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2025-03-22

【相撲編集部が選ぶ春場所14日目の一番】「髙安、美ノ海に敗れV決定ならず。4敗勢含め5人が可能性残し千秋楽へ

展開次第ではこの日に優勝決定の可能性もあった髙安だが、美ノ海に思うように取られて3敗目。悲願の初優勝は、千秋楽の結果次第となった

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美ノ海(寄り切り)髙安

いざ、優勝が目の前に来ると、こうなってしまうのが髙安なのか……。
 
14日目、自らが勝って、大の里が敗れれば悲願の初優勝決定という状況にあった髙安が、美ノ海に敗れ、優勝決定を千秋楽に持ち越したばかりか、また大の里に並ばれることになった。
 
きのうも書いたとおり、髙安とすれば、この日の美ノ海戦には、徹底的に突き切る、まず突いて起こしてがっぷりに組み止める、最初からしっかりつかまえる、の3パターンの作戦が考えられたが、結果的には、突き切ることも、つかまえることもできなかった。
 
立ち合い、髙安はまずカチ上げではじき、突いていく作戦を選択した。立ち合いの相手の左上手も防ぎ、これはある程度までは計算どおりに進んだ。だが、あくまで前傾姿勢を崩さないという美ノ海の執念はすごかった。髙安は美ノ海の低い体勢を突きで起こし切ることができず、ついに引き。そこからは頭を下げた美ノ海が、相手に廻しを与えず下から攻める、中間距離での攻防に持ち込んだ。髙安にとっては、突っ張ることもつかまえることもできない最悪の展開だ。
 
髙安のパワーを発揮させない距離を作った美ノ海は、頭をいい位置につけながら、右をあてがって差しにいったり押しにいったり、はたまた突きか出し投げかという動きを交えたり、左も廻しを探ったりおっつけたりと、さまざまに揺さぶりながら髙安を起こし、最後は寄り切った。

「(体の動きは)きょうはよくなかった。よくないから勝てなかったんでしょうね」とは髙安本人のセリフだが、この日は素人目にも動きのよくない相撲ではあった。やはり、初優勝へ最後のひと山を越えるのというのは、髙安にとってなかなかの難事業のようだ。「しっかり反省して切り替えて、またあした、一生懸命やりたいですね」。千秋楽こそ、最後の山を乗り越えていきたい。
 
一方、大の里はしっかり前に出る相撲で大栄翔を圧倒し、3敗を守った。大の里は「(トップに並んだことについては)全く考えてないです。(優勝は)ないものと思ってたんで、しっかり来場所に向けて頑張ります」と、すでに自分が髙安に負け、何度も先行を許していることもあってか、もはや“優勝はできなくてもともと”という感じのコメントではあったが、さて……。

これで、とりあえず状況としては、大の里、髙安が3敗で並んでの千秋楽へ。この日勝ち残った4敗勢の美ノ海、安青錦、時疾風にも、わずかながら逆転Vの可能性が残された(千秋楽に自分が勝ち、髙安と大の里が両方負けて決定戦になり、そこで勝つことが条件なので、かなり厳しいことは厳しいが)。
 
千秋楽は、優勝を争う5人が、結び5番で順々に登場することになった。まず髙安が最初に登場して阿炎戦、そのあと時疾風が霧島、安青錦が王鵬、美ノ海が大栄翔と、4敗の3人が番付順に小結・関脇と対戦、結びで大の里が大関同士の琴櫻戦を迎える。
 
このため、最初の髙安の勝敗いかんで、4敗力士は優勝の可能性を持って土俵に上がるかそうでないかがあらかじめ決まる、ということになった。髙安としては、なんとか白星を手にして、4敗勢の可能性を消し、大の里にプレッシャーをかけたいところ。優勝決定戦になった場合を考えれば、割合終わりのほうに取組が組まれ、あまり緊張する時間がないのは髙安にとっては幸いかもしれない。
 
大の里は結びなので、自分が土俵に上がるまでに、目の前で「自分が勝てばこう、負ければこう」という状況が決まっていくことになるが、この辺が自らの取組への集中力にどう影響するか。
 
果たして本割の結果で優勝が決まるのか、大の里と髙安による決定戦になるのか、あるいは11勝4敗で多人数での優勝決定戦となるのか。もしも4敗勢が逆転優勝し、「美ノ海、沖縄出身初の優勝」とか、「安青錦、2年連続の新入幕V」とか、「時疾風、幕内初勝ち越しでいきなりV」とかになったら、それはそれで大ニュースだが……。

文=藤本泰祐

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