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2025-01-24

【相撲編集部が選ぶ初場所13日目の一番】しぶとさ復活の霧島、土俵際の逆転。3敗以内の5人がすべて勝って残り2日へ

霧島は、土俵際危なかったが、髙安を突き落として10連勝。3日目まで3連敗から巻き返しての優勝という快挙はなるか⁉

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霧島(突き落とし)髙安

誰一人として、譲るものはいなかった。
 
やはり優勝争いをしている力士は集中力が一段違うのか。5人いた3敗以内の力士が全員そろって白星を並べた。
 
5人のうち、まず最初に登場したのは王鵬。対戦成績1勝6敗と嫌な相手の宇良をよく見て攻めて叩き込み。まずは先頭を切って白星。この日は、弟の夢道鵬が幕下優勝を決めるという、気持ちの上で追い風となる出来事も。あすは隆の勝戦、そして千秋楽はおそらく金峰山戦が待つ。初優勝のためにも、そして、若隆景、隆の勝、霧島の追い込みでなかなか当確ランプがつかない新三役のためにも、残り2日は連勝が必須だ。
 
この日、一番ヒヤリとさせたのは、2人目の霧島だ。髙安の突きをしのいで左四つに持ち込んだが、右に回って突き落としを見せたところを一気に出られた。一瞬、土俵の外に先に飛ばされたようにも見えたが、軍配は霧島。スローで見直すと髙安の右足が先に土俵の外へ出ており、ここは式守勘太夫がよく見ていたようだ。物言いがついたが軍配どおり。霧島も3敗を守った。

「相撲はあまり覚えてないけど、しっかりあきらめずに力を出した」と霧島。
 
この日はちょっと危なかったが、このしぶとさも霧島の持ち味。こういう相撲が出るのも、復活の証、と言っていいだろう。
 
今場所の霧島は、相手と突き合い、押し合いになった時の、横へちょっとイナして崩すなどの動きがさえている。先場所は相手への圧がかからないままにこの動きを繰り出し、相手を呼び込んでしまう形になっていたが、今場所は押し合い、突き合いの中で相手に圧がかかっているので、その分イナシも呼び込まずに相手を動かす、効果的なものになっているようだ。この日のように土俵際で突き落としが決まるのも、四つになった時に低い体勢が作れている分、相手に持っていかれるまでに幾分時間の余裕が作れているからであろう。きっと、先場所との違いもほんのちょっとしたことなのだろうが、そこで大きく結果が変わってくるのが相撲。今まで初日から3連敗して幕内優勝した力士はいないそうだが、初の快挙に挑む。あすはいよいよ勝利が必須の金峰山戦、千秋楽は尊富士戦が予想され、対戦相手は厳しいが、勝ち抜いていく実力はある。
 
3人目の尊富士は、阿炎の蹴手繰りの奇襲を受けながらも一気に出て押し出し。土俵際、ヒザから落ちて物言いがついたが軍配どおりで白星。あすは豊昇龍、千秋楽は霧島が予想され、残りの対戦相手は5人の中で一番厳しいが、攻めの気持ちで突破したい。
 
3敗組の4人目は、大の里との大関同士の一番に臨んだ豊昇龍。立ち合い突き起こしたあと、ちょっと中に入られかけたが、とっさの反応で、相手が腰を寄せてくる前に首投げで投げ飛ばした。「しっかり見ながら相撲を取ろうと思った。(首投げの場面は)慌てなかった」と豊昇龍。この日、5人が挙げたのは同じ1勝ではあるが、それによる前進度合いは、おそらく豊昇龍が一番だ。難敵を突破したことで、一気に3敗勢の中では最有力に躍り出たと言えるだろう。逆転優勝して綱取りへの議論を呼び起こすことができるか。
 
結びで登場した金峰山は、この日は“強い金峰山”だった。琴櫻を一方的に突き出し。琴櫻はこれで負け越し、来場所は大関カド番に追い込まれることになった。「切り替えて自分の相撲を取ろうと思いました」と金峰山。あすは霧島、千秋楽は王鵬との対戦が予想されるが、このところ隔日での出現になっている“強い金峰山”を、プレッシャーの中でも出し続けられるか。
 
5人が白星を挙げたことにより、状況は一見、前日と変わりがないように見えるが、実は残りの日数が減った分、逆転の可能性は小さくなるので、金峰山は少し優勝へ前進したと言える。何より、あす対戦する霧島、千秋楽に予想される王鵬を“自分に勝たなければ終わり”に追い込んだことは大きいと言えるだろう。
 
あす14日目もそうだし、千秋楽もおそらく、5人の直接対決が2番組まれることになる。この戦いは、金峰山には星1つの余裕があるが、3敗力士は負けたところでほぼサドンデスともいえる状況で、ある意味ではトーナメント戦のようなもの、ともいえるだろう。
 
果たして誰が勝ち抜いていくのか。さあ、面白くなってきた。

文=藤本泰祐

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