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2024-03-15

【相撲編集部が選ぶ春場所6日目の一番】琴ノ若に敗れ、阿炎に土。新入幕尊富士と入幕2場所目の大の里がトップ並走に

琴ノ若が全勝の阿炎にストップを掛け、まずは大関の力を見せたが、依然トップとは2差。この一番をきっかけに調子を上げて優勝争いに参入していけるか

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琴ノ若(突き落とし)阿炎

5日目まで3人いた幕内の全勝力士のうち、最初に土がついたのは、3人の中で最も番付が上の小結阿炎だった。
 
この日は新大関の琴ノ若との対戦。ただ、最近の対戦成績を見ると、この琴ノ若は阿炎にとっては最大の難敵と言ってもいい存在だった。令和5年の1月場所に突き出しで勝ったのを最後に、翌場所から6場所連続で負けている相手だったからだ。
 
相撲内容を見ると、立ち合い阿炎がモロ手から突っ張って、琴ノ若が下からあてがい、さてどうなるか、というのがお決まりのパターン。たまに途中でどちらかのイナシから変化のある決着になることもあるが、概ねは結局阿炎が突き切れず、引いたところに琴ノ若がつけ込むか、あるいはじわじわ出て逆襲して勝つ、という内容がほとんどだ。
 
果たして阿炎絶好調の今回はどうなるか。今場所ここまでは安易な引き技をできるだけ封印することで好成績を残している阿炎は、この日も引きを見せずに徹底的に突いていった。
 
しかし、やはり突きだけで攻め切ることはできなかった。先手は阿炎が取ったが、琴ノ若は左からイナしてかわすと、あてがって押し返す。なおも阿炎が突いて出ようとするところ、左から突くようにイナして阿炎に横を向かせ、土俵の外に出した。

「思い切り出て行って、最後に(突き落としを)食ってしまったけど、内容的にはよかったと思う。相手は大関ですから、しょうがないですよ。集中して一日一番というのはできたと思います」と阿炎。初黒星を喫し、あすも大関豊昇龍と難敵が続くが、徹底的に突く姿勢と集中力は継続しているので、まだまだ暴れる可能性はあるだろう。
 
一方、大関の力を見せて阿炎に土をつけた形の琴ノ若。きのう5日目まではちょっと腰を引いて相手をさばこうとしているようにも見える相撲が続いていたが、この日は好調阿炎が相手ということもあったのだろう、しっかりと腰を入れ、前に圧力を掛けて戦えていた。阿炎が引きをできるだけ封印したという面もあるかもしれないが、逆に琴ノ若がしっかり腰を入れていたため、阿炎に「ここで引けば決まる」という感触を与えなかったという見方もできるだろう。もしかしたらこの一番が、今後、琴ノ若が本来の相撲を取り戻していくきっかけになるかもしれない。
 
この日、阿炎以外の全勝力士は、尊富士が美ノ海を問題にせず寄り切り(この日も理想的な当たりの角度とおっつけだった)、大の里はケンカ四つの明生と差し手争いをしながらも、前に出る圧力で勝って押し出しと、ともにいい内容で星を伸ばした。
 
これでなんと、入幕2場所目の大の里と新入幕の尊富士の2人が並走して優勝争いのトップを走るという展開に。大の里は、あすは先場所、下から攻められて敗れた阿武咲との対戦。どんな対策を練ってくるか楽しみだ。
 
一方、この日の横綱・大関陣は、照ノ富士が隆の勝に敗れて3日連続の金星配給となる4敗目、大関では豊昇龍が苦手の翔猿に敗れて2敗目を喫した。
 
6日目を終わり、大の里、尊富士のフレッシュな2人が全勝で先頭、1敗で阿炎、湘南乃海が続き、大関陣と先頭走者には星2つ以上の差がつく形となった。
 
先場所はこれに似た展開から、後半に入って上位陣が3日連続で大の里に黒星をつけ、ストップを掛けたが、今場所の横綱・大関陣の調子を見ていると、同じように行く保証はないのでは、という気もする(霧島と琴ノ若の状態がちょっと上向いてきたのが頼りか……)。そうなれば、あるいはザンバラ髪力士の幕内優勝も!? 最近は、折り返しの8日目あたりまでは番付どおりに対戦を組む、という方針になっていると聞くが、あまり悠長に構えていると、気づいた時には新顔2人が上位陣から手の届かないところまで行ってしまっている……という可能性も、今場所ははらんでいるように思う。

文=藤本泰祐

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