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2025-03-18

【相撲編集部が選ぶ春場所10日目の一番】髙安が1敗対決で大の里を倒し、1横綱2大関総ナメ。V争いも単独トップに

1敗対決で大の里を撃破し、髙安はいよいよ優勝争いの単独トップに。今度こそ悲願を達成することができるか

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髙安(寄り切り)大の里

この日から横綱豊昇龍が休場。場所前には「絶対休まない」とコメントしていたので、それを信じてきのうのこのコラムを書いた身としては「あらっ?!」とズッコケてしまうが、まあ、状況は日々変わっていくので、意気込みとして言ったコメントと現実が合わなくなることはあるということか。目玉が一つ消えてしまい、終盤戦へ向けて、今場所は何か一本歯が欠けたような感じの場所になることになった。
 
そんな中で、まあ順番どおりと言えば順番どおりなのだが、できれば終盤まで取っておいたほうがいいような、10日目ではもったいない顔合わせが、この日あった。きのうまで1敗で優勝争いのトップに並ぶ、大の里と髙安の激突だ。
 
過去の対戦は去年の夏場所の一度だけ(大の里が初優勝したこの場所に、押し出して髙安が勝っている)だが、髙安は大の里の師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)の兄弟弟子なので、いうなればこの二人は叔父さんと甥っ子のような間柄。「入門したときから知っているんで。こういう場で戦えるのが光栄ですし、思い出に残る一番になりました」と髙安も言うとおり、大の里にとって髙安が入門当初から最も多く胸を出してもらった関取の一人であることは間違いがなく、互いに「どういう形のときはどう反応してくる」ということはかなり分かったうえでの顔合わせということができる。
 
髙安のほうから見ると、体の大きい大の里は数少ない「パワー勝負でいくべきではない相手」なので、戦略としては、自分のほうが体勢が低いということを生かして相手を起こしつつ、去年の夏場所に勝ったときと同様、先手先手で動いていく、ということになるだろう。そしてこの日の髙安は、まさにそのとおりの相撲を取った。
 
立ち合い、まず左を固めて当たり、右を差しにくる大の里のヒジを下からはね上げた。さらに右でも左手をはね上げ、相手の上体を起こす。差し手争いの中、掬うように下から左を入れて深く差す。大の里はリーチを生かして右上手に手をかけ、上手投げにくるが、ここを勝負と見た髙安は「しっかり耐えて、スキを見て前に出ました」と一気に前進。結果的に大の里の投げは髙安を呼び込む形になり、髙安が体を預けながら寄り切った。

「立ち合いは悪くなかったが、そのあと勝ち急いだ。焦りましたね」と大の里。これでトップと1差がつき、自力優勝も消えたが、豊昇龍が休場したことで出場力士では番付最上位ともなり、実力ナンバーワンであることは確か。まだまだ髙安にぴったりついて逆転チャンスをうかがいたいところだ。
 
髙安はこれで8日目から豊昇龍、琴櫻、大の里と倒して横綱・大関陣を総ナメ。ただ一人1敗を守って、ついに優勝争いの単独トップに立った。
 
これまで、あと一歩まで行きながら、何度も何度も優勝を逃しているだけに、勝負は一番∨に近い存在になったここからだろう。

「(単独トップは)過去にも経験ありますので、経験を生かして、あしたも落ち着いてやりたい」と髙安。今度こそ、今度こそ悲願成就となるのか。

「がむしゃらにやっても勝てない。頭を使ってやっています」という冷静さで、今までとは違う結果を手にしたいところ。星の上で単独トップに立ったことで、残り5日間は好調力士や三役など、選りすぐりの“刺客”が順々に立ちはだかることになるが、少なくとも「(1横綱2大関撃破に)それを自信にして、終盤戦は自信を持ってやりたい」という元大関が位負けする相手は、もういないはずだ。

文=藤本泰祐

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