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2024-03-17

【相撲編集部が選ぶ春場所8日目の一番】新入幕尊富士、ストレート勝ち越しで単独トップを守り、いよいよ三役戦へ

竜電を押し出して8連勝のストレート勝ち越しを決めた尊富士。どこまで連勝を伸ばしていけるか

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尊富士(押し出し)竜電

ちょんまげ力士の快進撃は、まさにノンストップだ。
 
この日も立ち合いから一歩も下がることなく攻め切った。新入幕の尊富士が竜電を押し出し、ストレートで勝ち越しを決める8連勝を遂げた。
 
いつものようにやや右足を引いた仕切りから、頭と手で当たっていった。すでに自分にとって理想的な角度を会得しているようで、この日も鋭い立ち合いだ。ただ、そのあと手がどう動くかは日々一定ではなく、相手によって使い分けているのがまたニクいところだ。この日は、右は下からおっつけ、左はハズに入れて押していった。このハズ押しで適度な距離を取り、前さばきのうまい竜電に差すことを許さない。竜電はそれでも回り込みながら左を差してきたが、その前のおっつけが効いていて相手の腰が近いのでそこでサッと右上手に手がかかるいい流れだ。左の差し手も返しながら寄り詰めると、土俵際は廻しを離して押して出る、心憎い勝負のつけ方を見せた。
 
初土俵から所要9場所という年6場所制以降最速タイというスピード出世記録で新入幕を果たした尊富士だが、入幕後もその記録男ぶりは続いている。この日決めた中日まで8連勝のストレート勝ち越しは、新入幕力士では平成23(2011)年技量審査場所の魁聖(現友綱親方)以来、15日制定着後6人目のもの。その時点で幕内の優勝争いの単独トップに立つという状況になったのはなんと初めてだ。
 
この日は給金相撲だったので、並の力士なら硬くなりそうなものだが「特に何もないですね。自分の相撲が取れました」と、淡々としているところが頼もしい。さすがに、まさか中日で勝ち越せるとは、本人も場所前は全く想像しておらず「どこまで幕内でできるか不安だった」と話すが、堂々の勝ちっぷり。連勝にも「初日から気持ちは変わっていません。勝ち負けでなく、しっかり15日間土俵に上がり続けることが大事」と、全体を俯瞰しながら戦えているのがうかがえるところにも、今後への期待が膨らむ。
 
あす9日目は小結阿炎との対戦が組まれた。いよいよここからは上位戦がスタート。勝ち抜いていく限り、三役あるいは優勝を争う相手との直接対決が続いていくことになる。
 
あすの相手となる阿炎は、立ち合いはモロ手突きがベースだが、張ったり、カチ上げたりというケースもあるし、何より変化してくる可能性もある。そこに、「(どうしてそんないい立ち合いができているかは)僕もよく分からないんですよ」というその立ち合いを、迷いなくぶつけていくことができるか。そして逆に、阿炎がどういう手を使ってくるか、止めて起こしにいくのか、かわしにいくのかも興味深い。
 
この日、玉鷲を押し出して1敗をキープした大の里も9日目には若元春戦が組まれ、対上位戦がスタート。ここからしばらくは、底知れぬ可能性を見せる大の里と尊富士が、どこまで上位との対戦を勝ち抜いていけるか、予想のつかないワクワクを楽しめる日々が続きそうだ。

文=藤本泰祐

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