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2024-01-22

【相撲編集部が選ぶ初場所9日目の一番】琴ノ若、大栄翔を寄り切り、初V&大関への第一関門を突破

琴ノ若は大栄翔を寄り切って1敗をキープ。初優勝と大関への第一関門を突破し、あすは大の里を迎え撃つ

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琴ノ若(寄り切り)大栄翔

きのうまでの4人の1敗勢の中で朝乃山が、やはりきのう痛めた右足首の状態が思わしくないようで、この日から休場、残念ながら優勝争いからは脱落することになった。この日は1敗同士の阿武咲との対戦が組まれていて、阿武咲は不戦勝で1敗をキープすることになり、残る2人の1敗力士、琴ノ若と大の里の取組が注目される9日目の土俵となった。
 
まず大の里は、明生と対戦。関脇経験者で、実績的にも、現在の力としても、ここまでの大の里の対戦相手では、もっとも格上と言っていい。
 
だが、この日も恐るべき新入幕の勢いは止まらなかった。立ち合いの相手の突きをしのぐと、ケンカ四つの相手に対してサッと右を差し勝ち、そのまま差し手を突き付けるように出て寄り切り。先に1敗を守った。
 
一方、琴ノ若はこの日は関脇同士、埼玉栄高の先輩で、次の大関を争うライバルでもある大栄翔との対戦を迎えた。
 
二人はこの一年の対戦成績も3勝3敗と五分だが、四つ相撲(琴ノ若)と突き押し相撲(大栄翔)の対戦だけに、勝敗のポイントはほぼ一点。大栄翔が琴ノ若の上体を起こせるかどうかだ。大栄翔は立ち合いの勢いを生かして相手と距離を取って突き起こし、そのまま押すか、または琴ノ若が押し返そうとしてきたところをイナして崩すなど技を掛けたい。逆に上体を起こされることなく、相手の突きをあてがうなどして距離を詰め、差すなり廻しをつかむなりができれば琴ノ若のものだ。
 
そしてこの日の取組も、ほぼそのように進んだ。立ち合いから突いて出て、先手を取ったのは大栄翔。少し上体を起こされた琴ノ若はいったん右に回って引きを見せたが、次の瞬間、両者の間にできた空間を利用してサッと掬うように右差し。こうなれば安心で、そこからは一気に白房下に寄り切った。

「ちょっと引きそうになる場面があったけど、すぐ考え直して我慢して攻めることに変えられた。簡単には差せないと思っていたんで、しっかり重さを伝えて自分の相撲を取り切ることだけを考えて、結果ああいう形になった」と琴ノ若。しっかりと踏み込み、立ち合いから攻められながらも、土俵際まで追い込まれなかったことが勝因と言えるだろう。今場所最初の関脇以上との対戦をモノにし、まずは初Vと大関への第一関門を突破した。
 
9日目を終え、1敗は琴ノ若、阿武咲、大の里の3人に。そして、横綱照ノ富士は快勝、さらに綱取り大関の霧島は正代の土俵際の小手投げできわどい勝負となったが、行司差し違えで星を拾うなど、2敗は4人(照ノ富士、霧島、豊昇龍、朝乃山)という情勢となった。
 
そしてあす10日目には、いよいよ琴ノ若と大の里の1敗同士の対戦が組まれた。
 
もちろん番付や実績では大関を狙う琴ノ若が上だが、ただ思い切りぶつかっていけばいい大の里に対して、受けて立つ立場となるだけに、精神的には琴ノ若のほうがやりづらい面があるはず。相手が平幕とはいえ、これも一つの大きな関門だろう。「やることは変わらない。相手どうこうじゃない。自分との勝負。強い気持ちでできることをやっていく」というコメントを聞くかぎりは、琴ノ若の気持ちに揺れはなさそうだが、さてどうなるか。
 
大型の若手同士の激突。もしかしたらこれからの角界を背負って立つことになるかもしれない二人の初めての対決だ。同じ二所ノ関一門とはいえ、力関係や動き、あるいは戦術については、互いに未知数の部分が多いはず。連日、兄弟弟子との「作戦会議」で策を練っているという大の里は、いつものように右差し狙いで当たっていくのか、それとも突きなど別の立ち合いを見せるのか、そして琴ノ若は、あくまでモロ差し狙いでいくのか、それともモロ差しにこだわらず、ある程度右四つでもOKというような立ち合いでいくのか。そのあたりも見ものだ。  

果たして結果は、「さすが琴ノ若!」となるか、「大の里すげー!」となるか。今からあしたが待ち遠しい。

文=藤本泰祐

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