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2024-07-03

変形性ひざ関節症教室 第36回 Q&A 治療編

 中高年になると増えてくる変形性ひざ関節症。これまで変形性ひざ関節症について、ひざの構造・機能から、診察・診断、予防・治療などについて紹介してきました。前回に引き続き、ひざ痛の患者さんからの質問に、ひざの名医・田代俊之ドクターにお答えいただきます。


Q サポーターはしたほうがいいでしょうか?
A サポーターではなく筋肉を鍛えて筋力をつけましょう

 市販のサポーターにはひざを安定化させる効果はありません。サポーターは主に患部を温めることを目的に使われています。サポーターを装着すことでひざがしっかりしているという精神的な安心感が得られるという効果があることも否定できませんが、サポーターではなく、あくまでひざを支える筋肉を鍛えてひざの安定感を得たほうがよいと考えます。
 ひざを動かせば炎症が治まってきます。固まっていたひざ周辺の筋肉がほぐれて動かしやすくなります。動かして筋肉がつけばひざの安定感が高まります。日ごろから運動療法に取り組みましょう。

Q 薬はずっと飲み続けてもいいのでしょうか?
A 薬は対症療法です。副作用もあります

 薬は症状を緩和する対症療法です。薬には多かれ少なかれ副作用があります。特に痛み止めには胃を悪くしたり、腎機能を悪化させたりする副作用があります。
 ひどく痛むときに時々飲むのは問題ありませんが、長期間に及んで飲み続ける場合は、副作用に気をつける必要があります。
 変形性ひざ関節症の薬には、消炎鎮痛剤、オピオイド(鎮痛薬)、湿布・塗り薬、座薬など、いろいろな種類があります。ひざ痛の治療にもいろいろな方法がありますから、安易に長く使わず、主治医に相談しましょう。

Q 温めるのと冷やすのではどちらがよいですか?
A 変形性ひざ関節症で痛いときは温めましょう

 痛いときに冷やすか温めるか。これを間違えると痛みが強くなり、症状が悪化してしまうことにもなりかねません。
 ぶつけたり捻ったりといったケガをしたときは冷やします。患部を冷やすことによって、毛細血管を収縮させて出血を少なくし、腫れを抑えることが目的です。
 しかし漫然と冷やすのは逆効果です。3日くらいして内出血が止まったら、今度は温めます。温めて血流をよくして、新陳代謝を促したほうが、治りが早くなるからです。
 一方、腰痛・肩こりなど、筋肉や関節の慢性の疾患では、温めたほうが症状は緩和します。血流を促すことによって、発痛物質などを除去しやすくするなどの機序が働くためと考えられます。
 腰痛・肩こりと同様に、変形性ひざ関節症も、お風呂に入ったりして温めることは、症状緩和に有効です。あまり熱くないお湯に長めにつかりましょう。


プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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