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2025-03-13

【相撲編集部が選ぶ春場所5日目の一番】千代翔馬が初金星! 新横綱豊昇龍、5日目で早くも2敗

千代翔馬の注文相撲にハマり、2敗目を喫した豊昇龍。「相手の変化が頭になかった」というのは、にわかには信じがたいが……

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千代翔馬(寄り切り)豊昇龍

曲者の注文相撲が、ものの見事にハマった。
 
千代翔馬が思い切って右に飛ぶ立ち合いの変化から、上手投げで振って豊昇龍を寄り切り初金星。新横綱豊昇龍は5日目で早くも2敗目となった。

「普通にやったらやっぱり自分より強いんで。これしかないと思っていました。いつも変化すると思われてるかもしれないけど、それでも勝ちたい気持ちだった」と、作戦が決まった千代翔馬はしてやったりだ。
 
豊昇龍の立ち合いは、右で張っての張り差しだったが、「先場所、立ち合いに張られて、上手を取られたので。張り手にくるんじゃないかと思って」と考えていた千代翔馬にとっては、読み通りだった。立ち合いの変化を決めたのは、朝稽古のときだったという。
 
千代翔馬は幕内上位からは長く遠ざかっていたが、腰の手術を4度も重ねて椎間板ヘルニアから復活、動きのよさがよみがえったことで、持ち前の反応の速さや思い切った動きが白星につながるようになってきた。先場所は終盤当てられた上位には歯が立たなかったが、総当たりの番付に入ってくれば、あれこれ考えさせられる上位陣にとっては嫌な存在になるはずだ。
 
2敗目を喫した豊昇龍は取組直後、「いやあ、まさか変化で来るとは。頭になかった」と語ったという。曲者・千代翔馬を相手にするのに変化が頭になかったということはにわかには信じ難く、本音かどうか、という気もするが、もし立ち合いの瞬間にそれが飛んでしまっていたのだとしたら、横綱はその時、平常心を欠いていたということになる。
 
そういえば、この一番では、仕切りのとき、少し両者がにらみ合うような場面があった。もしもそれが横綱が平常心を欠く要因になったのなら、思い出すのは3日目の若元春戦だ。この時も仕切りではにらみ合いがあり、気負い込んで立った豊昇龍は、若元春に食いつかれた。結果的にはとっさの空気投げのような感じで、最後はお尻で相手を押し倒すような形で勝ったが、内容的には負けていても不思議のない一番だった。

これらの例からすると、挑戦者にとっては、“仕切りの段で平常心を失わせればチャンスあり”という作戦が成立することになる。
 
千代翔馬によると「土俵下に座ったらにらんできた」とのこと。だとすれば、新横綱は気負いのあまり、自ら危うい状況にハマりに行っていることになってしまうのだが……。
 
2敗目を喫したことで、再び大の里を後ろから追うことになった豊昇龍。ただ幸いなことに、この日、平幕で土つかずだった遠藤、阿武剋が敗れて幕内の全勝がいなくなり、トップが1敗となって自力優勝の権利は残された。
 
先場所は9日目までに3敗を喫し、一時は「絶望」と言われながら大逆転優勝で綱取りを成就させた豊昇龍。果たしてこの後、横綱という地位を背負いながら、先場所後半同様の集中力を見せて逆転につなげることができるか。
 
この後は、弱点として浮上してきたメンタルコントロールの力が問われる土俵になってきそうだ。

文=藤本泰祐

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