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2025-07-17

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所5日目の一番】今度は右から! 安青錦が内無双で全勝の霧島に土つける

右手で内側から霧島の左足を払い、内無双を決める安青錦。この低い体勢から技を繰り出せるのだから、体幹や足腰の強さとバランス感覚は相当なものだ

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安青錦(内無双)霧島

きのうまで3連敗して3日連続金星配給となっていた横綱豊昇龍がこの日から休場。場所前に痛めていた左足の指を3日目の安青錦戦でさらに痛めたとのことだ。久しぶりに番付の東西に横綱が揃ってスタートしたこの場所だったが、ここからは新横綱の大の里がいきなり「一人横綱」として場所を支えることになった。

そんなふうに少し状況が変わったこの5日目。幕内後半で注目の取組があった。ここまで2横綱1大関1関脇と当たって3勝1敗の安青錦が、全勝の関脇霧島に挑戦する一番だ。

2人はもちろん初顔合わせ。絶対に頭を上げず(かといって前にも簡単には落ちない)、低い姿勢からさまざまな攻撃を仕掛ける安青錦を、これまた低い体勢での攻防を得意とする霧島がどうさばくかが見どころとなった。

立ち合いは、予想どおり、霧島が突いて出た。何度か右からの張り手も交えたが、安青錦は少し下がりながらも、やはり頭は上げない。安青錦はそこから逆に突いて反撃。霧島が回り込んで土俵際でこらえたところで左を差し、下手を取って頭をつけた。四つは霧島得意の左四つだが、体勢としては頭をつけている安青錦がいい。
 
上手を探るも取れなかった霧島は、右から抱え、左手も使って安青錦の右手をロックし、辛抱に入った……。
 
かと思われた次の瞬間だった。右手のロックを振りほどいた安青錦は左から下手捻りを見せながら、右から内無双。左足を払われた霧島は、ガクッと右ヒザをついた。

「(強烈な張り手だったが)我慢できてよかった。ああなったら中に入るしかない。(内無双は)体が勝手に動いただけです」と安青錦。以前に、「稽古場では(内無双は)危ないのでやらない」と語っていたのを思い出すが、それでいてこのタイミングのよさはどうだ。相撲のキャリアは浅い安青錦だが、レスリングの経験者だけあって、この辺の技の呼吸は会得している部分があるのだろう。「内無双のコツは?」と記者団に聞かれ、「分からない。分かっていても、言わない」と笑わせた。
 
安青錦は今場所、初日にも琴櫻を内無双で破っているが、実はこの時は左からの内無双。本人は「どっちもできますよ」と涼しい顔だ。右からも左からもこの飛び道具があるとなれば、相手力士は食いつかれたときにどう足の構えをつくるかにもひと苦労せざるを得なくなる。「頭をつけられてしまったらもう苦しい」となれば、組む前に何としても頭を起こすしかない、ということになるが……、上位陣にとっては何とも厄介な力士が出てきたものだ。

さて、安青錦はこの勢いでどこまで星を伸ばしていってくれるか。ほぼ番付上位から順に当たっているので、あすの髙安戦がすめば三役戦は欧勝馬を残すのみ。星勘定の上からは、もはや優勝候補の一角に名乗りを上げたと言っていい。もちろん、「番付が下の相手しか残っていないからあとは楽勝」というほど甘い話ではないが、それでも三役戦をたくさん残しているよりは星を崩す可能性は低いはずだ。「まだ10日間もあるので、自分らしい相撲を取っていきたい」(安青錦)と、浮わついたところはない。
 
この日はきのうまで4人いた全勝力士のうち、霧島と玉鷲が敗れ、5連勝は一山本と御嶽海の平幕2人だけとなった。情勢としては、「一人横綱」の圧とも戦うことにはなるが、大の里を中心とした優勝争いになっていくことがやはり濃厚だ。このあと、ほかの力士がどれだけ大の里を引きずり降ろせるかが焦点となるが、大の里を含め8人いる1敗勢の中から、安青錦や新入幕の草野あたりが勝ち残ってくるようなら、フレッシュで面白い優勝争いになる。

文=藤本泰祐

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