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2025-03-16

【相撲編集部が選ぶ春場所8日目の一番】髙安が豊昇龍倒す金星! 1敗を守って大の里らとトップ並走

豊昇龍を力強く押し倒し、髙安は2年半ぶりの金星。豊昇龍は3敗となり、優勝争いからは大きく後退した

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髙安(押し倒し)豊昇龍

相手の地位が横綱に変わっていても、何も関係なかった。
 
髙安が、これまで本場所の土俵では1度しか負けたことがなかった(8勝1敗。ほかに互いに不戦勝が1度ずつ)豊昇龍を今場所も撃破。令和4年9月場所9日目に照ノ富士に勝って以来、2年半ぶりの金星を挙げるとともに、1敗を守って大の里らとの優勝争いトップ並走を維持した。
 
先述のように、過去はどちらが横綱だか分からないような対戦成績になっているこの顔合わせ。過去の対戦を見ると、突き合い、押し合いになっても、そして四つになっても、力比べのような展開になると、髙安のパワーが生きることになり、この結果を生んでいるように思える。豊昇龍としては、まだ確たる髙安攻略法がつかめていないような感があり、考えられるとすれば、まずは先手で攻めて、食い下がるような形を作り“スピードを生かして崩して勝負”というイメージかと思われた。
 
この日の立ち合いは、豊昇龍にとってはある程度イメージ通りだったであろう。髙安のカチ上げに、頭から素早く当たって当たり勝ち、まず攻め込んだ。しかし、髙安の上体を起こしてしまうには至らず。すぐ左四つ。髙安だけが左下手に手を掛け寄り返した。
 
豊昇龍にとっては胸が合う嫌な形。豊昇龍はいつも、嫌な形になった時には即座に右に回って投げで勝負をかけるが、「左が深く入っていたので、相手の動きを止められた」と髙安が振り返るとおり、その技は使えず。
 
豊昇龍はやむなく左へ回って何とか振りほどいたが、そこからは突っ張ってイナシ、そして押しと「流れがよくなりました。メリハリのある攻めができた」という髙安の流れ。最後は「土俵際強いんで、冷静に」押し倒した。
 
髙安はこれで、大の里、美ノ海とともに、1敗のトップ並走で中日を折り返すことになった。状況的には優勝争い本命は1敗組で最も番付が上の大の里だが、横綱豊昇龍はこれで大の里と2差になり自力優勝が消滅、この一番は、大の里の対抗馬の位置に置かれる力士が、豊昇龍から髙安に入れ替わる一番ともなった。
 
ただ、今場所東前頭4枚目の髙安の場合、三役陣との対戦はまだこれが2番目。大きな関門を一つ突破したことは確かだが、ここから対三役の取組が連続してくるので、それをどれぐらいの勝敗で乗り切れるか、そして大の里との対決を、どういう星の差で迎えることができるかが、まずは大きなカギになってくるといえよう。
 
これまで、何度も何度も、あと一歩まで行きながら賜盃を逃しており、ファンの間では、「一度は優勝してもらいたい力士」の最右翼である髙安。このところは腰などの故障にも泣かされてきたが、今場所は「痛いところもない」と体の上では不安はなさそう。
 
体に不安がなければ、実力は元大関で、いまだ横綱に圧勝できていることでも明らか。あとは精神面次第ということになるが……。
 
取組後のNHKのインタビューでは「今が一番楽しい。やりがいもある」と頼もしい言葉。さらに、その後の記者団の囲み取材では、35歳にして第一線で戦える秘訣を問われ、「やり残したことがいっぱいあるので、それだけです。突き動かされます」との言葉も。
 
あすも大関琴櫻との対戦と上位戦が続く。ここからも気持ちをうまくコントロールし、目の前の一番一番を勝ち抜いていければ、一番大きな「やり残したこと」の実現に、近づくことができる。

文=藤本泰祐

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