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2024-04-13

【アイスホッケー】プレーオフ総括インタビュー・中島彰吾(レッドイーグルス北海道)

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3月はレギュラーリーグ、プレーオフとアニャンには4連敗。「地元のファンに悔しい思いをさせてしまった」と中島はいう(写真提供・レッドイーグルス北海道)

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HLアニャンの連覇で幕を閉じた、今季のアジアリーグ。レギュラーリーグ2位のレッドイーグルス北海道は、プレーオフでも1勝3敗と悔しいままシーズンを終えた。今季、チームのキャプテンを務めた中島彰吾選手(FW)に、日本代表の召集直前に話を聞いた。

2連敗で始まった、今年のプレーオフ。
「ファンのために」勝ちたいと思った。

――7カ月に及ぶアジアリーグの戦いが幕を閉じました。レギュラーリーグが終わって、いよいよプレーオフが始まるというさなか、キャプテンとしてどういう話をしたのでしょうか。

中島 ウチのチームは、必要以上に気持ちを見せるよりも、ユーモアのある感じの方が強さを発揮できるのかなと感じていたんです。これまで全日本選手権の前には「気持ちを入れてやろうぜ」と言っていたんですが、プレーオフはそれほど特別な気持ちにならなくてもいいのかな、と。みんなには「いつも通りにやろう」ということを伝えました。


――3月30日の第1戦は、3-3のまま第3オーバータイムまで突入して、アニャンが103分に決勝ゴールを入れて勝ちました。初戦でいきなり、2試合分戦ったことになりました。

中島 僕がクレインズにいたころ、デミョンを相手にプレーオフでこの日と同じ「6ピリ」まで行ったことがあるんです(2019年2月23日、プレーオフセミファイナル・クレインズ‐デミョン第1戦・釧路)。その時はクレインズが113分、2-1で勝ったんですよ。もちろん疲れはあったんですけど、気持ちの面ですごく楽だったのを覚えているんです。今年のアニャンとの第1戦は、あれだけ長い間、戦ったのに何もついてこなかった。1勝がついてくるのと、何もついてこない差というのは、すごく感じました。もちろん勝負ごとですからやってみないとわからないんですが、もし、1戦目に先勝していたらどうだっただろう…というのはありますね。

――アニャンとの第1戦は3ピリの59分15秒、エントリーした中島選手がゴール左でディレイして、パックをつないだDF橋本僚選手がシュート、トリプルスクリーンに入っていたFW中屋敷侑史選手のディフレクションで3-3に追い付きました。終了45秒前に追いつかれたアニャンと、追いついたレッドイーグルス。しかし、休憩をはさんでの「4ピリ」では、アニャンが序盤にPPを得て試合が進んでいきました。

中島 でも、負ける気はしませんでしたよ。4ピリのPKで、僕がノーマークで外したシーンがあったんですけど…。

――4ピリの64分、アニャンの2人を置き去りにしてGKと1対1になったシーンですね。

中島 まあ「たられば」になっちゃうんですが、あれを決めていればウチの勝ちだったんですよね。オーバータイムも「どこまでいこうがやってやる」というつもりでいました。どこまで延長になろうが「最後はウチが決めてやる」と。

――中島選手の滞氷時間は、チームのスケーターの中でも1、2位だと思います。しかもアニャン戦、ポジション的にはセンター。6ピリを戦ってみて、やはり疲労が残ったのではないでしょうか。

中島 いや、皆さんが想像していたよりも、そこまで疲れはたまっていなかったと思います。それよりも、先ほども言ったように「勝てなかった」気持ちの切り替え。それが、できなかったわけではないですけど、「難しいな」と思いました。

――3月31日の第2戦も落として、第3戦からは「敵地で3試合、3連勝」するしかなくなりました。

中島 ホームで2連敗したら、苫小牧の試合ではアニャンに4連敗(3月23、24日に続いて)で終わってしまうんです。「ワシスタントのためにも、ここで負けるわけにいかない」。そういう覚悟を持って臨んだんですが…。

――1ピリにFW髙木健太選手のゴールで先制しましたが、2ピリに同点。レッドイーグルスはPPで前がかりになっていて、アニャンにパスカットされてフリーで決められました。3ピリは、立ち上がり3分で2失点。アニャンはやっぱり「ミッション」を確実にやり遂げるチームだと思いました。

中島 レギュラーリーグの最後の2連戦(アニャン戦)、そしてプレーオフを通じて、3ピリの戦い方が自分たちのほうが下手だったと思います。それは「ここぞ」という場面での決定力であったり、「勝つ集団」としての経験が不足しているんだと思います。

――2連敗スタートとなった、今回のプレーオフ。キャプテンとして、周りの選手には何を言ったのでしょう。

中島 1人1人、落ち込んではいたでしょうけど、切り替えなきゃいけない。「とにかく1日でも、1秒でも長く、このチームでホッケーをやっていこう」と言いました。木曜日(第3戦・4月4日)で終わっちゃったら、金曜日の全体練習だってできない。「金曜日にみんなで練習をしよう。だから木曜日は、絶対に勝とう」と。こうなったら、もう開き直ってやるしかありませんから。

――そして、何といってもワシスタントの応援です。去年は春分の日が「安養への見送りの日」だったんですが、今年は4月2日の火曜日。スタッフによれば、平日にもかかわらず約100人がnepiaアイスアリーナに集まったそうです。

中島 応援してくれているというのを、あらためて感じさせてもらいました。「この人たちのためにも、必ず勝って終わろう」と。去年のプレーオフが終わって、ワシスタントの方が苫小牧まで出迎えてくれたんですが、「負けてしまってすみませんでした」としか出てこなかったんです。その記憶を4月2日に思い出した。「今年こそファンの方と喜びを分かち合おう」。そう決意して韓国に向かったんです。

今回のプレーオフは、4試合で無得点。「特に第1戦、第2戦は後悔が残る」と中島
今回のプレーオフは、4試合で無得点。「特に第1戦、第2戦は後悔が残る」と中島(写真提供・レッドイーグルス北海道)


安養のリンクで見た、現実の姿。
あの光景を来季、必ず苫小牧で。

――安養に場所を移し、4月4日の第3戦は5-0と完勝しました。第1戦、第2戦とも脳しんとうで欠場したFW相木隼斗選手が、この日は31分に先制点。その1分後に、DF今勇輔選手が2点目を挙げました。今選手は1年前の第3戦でギブアウェーをしてしまったんですが、1年後に借りを返しましたね。若手2人がチームを勢いに乗せた印象です。

中島 相木、今の2人からは「自分たちはもう若手じゃないですから」と言われてしまうんですが、本当に頼もしかったですし、ナリさん(成澤優太・GK)が無失点で抑えてくれた。攻守にかみ合って、完ぺきに近い形で勝てました。特に相木は、普段から彼の存在って大きいんですよ。第1戦、第2戦と彼がいなかったので、「痛いよなあ」と思っていたんですが、すごく大きなものを与えてくれたと思います。

――そして、最低限の目標だった翌5日の練習を迎えました。集合して写真も撮って、雰囲気の良さが伝わってきました。

中島 木曜日の遅くに試合が終わったのですが、この日は朝早く練習が始まったんです。疲れを残さないということをスタッフが考えてくれて、練習は20~30分にまとめてくれた。雰囲気としてはめっちゃ「いい練習」ができたと思います。

――4月6日の第4戦、この日は序盤からアニャンが「決めに来てる」感じがしました。1ピリはシュート数が20本(レッドイーグルスは7本)。立ち上がりから勝負をかける様子がうかがえたと思います。

中島 「今日、決めてやる」という気持ちが、アニャンの選手から出ていましたね。2ピリの後半に柴田(嗣斗・FW)が決めて、1-2の1点差になった。「次の1点が、この試合を決める」と思っていたんです。それなのに3ピリの前半、アニャンのPPで、DFにフリーで入れられた。この日、アニャンはPPで2点入っていて、ウチはPPの得点はゼロ。プレーオフ全体を通してみると、ウチは3ピリの失点も多かったんです(4試合で10失点)。その部分の差を感じました。

――試合終盤にエンプティが重なり、結局1-5でアニャンが勝ちました。優勝を逃してキャプテンとして何を思ったのでしょう。

中島 1年前と同じ安養のリンクで、昨シーズンとほぼ同じ光景でした。場内からカウントダウンが始まって、正直、見たくはないんですけど、でも、目に焼きつけようと思って見ていたんです。本当は目を背けたい。だけど、この瞬間は自分にとっては見ないといけないんだって…。優勝の瞬間、見ないふりをしている自分が、現実から逃げているみたいで嫌だったんです。悔しさも、屈辱感も、浴びれるだけ浴びようと思いました。

――安養のスタンドには、全国のファンが駆けつけていました。そして苫小牧では、パブリックビューイングで応援してくれる人もいましたね。

中島 去年と同じ思いをさせてしまって、本当に申し訳ないと思いました。選手だけじゃなくて、応援してくれている人たちも同じように悔しがっているんだろうなって思ったんです。「すいません」「ごめんなさい」。その言葉しか浮かんでこなかったです。

――個人的には、プレーオフは4試合で計5アシスト、得点はゼロでした。

中島 決めたかったですよ、やっぱり。一番チャンスだったのは、僕としては第2戦だったんです。得意なはずの体勢からシュートを外したのが何本かあったんですよ。そして、第1戦の4ピリの1対1。自分が決められなかった悔しさ、自分自身への情けなさを感じながら今回のプレーオフは戦っていました。

――技術的に「これはアニャンのほうが上だったな」と思ったところは、どんなことでしょうか。

中島 アタッキングゾーンでの1人ひとりのキープ力、体の強さ、そして守りから攻撃につなげるFWの「45度」のプレーです。僕らがダンプして、アニャンのDFが取ったとする。それからFWにつなげるじゃないですか。そのFWのさばきが、アニャンはめちゃくちゃうまいんです。つなげるところと、つなげないところの「分け方」も上手ですし、味方につなげてラッシュをかける精度は、ちょっとびっくりするぐらい高かった。それは、今シーズン序盤のアニャンには感じなかった部分です。FWの「45度」のつなぎがうまいと、僕ら対戦チームとしても、詰めるに詰めれないんですよ。つないでくると思ったら数的不利の場面をつくられてしまうから、積極的に守れないんです。

――最後にキャプテンとして、1年間応援してくれたファンの方に何か伝えたい言葉はありますか。

中島 これまで以上にファンの方には足を運んでいただいて、すごく「応援されている」ことを実感したシーズンでした。もちろんそれはパートナーの企業の皆さんも同様で、ファンの皆さん、パートナー企業の皆さんの両方がいて、初めて僕たちが戦えると思っています。力強い声援を送ってくださったにもかかわらず負けてしまったのは、僕たちの力不足であり、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。nepiaアイスアリーナで声援を送ってくれることは、僕らにとってかけがえのないもの。ファンの皆さん、支えてくださるパートナーの皆さんのためにも、来季は結果を出さないといけない。そう思っています。

このインタビューの翌日、日本代表の合宿に合流した。「氷上の櫻井翔」に美容室に行く時間はあるのか、心配だ
このインタビューの翌日、日本代表の合宿に合流した。「氷上の櫻井翔」に美容室に行く時間はあるのか、心配だ(写真提供・レッドイーグルス北海道)

なかじま・しょうご
1993年10月26日生まれ。北海道釧路市出身。センターフォワード。鳥取西小学校、釧路北中学校、武修館高校を経て、中央大に進学。キャプテンだった大学4年のシーズンには、関東大学選手権、関東大学リーグ戦、インカレのいわゆる「3冠」を達成する。卒業後は日本製紙クレインズに入団。2019-2020シーズンから王子イーグルス(現レッドイーグルス北海道)に移籍する。アジアリーグでは2019-2020シーズンはポイント王、2022-2023シーズンはアシスト王とポイント王。2020-2021のジャパンカップではゴール、アシスト、ポイントの3賞を独占する。今季からチームのキャプテンに。4月は北海道も暖かくなり、花粉症に頭を悩ませている。


山口真一

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