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2024-01-23

【相撲編集部が選ぶ初場所10日目の一番】琴ノ若が1敗対決で大の里に圧勝。V争い単独トップに

注目の1敗対決は琴ノ若の完勝。快進撃を続けてきた大の里に、大関を狙う男の力とうまさを見せつけた

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琴ノ若(寄り切り)大の里

さすがは、大関に上がろうかという男だ。 快進撃の新入幕に、何もさせなかった。琴ノ若が大の里との注目の1敗対決に圧勝。優勝争いの単独トップに立った。
 
注目された立ち合い。琴ノ若はやはりモロ差し狙い、大の里は組みにいかずに突き放しを狙った。
 
そしてこの立ち合いは琴ノ若の完勝に終わった。もしかしたら結果からそう見えるだけ、かもしれないが、琴ノ若がうまかったのは、左はより固めて、右は掬うように立ったところだ。この日は突きにきた大の里だが、もともとは右四つ。そのためか掬うようにいった右は造作なく入った。そして左はいったん相手の突きをはね返す形になったあとで差し勝った。これでモロ差し。かつ、突き放しが不発に終わった大の里は上体が少し立ってしまったので、位置はほぼ土俵中央だったが、琴ノ若は大の里より一段腰の下りた四つ身に組むことに成功した。大の里は左から絞ろうとするが、琴ノ若は体を寄せて相手を浮かせることで力を出させず、そのまま、振りほどこうともがく相手を白房下に寄り切った。

「落ち着いていけた。受け身にならないように、あとは流れの中で自分の相撲が取れればと。いつもどおり自分の相撲を取ろうと思った」と琴ノ若。その言葉どおり、最初から最後まで、自分の流れで取り切った。

まさに番付の違い、相撲の厳しさとうまさの違いを見せつける1勝。大の里との対戦については「土俵に上がったら、(相手が)マゲだろうがザンバラだろうが、そこに立っていれば、誰が相手でも、どの一番だろうと負けられないのは一緒。強い気持ちで思い切りいくだけ」と語っており、その割り切りのよさ、気持ちの強さで勝ちを持ってきたことがうかがえる。注目の新鋭を完全にはね返したこの内容は、大関を狙う上での印象点でもいいものを残したはずだ。
 
敗れた大の里のほうは、初めての三役戦で、番付の違いを見せつけられる形となったが、これも勉強。さらにあすには大関戦(対豊昇龍)が組まれているので、この日の反省を生かし、また思い切って力をぶつけてほしいものだ。
 
この日は、もう1人1敗で並んでいた阿武咲が霧島に敗れて2敗目。10日目を終わって、1敗はただ1人となり、琴ノ若は今場所初めて、優勝争いの単独トップに立つことになった。2敗は、この日金峰山を一蹴した照ノ富士、阿武咲にかなり動かれながらもなんとかしのいだ霧島、大栄翔を退けた豊昇龍と、阿武咲、大の里の5人となった。
 
ここまでは琴ノ若と平幕勢が引っ張ってきた優勝争いだが、力のある横綱・大関陣に追いつかれたことで、平幕勢はあすの対上位戦で波乱を起こさない限り苦しい立場に。あす波乱がなかった場合は、もしそうなればかなり久しぶりのことになるが、今場所は番付の上位4人による最後の直接対決で優勝が決まる展開が濃厚となる。
 
優勝争いをリードする形になった琴ノ若は、この後、あすは王鵬との対戦が決定。横綱・大関戦が3番残っているので、あと一番が平幕との対戦になる。平幕との対戦は翔猿、玉鷲、阿武咲の中から誰か、という感じになると思うが、この中では過去の幕内対戦成績6勝6敗(この一年も3勝3敗)の翔猿が一番嫌な相手か。とはいえ、大関昇進のためにも初優勝のためにも、何としても1敗のまま横綱・大関との対戦を迎える形を作りたいところだ。

優勝争いの単独トップについては「あとからついてくるもの。勝っていけばそういうふうになる」。9勝1敗の成績についても「必死に取っている結果。今は星数を気にしても仕方がない」と琴ノ若。この日の相撲を見る限り、気持ちの上でもいい状態が保てているよう。

「しっかりその日の一番に集中してやっていく」。一歩、また一歩。大関への歩みはいまのところ順調だ。

文=藤本泰祐

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