close

2025-07-16

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所4日目の一番】東西横綱が相次ぎ敗れる。大の里が横綱で初黒星、豊昇龍も3日連続の金星配給

回り込もうとしたときに左足が蛇の目の砂をはき、大の里はあっさりと横綱初黒星。ただ優勝争いのほうは、大の里が追う展開となったことで俄然面白くなってきた

全ての画像を見る
王鵬(押し出し)大の里

横綱が2人になると、こういうことが起こる日もあるということか……。
 
東西の両横綱が、相次いで黒星を喫した。まず結び前、豊昇龍が阿炎との土俵際の微妙な相撲の末、行司差し違えで敗れて3日連続金星配給の3連敗。そして結びでは、新横綱大の里が王鵬に押し出されて初黒星。もちろん初めての金星配給となった。
 
王鵬は、これで何と結びの一番に9戦して8勝目。「気合が乗ってくるので集中していけるのかな」と、またも大物ぶりを発揮した。
 
この日の大の里は、モロ手突きではなく、右差し左おっつけを狙うような立ち合い。組むことはできなかったが突いて出て、立ち合い直後は先手を取って攻めたように見えた。だが、王鵬にグッと腰の備えをつくって前傾姿勢でこらえられると、大の里のほうが腰が伸びて体が立ったようになってしまい、そこから形勢逆転。相手が出てくるところを右に回ってかわそうとしたが、回り込んだ時に左足が土俵から出たようで、そのまま力を抜いて土俵の外へと出てしまった。

「足が出なかった」と大の里。勝負がついた直後には、腰に手をやって首をひねり、残念そうな表情。座布団が舞ったのは「分からなかった」と、横綱となって初の黒星を振り返った。
 
大の里は王鵬には1月場所、3月場所と突き起こされて連敗。先場所は相手の突っ張りを下からはね上げて逆に突き返して勝っているが、今場所は差しにいく立ち合いを選択したことが裏目に出た。

王鵬自ら「しっかり前傾姿勢で押し返せたので良かった」と言っているとおり、腰の重い王鵬だから、大の里の攻めにも起こされずにいい形をつくれた、ということはあるかもしれないが、この、意外にあっさり来てしまったような感もある大の里の横綱初黒星は、「体が伸びて、後手を踏む形になると、残り腰が意外にない」という弱みを一つ見せることになったもの、と言えるかもしれない(まあ、そもそも攻められて土俵際、という展開自体が極めて少ない力士ではあるが)。
 
きのうまでは、「このまま独走態勢を築いて悠々と逃げ切るのでは?」とも思われた大の里だが、決してまだ無敵ではない。ほかの力士が付け入るスキもあれば、大の里自身の伸びしろもあるということだ。
 
この日は大の里をはじめ、多くの全勝力士に土がつき、きのうまで7人いた勝ちっぱなしは、関脇霧島と、この日で幕内連続出場1066回とし、史上単独3位となった元気すぎる40歳・玉鷲、元大関の御嶽海、一山本の4人だけとなった。大の里が追う展開となったことで、優勝争いは俄然面白くなってきた。
 
そしてあす5日目は、この日、目をかけてもらっている若隆景を、相手に引かせる展開から押し出し、「恩返し」を果たして3勝1敗とした安青錦が全勝の霧島に挑戦。霧島が勝てば優勝争いと大関復帰へ勢いが増し、安青錦が勝てば一気に優勝候補の一角に名乗りを上げる1勝となる。これも低い体勢でのせめぎ合いとなりそうだが、さて、どちらの技と力強さが上回るか。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事