close

2020-06-24

U-16日本代表監督に聞くコロナ対策。「選手を再点火させる工夫」

悩んだときは指導の原点に立ち返る

U-16日本代表候補の大迫塁(神村学園高等部1年)

――こうした状況で、戦術的なものもレベルアップできるのでしょうか?

森山 私が指揮しているU―16日本代表チームで言えば、攻守の個人戦術に関する映像をすでに10本以上作成し、配信しました。そういう取り組みはオンラインでも可能ではないでしょうか。

――何にしても、この状況下でもできることはあり、前に進める、ということですね。

森山 指導者がまずそう思わなかったら、選手には何も言えません。指導者が一番努力するべきですし、指導者の背中が見えれば、選手たちも付いてきます。エネルギーを注ぎ込んで選手たちのために行動している、その指導者の背中にウソはありません。

「こうしたい」、「こうなりたい」という気持ちには引力があります。そこを抜きにしてしまったら、インターネットのテクニックをどれほど駆使しても伝わりません。何度も言いますが、偽りの気持ちは選手たちに必ず見抜かれます。

――トレーニングが再開したら、森山監督は選手にどんな声を掛けますか?

森山 サッカーができることは、実は普通なようで普通ではないんですよね。社会が不安定だとサッカーはできませんし、今回のようなことがあってもサッカーはできなくなります。それを実感できたことは、選手にとって学びの一つになったと思います。まずは、そういった話をするでしょう。

 現在のような事態になったら、サッカーがどうとかではなく、一人の人間として思いやりを持ち、互いに助け合って生きていかなければいけないわけです。その上で、プレーできる喜び、仲間と一緒にやれる喜びを存分に感じて、思い切りピッチで表現しよう、そんな話をすると思います。

――全国の育成年代の指導者に対して、こういうときだからこそ伝えたい言葉はありますか?

森山 選手をうまくしたい、チームを強くしたいという思いは指導者の原点としてきっとあると思いますし、それが指導の原動力でしょう。このような事態になって悩まなかった指導者はいないと思いますが、その気持ちだけは持ち続けていただきたいです。みんなでつながりながら、サッカーファミリー全員で、何とかこの危機を乗り越えていきたいと思います。

 自由に体を動かしてボールを蹴れるときは必ず来ます。大好きなサッカーをグラウンドで仲間たちと思い切りできる日が来ます。その日のために、みんなで励まし合いつつ、アイディアやイメージを膨らませながら、やがて来るサッカーの試合のことをドキドキワクワクしながら待てればいいと思っています。

――今年のU―16日本代表には、2021年のU―17ワールドカップ出場をかけた大事なアジア最終予選が待っています。

森山 今年はここまで、活動がまったくできていません。リハビリ明けのようなコンディションの選手ばかりで大会に臨むことになるかもしれないと覚悟しています。それでも、選手とスタッフが一致団結し、全員で助け合いながら、石にかじりついてでもワールドカップ行きの切符を獲得したいと思います。

 アピールの場がなくなって悔しい思いをしているこの世代の選手たちに世界大会への可能性をつなぐためにも、U―16世代と日本を代表し、どれほど困難な状況になっても戦い抜きたいと思っています。

プロフィール

森山佳郎(もりやま・よしろう)/1967年11月9日生まれ、熊本県出身。筑波大学から91年にマツダ・サッカークラブ(現在のサンフレッチェ広島)に加入。日本代表として7試合に出場した。99年に現役から退いたあと、2000年から広島のアカデミーで指導。広島ユース監督時代に槙野智章や柏木陽介ら、のちの日本代表選手を育てた。13年に広島ユース監督を退任。14年末にアンダー世代の日本代表監督に就任し、17年と19年のU-17ワールドカップでともにベスト16の成績を残した。20年はU-16日本代表監督として、21年に行なわれるU-17ワールドカップ出場を目指す

サッカークリニック2020年7月号

サッカークリニック2020年6月号

ジュニアサッカークリニック2020

サッカークリニック2020年5月号

サッカークリニック2020年4月号

おすすめ記事

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事