巻き替えに成功した。巻き替えは下がりながらやると体が浮いてしまうが、それを攻めながら成功させたところに、霧島の強さがあった。霧島がモロ差しとなって中に入り、熱海富士の上体を浮かせて、自分のほうが一段低い体勢を作ることに成功。そのまま一気に出て寄り切った。

強烈な左おっつけで攻める霧島。攻めながらこのあとの巻き替えに成功したことで、勝利を引き寄せた
▲強烈な左おっつけで攻める霧島。攻めながらこのあとの巻き替えに成功したことで、勝利を引き寄せた


「(相手が)目を合わさなかったので、ちょっと緊張していると思って。そこで自分の相撲を取っていこうと思った」と霧島。仕切りから若い相手の緊張を見て取り、のんでかかっていた。

「何より勝つんじゃなくて勝負にいったので。勝ちにこだわったら体によくない」とも。ちょっと分かりづらいが、意訳すると「勝ちにこだわったら体が動かなくなる。勝ち負けを意識せず、どちらが強いか、力をぶつけていくことを考えた」というところだろうか。いずれにせよ、相手得意の四つにまず組み、そこから先に攻めて、相手にチャンスを全く与えなかった隙のない取り口は、この日確定させた年間最多勝力士にふさわしいものだった。
 
これで霧島と熱海富士の間には星1つの差がついた。まだ優勝は決まったわけではなく、あすの千秋楽次第では優勝決定戦になる可能性が残されているが、さてどうなるか。
 
千秋楽は霧島は大関同士で貴景勝、熱海富士は関脇琴ノ若との対戦が組まれた。熱海富士が勝って、霧島が敗れた場合のみ、優勝決定戦となるが、まず、熱海富士が琴ノ若に勝つのがそう簡単な話ではないだろう。琴ノ若も来場所の大関取りにつなげるためにはこの一番は必死に来るはず。ただ、場所終盤にきての相撲内容はあまりよくないので、熱海富士にもつけ入る隙はありそうだ。何とか立ち合い、右差しは死守しながら強く当たって、琴ノ若を受け太刀にさせたい。そうすればチャンスも出てくるだろう。そして霧島。こちらの相手の貴景勝は先輩大関の意地を懸けてくることになるが、このところの内容を見ると、日によって良かったり悪かったり、という感じでもあり、正直、霧島が負けるイメージはあまりわかない(優勝を目の前にして硬くなり、立ち合い負けするようなら話は別だが)。
 
総合して考えると、優勝決定戦になる可能性、あまり高くはなさそう、という感じではあるが……、まあ、どう転んでも残り一日。霧島が貴景勝にとって代わって、来場所の綱取りの権利を手にする可能性が高いとは思いつつも、熱海富士にもここから大逆転して初土俵から19場所でのVの記録を作る、というミラクルに、精いっぱい挑んでもらいたいとも思う。

文=藤本泰祐

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