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2025-05-22

【相撲編集部が選ぶ夏場所12日目の一番】大の里が全勝キープ。豊昇龍の3敗目で、いよいよ優勝と横綱に王手!

立ち合いのモロ手突きから、余裕を持った叩き込みで伯桜鵬を退けた大の里。いよいよ優勝と横綱昇進に王手を掛けた

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大の里(叩き込み)伯桜鵬

“差し手争いお断り”の一勝だ。
 
大の里がモロ手突きから余裕を持っての叩き込みで伯桜鵬を退けて全勝を守り、ただ1人2差で追っていた豊昇龍が結びで敗れたため、ついに優勝へ、そして横綱昇進へ「王手」を掛けた。
 
大の里と伯桜鵬はこの日が初顔合わせ。伯桜鵬としては、「立ち合い相手の右差しを防いで、何とか低く食いつく左四つに」と考えるのは、当然のことだろう。右を差しにくるであろう大の里に対し、ヒジを曲げて左を固め、下からはじくように立っていった。
 
しかし……、この日の大の里の立ち合いは、伯桜鵬の予想も、もちろんわれわれの予想も、見事に裏切った。ほぼ連日繰り出していた右差し狙いではなく、モロ手突きにいったのだ。
 
このため、伯桜鵬の「右差し対策」は完全に空振り。もちろん右は差されなかったが、その前に、立ち合いで肩のあたりを突き上げられてしまった。伯桜鵬が再度低い体勢をつくろうとしたところで、大の里は二人の間にできた空間を利用しての叩き込み。この叩きは、これまで“悪癖”と言われた、起こされて慌てて繰り出す叩きとは違って、余裕を持ってのもの。伯桜鵬はたまらず転がった。
 
大の里が今場所、モロ手突きで立つのは、若元春戦、宇良戦に続いて3度目。中に入れたくない宇良を別とすると、もしかして左四つの相手には「差し手争いお断り」なのか⁉ という推測もできるが、そんな単純な話ではないのかもしれず、この辺りはそう簡単には分からない。
 
この日の勝ちは、まあ「立ち合いジャンケン」に勝っただけ、という見方もできるが、今場所の大の里は、例えば右差し狙いにいくときでも、相手によって、体ごとぶつけにいくようなときと、下から掬うようにいくときがあるなど、細かく工夫している感じもある。この日のように「立ち合いジャンケン」に勝てるのも、工夫によってバリエーションを増やしているたまもの、と言えるかもしれない。

「落ち着いて取れました。相手も見えていたんで」と大の里。これでいよいよ優勝へ、つまりは横綱へも王手。あす13日目に勝てば優勝、という形になった。
 
もちろん、あす勝てば優勝、ということは、あすの対琴櫻、14日目に予想される関脇のいずれか(大栄翔か霧島。番付が東なので大栄翔が有力か)、千秋楽に予想される豊昇龍戦のどこかで1つ勝てばよく、これはもう、横綱がかかるとはいえ、過度なプレッシャーを受けることはない状況だろう。

「まだ場所は終わっていない」と気持ちを引き締め、「あした勝てば優勝だが」の問いには「それに関してはやるべきことをやっていけば」と答えた大の里。幕下10枚目格付け出しからではあるが、デビューから所要13場所、新入幕から所要9場所。もちろん、まだ負け越したことはない。そんな偉業ずくめの横綱昇進も、何かあっさりと達成されてしまいそうな気がする。

文=藤本泰祐

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