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2024-01-24

【相撲編集部が選ぶ初場所11日目の一番】豊昇龍は大の里を投げ飛ばす。番付上位の4力士が1敗、2敗をキープ

土俵際の下手投げで大の里の巨体を転がす豊昇龍。勢いのある若手の挑戦を退け、2敗をキープした

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豊昇龍(下手投げ)大の里

やはり上位陣は強かった。この日の結び4番、1敗あるいは2敗で優勝を争う上位4人は、うち2人は2敗同士の平幕の、1人は関脇の、1人は好調の若手の挑戦を受けたが、それぞれに持ち味を見せて敵を退け、場所終盤の直接対決へ一歩ずつ前進した。
 
まず土俵に上がったのは1敗で単独トップ、大関を狙う琴ノ若。埼玉栄高の後輩でもある王鵬との戦いだ。立ち合いでつかまえられず、押し合いになったが、一歩も引かずに最後は押し出し。この日も安定の内容で単独トップを守った。
 
続いては綱取りへ、ここで落とすわけにはいかない霧島。突き押しの大栄翔を相手に、一度イナシを挟んだが、腰を引かずに前に攻める相撲で押し出し。2敗を守って綱への望みもつないだ。
 
そして豊昇龍は立ち合いからどっと前に出てきた大の里を土俵際の下手投げで投げ飛ばして2敗をキープ。
 
結びは横綱照ノ富士。立ち合いで阿武咲の腕を手繰って横につき、上手投げを打ちながらの寄り切り。危なげなくトップと1差につけた。相撲内容もどんどんよくなってきており、虎視眈々の態勢だ。
 
4人の中でも、上位の意地をより感じさせたのが、大の里を投げ飛ばした豊昇龍だ。
 
もちろん、番付としては大関と新入幕なので、「そう簡単に負けるはずがない」という意識はあったはずだが、やはり体格的に自分より一回り大きい大の里は、勢いをまともに受けてしまうようなことがあると危険な相手だ。
 
おそらく、きのうの反省もあったのだろう、大の里はこの日は右胸から全身をぶつけてくる、自分本来の立ち合いできた。
 
対する豊昇龍。どうするかと見ていたら、今場所ここまでほぼ見せていなかった、低い立ち合いをついに繰り出してきた。頭を下げ、左は前ミツ狙い。相手をさばきにいくのではなく、攻めにいった立ち合いだ。
 
この立ち合いで、豊昇龍はサッと左上手。続いて右下手もつかむ。大の里は得意の右を差し、そちらから体を浴びせるような寄り。一気に土俵際まで持っていかれた豊昇龍だが、右の下手が命綱になった。相手に右の差し手を突きつけられているので、投げるならこちら側からしかない。持ち前の反応のよさで下手投げ。自らの体も飛んだが、それより早く、大の里の巨体を転がした。

「(大関は)強いなと思いました。簡単に廻しを取られてしまったんで。相手に勝機があったと思う」と大の里。これできのうの琴ノ若、この日の豊昇龍と、三役に連敗となったが、この経験は新入幕では得難いもの。おそらく、きのうはモロ手突きは上位に通用しづらいこと、きょうは右手一本の攻めでは上位では決めきれないことを学んだはずで、これらを糧にしていけば、どんどん成長していけるはずだ。
 
あす12日目は横綱照ノ富士に挑戦。「今の力を出し切りたい。胸を出してもらうつもりで、思い切り当たりたい」と大の里。右を差し込み、左も使って相手の体を浮かせることができるかがカギになるか。
 
優勝争いのほうは、この日を終えて1敗に関脇琴ノ若、そして2敗に横綱照ノ富士と、霧島、豊昇龍の大関陣となり、ほぼこの上位4人に絞られてきたと言っていいだろう。あすはまだそれぞれ下位力士との対戦があるが、すでに13日目以降、「出場している番付の上位4力士が全員優勝の可能性を持って、最後の“リーグ戦”で雌雄を決する」という状況になることは確定的。そうなれば、平成30(2018)年秋場所(12日目を終わって横綱白鵬全勝、横綱鶴竜と稀勢の里が2敗、大関豪栄道が3敗の状況から白鵬が全勝優勝)以来のことになる。今回はその時より星が詰まっているので、より手に汗握る戦いになるはずだ。
 
できればあすも4人の上位陣に勝ってもらってこの状況を迎えられれば盛り上がるが……。いや待てよ、大の里がもし横綱に勝ってもそれはそれで……。ええい、もうこうなったら、どう転んでも盛り上がりそう、ということでいいか!

文=藤本泰祐

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