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2024-01-26

【相撲編集部が選ぶ初場所13日目の一番】照ノ富士、大関狙う琴ノ若に何もさせず完勝。3人が2敗に並ぶ

強い、うまい攻めを見せ、大関を狙う琴ノ若を一蹴した照ノ富士。場所の前半の状況からは予想しづらかった賜盃に一気に近づいてきた

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照ノ富士(寄り切り)琴ノ若

横綱は、強かった。そして、うまかった。
 
大関を狙おうかという男に何もさせずに圧勝だ。照ノ富士が琴ノ若を寄り切り、2敗に引きずり降ろして自らも並んだ。
 
この日から、出場している力士の中で番付上位の4人(1敗が関脇琴ノ若、2敗が横綱照ノ富士と霧島、豊昇龍の両大関)による「V決定リーグ戦」がスタートした。
 
まず、大関同士の対決は、立ち合いサッと右上手をつかんだ豊昇龍が作戦勝ちしたかと思われたが、攻防の中で、痛めていた右ヒザが入ったようになる場面があり、その機をとらえた霧島が豊昇龍を転がした。決まり手は珍しい「二枚蹴り」だ(幕内では平成26年1月場所9日目、時天空が翔天狼に決めて以来10年ぶり)。豊昇龍は3敗になった上に、右ヒザを再度痛めたようで心配。優勝争いからは大きく後退した。
 
そして結び。1敗の琴ノ若が、横綱照ノ富士に挑戦。勢いに乗る若武者と、今場所不安な内容ながら何とか星を重ねてきた横綱の対戦だけに、もう少し激戦になるかと思っていたが、目立ったのは横綱のうまさと強さばかりだった。
 
立ち合い、琴ノ若はいつものようにモロ差し狙い。照ノ富士がどういくか注目されたが、右を固め、ガツッと踏み込んで、左はむしろ差させて抱え込みにいった。“相手のモロ差しは絶対阻止。右は差させるがガッチリ固めて動きを止める”という作戦だ。そしてすぐに左に回って、腕を極めるようにしながら、やや強引に小手投げを打つ。この投げで右側に空間を作ると、ここで右差し狙い。少し寄られたが、最初に踏み込んでいるので俵までは余裕がある。土俵際に行く前に右差しに成功すると、すぐに差し手を返し、相手の左をバンザイさせて逆襲に転じた。相手の上体を立たせたところで左上手を取り、苦しくなった琴ノ若が左を巻き替えようとするところを一気に出て寄り切った。
 
その手順はまさに流れるよう。おそらく、作戦どおりの展開だったであろう。過去、照ノ富士が琴ノ若に一度も負けていないのには、やはりそれだけの理由があったのだと思わせる一番だった。
 
これで2敗に照ノ富士、霧島、琴ノ若が並び、3敗が豊昇龍という形になった。豊昇龍がケガでこのあと戦力が低下する可能性があると考えると、組み合わせとしては、3人の中で霧島だけが、このあと現在の2敗勢との直接対決に連勝が求められることになり、一番大変だが、まあここまでくれば集中力の勝負だろう。いずれにせよ照ノ富士の逆転Vの目が大きく膨らんできたということは間違いない。

敗れた琴ノ若は「(立ち合いの)狙いとかはない。まあ切り替えます。切り替えるしかないと思います。あした、集中してしっかりやります。(残り2日で大事なことは)変わらないです」と、さすがに言葉少な。優勝争いに関しては、まだ並びという状況だが、この日、内容的に完敗だったというところが、大関取りのほうの印象点にどう響いてくるか。豊昇龍が手負いとなったことで、千秋楽にもう1勝重ねられる可能性は高まったが、逆にその一番は印象点の上ではさほど残らない可能性も。横綱戦の完敗分を印象点で取り返すには、やはりあす、綱取り大関の霧島を倒すしかないだろう。
 
そして優勝争いの面でも、もしあす敗れてしまえば、豊昇龍がそのあと照ノ富士を食ってくれない限り、千秋楽結びの勝者に優勝を持っていかれることが決まってしまう。大関と、そして初優勝へ向け、あすは琴ノ若にとってすべてをかける一番になる。

文=藤本泰祐

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