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2024-01-23

【アイスホッケー】橋本 僚(レッドイーグルス北海道)ロングインタビュー(前編) 「今は、僕のパフォーマンスに矢印が向いている。自分のことに100パーセント集中できていると思います」

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橋本 僚(レッドイーグルス北海道)

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今シーズンのアジアリーグは上位2チームのみがプレーオフに進むことになっているが、リーグ序盤から快調に滑り出したのが、昨年2位のレッドイーグルス北海道だ。しかし11月下旬以降はリーグ戦で、そして全日本選手権でも、もうひとつリズムに乗れない日々が続いている。2021-2022、そして2022-2023シーズンにキャプテンを務めたDF橋本僚選手に、今のチームについて聞いてみた。前・後編に分けて紹介する。

土曜日に「いい流れ」をつかんだまま
日曜も続けることができないのが悩み

――まずは、最近のリーグ戦の戦いから振り返ってみましょう。1月13日、14日の栃木日光アイスバックス戦は、13日は先制点こそ失ったものの、チームはそこから8連続ゴールを決めて8-2で大勝しました。しかし、14日は0-3で完封負け。土曜日と日曜日は、結果だけを見たら対照的な内容となりました。

橋本 バックス戦に限ったことではないのですが、今シーズン、土曜日の試合は内容もいいものが多いんです。逆に、日曜のゲームは苦戦しているんですね。「気持ち」の部分もあるかもしれないんですが、土曜日のいい流れを日曜のゲームで続けることができない。昨年(度)は、そういうことはなかったと思うんですが、チームメートもみんな気にしているんです。こういうことが続いて、プレッシャーになっているのかなという感じですね。

――アイスホッケーの世界でよく言われるのが、今日の3ピリが、次の試合の1ピリにつながっているということです。13日の試合で、バックスの坂田駿選手が終了間際に1点を返しましたが、それが14日のバックスの連続得点につながっている、と。レッドイーグルスとしたら、土曜日は勝ったけれども、最後に失点して終わったのがよくなかったんじゃないかという受け止め方もできます。

橋本 バックス戦を含めて今季の日曜日のゲームで言うと、1ピリがもうひとつ、ピリっとしないなと感じる試合が多いような気がしますね。スタートの5分、後半の5分(1ピリの15分~20分)は、いい流れの時も多くて、でも、もっともっと自分たちのペースで行かないといけない。「波に乗れない」というのは感じています。

――橋本選手は去年まで2年間、チームのキャプテンを務めていました。Cマークが取れたことで自分の心境に変化はありましたか。

橋本 楽といえば、まあ、楽にはなりましたね。自分のことに100パーセント集中できるので。やっぱり、キャプテンは目に見えないところまで気を配る必要があるというか、スケートを履いて、がむしゃらにやっている姿を見せるのも大事なんですけど、「ここはうまくいってないな」と感じ取るのも、キャプテンの重要な仕事だと思っているんです。でも今は、僕のパフォーマンスに矢印(ベクトル)が向いている。自分のために時間を使っている気がするし、やっぱり自分自身はコントロールがしやすいですから。

――今ちょうどインターハイが行われているタイミングですが、橋本選手は北海高校でキャプテンでした。キャプテンといっても、トップリーグとは全然違うものというのは理解できますが、高校時代の経験も大きかったのではないかと思います。

橋本 僕自身、直近では北海高校の経験が最後でしたからね。高校3年間、ホッケーのことも、ホッケー以外のことも、畑山賢樹先生に教わったことは鮮明に覚えています。

――橋本選手が1年生のころは、キャプテンが春田啓和さん(元日本製紙クレインズ・FW)。この年(2008-2009シーズン)は、北海高校にとって最高記録の「インターハイ3位」になりました。

橋本 春田さんとは同じセットで1年間、やらせてもらいました。1年生は僕1人で、センターが牛来(拓都・レッドイーグルスFW)さん、ウイングが春田さん、上野(洸太・元アイスバックスFW)さんとメンバーが揃っていましたね。良い先輩に巡り合えたこともそうですが、「先輩がすごいから大変だ」ということも多くて(笑)。でも、春田さんは高校生ながらキャプテンシーは素晴らしいものがありましたし、春田さんに対する畑山先生の求めてくるレベルもすごかったと思います。

――高校2年の時は全道大会で清水と対戦して、エンプティを含めて2-0で破れて、インターハイには行けませんでした。清水も前年はインターハイ3位。全道大会の組み合わせが決まったときは、「清水-北海はどうなった」と全国的に話題になったのを覚えています。そして橋本選手がキャプテンの時は、北海は1年生が主力でしたね。3年生として苦労したと思います。

橋本 高校2年の時は、清水との試合の前に道南地区で全道大会のシード権をとれなかったのが痛かったんです。高校3年は、僕の弟(潤・元王子イーグルスDF)もそうですし、鈴木健斗(現アイスバックスFW)、上野(峻輔・元明治大学FW)、加藤(慎之助・元日本製紙クレインズDF)と1年生が多かった。1年生に仕事してもらいながら、でも僕は3年生として「やれることはやったかな」という感じでした。最後のインターハイは2回戦で駒澤(駒大苫小牧高校)とやったんですけど、僕は1回戦で足を痛めてしまって、出ることはできなかったんですけどね(結果は0-6)。

――北海高校OBでアジアリーグのキャプテンというと外崎潤さん(元日本製紙クレインズ・DF)、田中豪さん(元東北フリーブレイズ・FW)が知られています。イーグルスの先輩を含めて、トップリーグでお手本にしようというキャプテンはいましたか。

橋本 誰かのマネをするというのは、あまり考えなかったです。ただ、チームで話し合いをする時に「何気ない一言で引き締まるといいな」とは思っていました。大事なところで、みんなのスイッチを押せる選手。普段からガミガミ言うと効果が薄れると思っていたので、僕が何か言うときは、「しっかりやるぞ」っていう共通認識として、皆が持てることを大事にしたかった。要所、要所で、インパクトのある声を出す方がいいなと思っていました。

――それは2年間のキャプテン生活で「できた」と。

橋本 そうですね。2021-2022シーズンはジャパンカップで優勝して、2022-2023シーズンはプレーオフのファイナルでアニャンに負けましたけど、チームの仕上がり的には、みんなのコンディション、メンタル面を含め、自分のやるべきことはできていたんじゃないかと思います。



アニャンのリンクは「狭さ」が脅威に
簡単にパックを前でさばくことが大切

――2年間のキャプテン生活のクライマックスは、2023年3月、HLアニャンとのプレーオフ・ファイナルだったと思います。結果は2勝3敗、レッドイーグルスは優勝を逃しましたが、もし第5戦に勝っていたら、プレーオフの最優秀選手賞は文句なしで橋本選手に決まっていたでしょう。

橋本 勝ってないので、なんとも言えないですけどね(笑)。まあ、勝ちたかったですけど。

――あのときは、第1戦を前にGK成澤優太選手が欠場というピンチに追い込まれました(第3戦から戦列に復帰)。

橋本 やっぱり「第1戦」ってものすごく大事なんですよ。1つ勝つと、心の余裕も生まれるし、普段やっているプレーも安心してできてくるんです。逆に第1戦を落とすと、2戦目以降にプレッシャーを感じ始めて…。

――第1戦では1点目、2点目を橋本選手が押し込み、4-1で勝ちました。終了のブザーの瞬間、GKの小野田拓人選手に橋本選手が真っ先に駆け寄ったのを覚えています。第2戦、そして敵地に移っての第3戦は、アニャンの連勝。もう1敗もできなくなった第4戦は、開始2分にPPがあって、直後に橋本選手のゴールで先制しました。唯一の得点を残り57分間、チームは全員で守り切りました。

橋本 そうですね。最近になって思うのは、ゼロで抑える難しさもあるんですけど、「1点勝っている」というのは、心のどこかに余裕をもって戦うことができるんです。

――第5戦、レッドイーグルスはPPを得ながら、逆にPKのアニャンに先制点を奪われました。ところが2ピリ終了間際、橋本選手がシュートを左端に決め、1-1の同点に追いつきます。

橋本 チームのみんなには、いろいろな思いがあったと思うんです。第5戦、「勝って終わりたい」のは、もちろんあったんでしょうけど、「第5戦まで来たんだから、もう終わってもいい」という雰囲気も、多少はあったのかなと思います。第5戦、すなわち最後の試合が終われば、シーズンそのものが終わるわけじゃないですか。「だったらもう、思い切ってやろうよ」という意味です。持っている力をここで出し切ろうぜ、と。

――そのまま第3ピリオドも双方無得点、試合は1-1のまま延長に入りました。レギュラーリーグと違い、5人対5人で延長戦を戦って、どちらかが決勝点を挙げるまで戦わなくてはいけないわけですが、「第4ピリオド」20分も決着がつかず、勝負は「第5ピリオド」に持ち越しになりました。ただ、経過する時間が増えれば増えるほど、若さで優るアニャンのほうが優位なのは明らかだったように思います。レッドイーグルスとしたら、たとえ9割がたアニャンに押されていようとも「1点」入れてしまえばいいわけですが、でも、そのチャンスもあったと思います(結果はセカンドオーバータイム10分、2-1でアニャン勝利)。

橋本 早めに点を入れていれば、勝つチャンスは実際にあったと思いますね。ポストに当たったり、惜しい場面もありましたから。ただ、第4戦からウチはDFを5人で回していて、そういう意味での蓄積があったんです。みんなの体力ゲージを見ていても、本当にギリギリの部分ではありました。

――アニャンとの試合のときは、システムは2-3を用いている気もしたのですが。

橋本 場面、場面によってチェッキングが違いますが、体力マネジメントしたい時に1-1-3にしたことはありました。60分の中で「あえてがむしゃらにいかずに」戦う時間帯が必要な時もあるんですよ。2-1-2、あるいは2-3に見えたりもするんですけど、基本は1-2-2のアグレッシブです。

――なかでもF3、すなわちセンターの仕事は、アニャン戦は特に大変だと思います。

橋本 ですよね。やっぱり運動量がかなり必要なポジションでありますから。同時に、アニャンの場合はリンクが狭いんです。日本国内でやる時と、選手の距離間も変わってくるんですよ。いつもだったらプレッシャーがないような場面でも、アニャンのリンクは狭いから、相手の影が見えてくる。そこで判断を誤る選手も出てきます。そういう時は簡単に投げて、前に、前にというカタチでいいと思うんですが。

――「去年のプレーオフの段階で」という前置きになりますが、アニャンとの差がもしあったとしたら、どこだったと思いますか。

橋本 そうですね…やっぱり「偏り」がないんですよ、アニャンの選手は。1つ目、2つ目、3つ目、4つ目まで役目が与えられていて、パワープレー、キルプレーも、出ている選手が「60分」という試合時間を作り上げていく…そんな感じなんです。昨年(度)の話なんですけど、ウチはどうしても「個」に頼る部分がある。しかも第3戦以降は、4日間で3試合と連戦が続いていきます。そうなると、どうしたって疲れがたまってくるんですね。緊張感が続く局面で、それが「差」となって表れたんだと思います。(後編に続く)


1992年10月23日生まれ。北海道岩内町出身。泊ブルーマリーンシャークスから札幌フェニックス、北海高校を経て2011年、王子イーグルスに入団。チームがクラブチーム「レッドイーグルス北海道」となった2021年から2シーズン、キャプテンに就任、2021-2022年にジャパンカップの連覇を果たす。2022-2023シーズン、3年ぶりに行われたアジアリーグでは、2大会連続のベスト6(ジャパンカップと合わせると4年連続ベスト6)に輝くなど、DFとして堅守を見せる一方、前線への効果的なパス、時にはジャンプを見せるなどチームの攻撃力アップに貢献している。2023-2024シーズン、アジアリーグのアシストランキングで、1月22日現在、「28」で首位をキープ。現在は「岩内町観光大使」および「泊村スポーツ大使」を務める。178センチ・75キロ。背番号は北海高校時代から「34」。

山口真一

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