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2024-01-25

【相撲編集部が選ぶ初場所12日目の一番】照ノ富士が大の里を退け、1敗、2敗組揺るがず。さあ「V決定リーグ」だ

上手投げで大の里を投げ捨てる照ノ富士。徐々に調子を上げ、いよいよ「V決定リーグ」に臨む

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照ノ富士(上手投げ)大の里

番付上位4人はこの日も、揺るがなかった。
 
結び5番で土俵に上がった、きのうまで1敗の琴ノ若、2敗の照ノ富士、霧島、豊昇龍の横綱・大関陣は、きのうに続いて下位の力士の挑戦を退け、星を伸ばした。
 
まずは1敗の琴ノ若。立ち合い、阿武咲の当たりをガッチリ受け止め、はね返すと、阿武咲の足が滑ったところを叩き込み。労せず1敗を守った。
 
その2番後に登場した豊昇龍は、きのうとは立ち合いを変えてきた。この日は頭を下げずに右四つ狙い。押し相撲の隆の勝が根は右四つであることを利用した作戦だ。立ち合いちょっと受ける形になったが、サッと右の下手をつかむと、きのうの大の里と同様、右からの下手投げで仕留めた。決まり手は同じだが、そこに至るまでの過程の違いに工夫がうかがえた。
 
続いて霧島。右手を出して素早く踏み込み、玉鷲の右手を手繰って立ち合いからの勢いをかわすと、いったん突き起こしておいての叩き込み。攻め込んでの勝ちではなかったものの、余裕をもっての白星だった。
 
そして結びがこの日のメーンイベント。照ノ富士が大の里の挑戦を受けた。大の里の新入幕での横綱挑戦は、平成26(2013)年9月場所の逸ノ城以来、史上10人目。デビューから5場所目での挑戦もその逸ノ城と最速タイ、もし横綱に勝つようなことがあれば、それもまたそのときの逸ノ城以来で、史上4人目の快挙となる。
 
期待の一番の立ち合い。大の里はやはり、右差し狙いで胸から当たる立ち合いでぶつかった。初の横綱戦となる大の里だけに、まずは自分の力がどこまで通じるか、得意の立ち合いでぶつかっていくのは至極当然だった。
 
ただ結果的に、体格がほぼ同じで右の相四つの照ノ富士には、これは好都合だった。立ち合いすぐに左上手をつかむことができたからだ。大の里は左からおっつけて出ようとするが、照ノ富士は上手を引きつけて大の里の体を浮かせると、豪快に上手投げで投げ捨てた。

「立ち合いは当たったけど、びくともしなかった。(力は)伝わっていましたけど、さすが横綱と思いました。簡単に左を取らせた。何もさせてもらえなかった」と大の里。

対三役の3連戦では1勝もできなかったが、この日は“右胸から当たる立ち合いでは、体格が近くて相四つの相手には上手を与えることになりやすい”ということを学んだはず。また一つ、あすへの糧を得たと思えばいい。あす13日目からは平幕との対戦に戻るが、冷静に考えてみると、現状、勝ち星はまだ8勝なので、もしもこのあと、バタバタと連敗するようなら三賞も危うくなる。本人も「上位の人との対戦はいい経験になりました。あしたから3番に集中したい」と言っているとおり、もう一度、気持ちを入れ直して前半戦の勢いを取り戻してほしいところだ。
 
12日目を終わって、琴ノ若が1敗、照ノ富士、霧島、豊昇龍が2敗という状況は変わらず。さあ、いよいよあすからはこの4人による「V決定リーグ」が幕を開ける。現在の実力、今場所の調子、過去の成績などを総合して考えても、4人の力はまさに拮抗していると思われ、だれが勝ってもおかしくない。もしも3連勝する力士が現れれば、その力士がVへ手を掛ける権利を得るが、それはなかなか難しいことのようにも思える。
 
そうなると、優勝に一番近いのは、やはり琴ノ若か。星1つのリードを持って戦いに入れるのはかなり大きい。2勝1敗でいければ少なくとも優勝決定戦の権利が得られるし、もし3連勝する力士がほかにいなければ、1勝2敗でもまだ決定戦のチャンスが残るからだ。今場所の相撲内容が4人の中で一番いいのも心強い。もちろん過去の実績では一番下だが、勢いでそれを凌駕したい。
 
照ノ富士は、過去、この3人に本場所で一度も負けたことがないのが強みだ。3場所連続休場明けだけに、相手に動き回られる形には不安を残すが、調子は場所の後半になって上がってきた。横綱の威厳を示せるか。
 
霧島は現在持っている地力と体調からすれば一番手と言っていい存在。ただ、気持ちの上では「綱取りへはもう負けられない」という重圧があるはずなので、そこを乗り越えていけるか。
 
豊昇龍は、今場所は攻め勝った相撲が少なく、相撲内容としては推しづらいが、精神的には昇進がかかる力士と違って重圧要素がないのが強み。それによって持ち前の勝負強さが生かせれば面白い。
 
予想は難しいが、無理やり順番をつければ、琴ノ若、霧島、照ノ富士、豊昇龍という順になるか。あすはまず霧島と豊昇龍、照ノ富士と琴ノ若が激突。もし琴ノ若が横綱を倒すようなら、大関に大きく近づく1勝となるはずだ。

文=藤本泰祐

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