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2025-03-19

【相撲編集部が選ぶ春場所11日目の一番】髙安「一日天下」。2敗目を喫し、大の里、尊富士とトップに3人が並ぶ形に

髙安は霧島のタイミングのいいイナシで崩され、押し出しで敗れて2敗目。「一日天下」でまた後続グループにのみ込まれた

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霧島(押し出し)髙安

天下は、たった一日だった。
 
まあ、“らしい”と言えば“らしい”のだが……、今場所はらしさを出さなくてもよかったのにな、とも思う。
 
きのうを終わって、ついに優勝争いの単独トップに立った髙安が、その途端に霧島との元大関同士の一番に敗れ、また後続グループにのみ込まれた。
 
この日の相手の霧島は、かつては得意としていたが、最近は分が悪く、ここまでは髙安が4連敗中。ただ今場所の両者の調子からすると、十分勝算はあるはずだった。
 
髙安の立ち合いは、左差し狙い。これは低く当たっておっつけてきた霧島に阻止されたが、その後は突っ張って先手で前に出た。霧島はじりじり後退、ここまでは相撲は髙安のペースかと思われた。
 
しかし、「(対戦が)決まったときから、引かないと考えていた」という霧島は、下がりながらも右からあてがって脇を突いたり、相手の右手を手繰ろうとしたりしながら横への動きを狙っていた。俵に足がかかろうかというところで、髙安の脇に当てた右からの突きがヒットし、タイミングよくイナす形に。髙安はこれで体が横向きになってしまい、そのままいっぺんに持っていかれた。
 
これで髙安は2敗目。この日2敗を守った大の里、尊富士と、3人でトップに並ぶことになった。
 
髙安ファンからすれば、「またか……」という気持ちになるだろうが、ただこの日の負けの内容は、これまでのように“優勝を意識してガチガチになり、体が動かず”というのとはちょっと違うかもしれない、というところは救い。残りは4日もあり、まだまだ再浮上は可能だ。あすは大の里と尊富士が対戦するので、これはどちらかが必ず2敗で残るということでもあるが、どちらかが必ず一歩後退するということでもある。まずは何とかあすの王鵬戦をしのいで、2人でトップ並走の形に持っていきたいところだ。
 
さて残りの2敗2人。大の里はこの日は落ち着いて宇良を叩き込んだ。2敗の3人の中では番付が一番上なので、V本命の位置を奪回したといっていいだろう。この後は、あすは2敗同士で尊富士戦、その後は順当に行けば関脇、大関の3人が相手になるが、今場所の上位陣はさほど元気がないので、そうボロボロと星を落とすことは考えにくい。むしろ、尊富士、大栄翔といった、優勝争いをしている相手との直接対決を落とさないことが大事になってこよう。
 
尊富士は、この日は美ノ海との2敗対決を制した。尊富士らしい一気の出足を生かした取り口で突き出し。美ノ海は今場所、相手に突っ張られても腰を入れて弓なりになってしのぎ、逆襲する、という相撲が目立っていたが、これまでの相手より低い体勢でくる尊富士の突きはしのげなかった。尊富士はこれで5日目から7連勝と勢いに乗ってきた。昨年に続く春場所連覇はなるか。この後は、あすが大の里、さらに髙安、大栄翔とは未対戦、残りの一人はこのままの情勢なら安青錦が有力と、今後の対戦相手は3人の中で最も厳しいと予想されるが、今の調子なら勝ち抜いていける可能性はある。
 
2敗の3人に加え、大栄翔、玉鷲、美ノ海、安青錦の3敗勢にも、さほど高いとは言えないが、可能性が出てきた。3敗勢は現在の2敗勢と対戦したときに勝って、相手を引きずり降ろすことが絶対条件だ。
 
一応、現時点で本命は大の里。だが、「大関と関脇以下の争いなら大関のもんでしょ」と決めつけるのもまだ早い気がする。まずはあすの尊富士戦。ここが「荒れる春」になるか、役力士の優勝に終わるかの分岐点になる。

文=藤本泰祐

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