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2025-03-17

【相撲編集部が選ぶ春場所9日目の一番】一山本が横綱初挑戦で金星ゲット! 豊昇龍を相手に堂々攻め倒す

一山本は堂々と豊昇龍を攻め切り、最後は掬い投げで初の結びの一番、初の横綱挑戦で金星。豊昇龍は9日目で早くも4敗となった

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一山本(掬い投げ)豊昇龍

初めての横綱挑戦、初めての結びで、一山本がやった。豊昇龍を堂々と倒して、いきなり初金星だ。
 
一山本は今場所の西前頭4枚目が自己最高位、横綱・大関総当たりの地位には初挑戦なので、豊昇龍とは幕内ではもちろん初顔合わせだ。過去には、幕下時代に2回顔が合っているが(ちなみに2番とも引き落としで一山本が勝利)、さすがにそれは6年も前のことなので、さほど参考にはなるまい。
 
ただ、初の横綱戦、初の結びと言っても、一山本は社会人経験まである31歳。「特に緊張はなく、いつもどおりでした」と冷静だった。この日の相撲を見れば、事前の研究も怠りなくされていたことが分かる。
 
立ち合いは、「(横綱が)張り差しで来ると思ったので、モロ手で」と、いつもの立ち合い。実際は豊昇龍は横から一山本の腕を払いに来るような、ちょっと狙いの分かりづらい立ち合いだったが、まず一山本はしっかり当たることに成功した。
 
横綱は続いて右の上手をガバッと取りに来たが、ここで一山本の左が深く入って下手廻し。「左が入ったので、もう走るしかないと思いました」。豊昇龍はいつものように右に回って投げようとするが、これはもう先刻お見通し。「あとは投げだけに気をつけて」差し手を突きつけるようにして、すくい投げで倒した。

「金星はすごいうれしいです」と笑顔の一山本。ふだんから勝っても負けても明るく話をしてくれる力士だが、この日はいつもにもまして笑顔がはじけた。
 
今場所、上位で活躍できている理由を「しっかり当たって、前に出ているからだと思います」と自己分析。確かに、以前は“突っ張っておいて、叩きで勝負をつける”というイメージの取り口だったので、相手に叩くのを待たれている感じもあったが、この日もそうだったように、“前に出て勝負をつける”という意識が増してきたことで、体の大きさや長いリーチがより生かせるようになってきた感は強い。31歳とはいえ、今も発展途上。ここからさらに続く上位戦でどこまで暴れてくれるかが、さらに楽しみだ。
 
一方、新横綱の豊昇龍は3つ目の金星配給で、4敗目となった。「立ち合いは(待ったで)もう一回あると思った。立ち合い失敗したしな。勉強だな」と語っており、後に尾を引くような負けではない感じはするが、待ったかと思ったということがあったにしても、立ち合いに迷いがあったことと、先手が取れなければ右に回って投げにくる、というのが相手に読まれているというあたりは気になるところ。
 
以前から「横綱のプレッシャーを体で感じる場所にする」「絶対に休まない」と話しているので、そう簡単に弱気になることはないだろうし、ここから巻き返してくれるとは思うが、それこそ横綱のプレッシャーをはね返しての踏ん張りが必要な状況であることは確かだ。
 
この日、優勝争いのほうは、1敗だった3人のうち、美ノ海が時疾風に敗れて後退する一方で、髙安が大関琴櫻を下手出し投げで倒し、大の里は3連敗中だった阿炎をしっかり寄り切った。あすはいよいよ1敗同士で大の里と髙安が対決。もちろん後の展開はどうなるか分からないが、10日目のこの一番が今場所のクライマックスになる可能性もある。

文=藤本泰祐

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